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1→11
3→11
4→11
11→1
12→11
13→11
『№11が、追放されます。』
純次は、あんな状態だったにも関わらず、投票には来た。そして、自分の意思として彰に票を投じ、他の者たちの満場一致で吊られることになった。
「…独壇場だったな。」純次が、椅子に座ったまま言った。「こんなゲームで運営は、果たして満足したのか?」
そして、ガクッと急に体の力をなくすと、椅子に座ったままの状態で息絶えた。
すると、モニターから声が言った。
『ゲームが終了致しました。』
皆が、ホッと胸を撫でおろす。やはり、純次が狼だったことが、これで証明されたのだ。しかし、その後の言葉を聞いて、皆の笑顔は固まった。
『おめでとうございます。妖狐陣営の勝利です。』
「え…?」美津子が、茫然とモニターを見上げた。「妖狐?妖狐ですって?」
「あり得ない!」雄大が、椅子から飛び上がって無駄だと分かっていながらモニターへと抗議した。「あり得ないじゃないか!誰が妖狐だって?!」
すると、彰が静かに言った。
「私だ。」
その言葉に、絶句した全員が彰を呆けたように見つめる。妖狐…?妖狐だって?!内訳はどうなるんだ?!でも占い結果は…!
彰は、苦笑して続けた。
「だから言ったではないか。村目線、私が偽の可能性があると。狼目線、私が狐である可能性があると。わざわざヒントを出しているのに、村は見向きもしなかった。最後まで、私が偽である可能性を追えと言っていたはずだぞ?私が狼を探し出したのは、推理だ。初日からの挙動と繋がりを見ていて、そこしかない場所に黒を出していた。玲に占い師を騙れと言ったのは私。彼は、背徳者だった。」
占い師に妖狐陣営が二人露出していたと言うのか。
「そんな…!待ってください、じゃあオレ達は皆殺しかっ?!」
彰は、もううんざりだというように立ち上がると、純次の顔を覗き込む。そして、言った。
「…117を投与したんじゃないな?」
モニターから、男声が答えた。
『はい、09です。』
モニターが答えたことに仰天していると、彰は続けた。
「では、019を。」と、皆を見た。「誰一人、死んではいない。私はそれを知っていたから、いちいち死亡確認させられるのが嫌だったのだ。」
すると、目の前の純次がいきなり目を見開いたかと思うと、立ち上がった。
「…!!なんだっ?!か、体が熱い…オレだけこんな死に方なのか?!」
彰は、呆れたように腕を組んで純次を見た。
「もう終わった。今も言ったが誰も死んではいない。もっと精密に検査すれば生きていたのだ、彼らは。蘇生させるから明日の朝まで待ってくれ。」と、モニターを見上げた。「朝に全員戻せ。ああ、朝食は全員分頼む。何日もまともな物を食べていない気持ちだ。」
美津子が、金切り声を上げた。
「待ってください!彰さん、どういうことですか?あなたが、あなたがこれを企画したってこと?!」
彰は、そこに居る純次、美津子、啓子、忠彦、雄大を見て、頷いた。
「そうだ。自分の能力を試してみたいと思った。私は嘘を付かないのだが、しかし最近嘘を付くという事を学んでな。一度使ってみたいからと、私と対等に渡り合えるような者を集めてゲームをしようと思った。しかし…まあ、こんなものか。」
純次が、むっとしたような顔をした。
「どこかの偉い学者さんか知らんが、こんなことをしていいと思ってるのか!」
彰は、純次を見て答えた。
「良いのではないかな?誰にも危害は加えていない。彼らの命に別状はない。元が死体でも私は生き返らせてゲームに参加させることが出来るのだぞ?死ぬことなどあり得ない。そもそも、君達が住む一般社会には、もっと悪質な『ドッキリ』とかいう遊びもあるのではないのかね?これは、君達が好む人狼ゲームのリアルな姿だ。それを体験させてやったという気持ちなのだが。かなりのスリルを味わえたのではないかね?」
言われてみたらそうなのだが、まだ、確かに死んだと自分が確認した者たちの姿を、一人も見ていない。
なので、それを鵜のみには出来なかった。
「…信じられない。もう、あんたを信じろって方が難しい。役職だって、知ってたんじゃないのか。」
彰は、それには真顔で首を振った。
「知らん。そもそも私は頭を使って楽しみたかったのに、最初から知っていたら意味が無いではないか。私の嘘が通用するのか試してみたかったと言ったろう。ただ、私の役職だけは最初から決まっていた。玲は、私の部下なのだ。彼を引っ張り込んで、同陣営にした。それだけだ。狐は生き残るのが難しいと聞いていたし、腕試しになるかと思って自ら志願した。他は知らん。だが恐らく、狼は純次、君と、奈美さん、憲二の三人だろう?」
純次が、むっつりと黙っていると、モニターが答えた。
『そうです。役職内訳をここへ出しておきますか?』
彰は、モニターに向かって手を振った。
「いや、ちょっと待て。…占い師は俊、敦也、霊能者は彩芽さん、猫又は美子さん、狩人は美津子さん、登はパン屋…で、狂人は奈津美さんだ。違うか?」
モニターの声が、ため息をついた。
『その通りです。でも、みんなのためにここに内訳は出して置きますよ。明日以降はどうしますか?もう一ゲームってなるとまた、数日かかりますけどね。』
彰は、皆を見た。
「どうする?…とはいえ、君達はもうショックでそれどころじゃないな。」と、またモニターを見上げた。「明日皆が揃ってから聞いてみることにしよう。要、私の夕食をそっちに準備させてくれ。もうレンジで温めたものばかり食べるのは懲り懲りだ。」
『ええ?彰さんのためにどれだけ手作りの惣菜を毎日届けて置いたと思ってるんですか。レンジでチンぐらいやってくださいよ。ほんとにもう。』
彰は、リビングを玄関の方へと向けて歩き出した。純次が、その背に言った。
「どこへ行く、逃げるのか?!」
彰は、うんざりしたように純次を振り返った。
「そら、そんな風なのに私が共に居る方が気に障るのではないか?明日にはまた戻る。」
雄大が、横から小さな声で言った。
「あの…外へ出られるなら、ちょっとオレも出たいんですけど。」
彰は、それを聞いてこちらへ向き直った。
「別に、外へぐらい出しても良かったのだ。だが、ここは君達が思っている以上に山の中だ。逃げようと迷って遭難したり、熊やイノシシに襲われることを避けるために鍵を掛けていた。窓は、獣対策で元からああなのだ。一昨年の秋にリビングの窓を割って体長2メートル、体重200キロのツキノワグマが侵入して来てな。どうやら敷地内に逃げ込んだ鹿を追って来たらしいが、迷惑な話だろう。だから、私がアクリルに換えさせたのだ。熊でも入れないのだから、ヒトがその辺の道具で破れるわけはないわな。」
だから、彰は無理だと言っていたのか。
皆が納得していると、忠彦が言った。
「じゃあ、そっちへ行くってどこへ行くんですか?外に別館でもあるのかと思ったんですけど。」
彰は、眉を上げてから、首を振った。
「別館は建てていないな。ここには三階の上にもう一階、屋根裏部屋がある。それと、地下二階がある。私の部下たちは、そこから君達を監視していたのだ。毎朝パンを焼いていたのもそこだ。私はこれから地下へ行こうとしているだけだ。」
純次が、おもしろく無さそうに言った。
「…あんたが準備した鳥かごってことか。」
彰は、顔をしかめた。
「他人の屋敷に招待されて鳥かごとは失礼な奴だな。とはいえ、私も趣味じゃないんだ。前の持ち主が金に困っていたから家財ごと買ってやっただけだ。こうして遊びに使えるだろう?改造したらそこそこ使い物になる。」と、また出口へと足を向けた。「では、おしゃべりはまた明日だな。外へ出たければ出てもいいが敷地からは出ないことをお勧めする。ちなみに熊は塀を越えて来るから気を付けてくれたまえ。」
そうして、リビングから出て行った。
今起こったことが整理できなくて、混乱したままの五人は、顔を見合わせた。死んだと思っていた他の10人が、本当に帰って来るのだろうか。あの様子では、本当のような気がする。
だが、あの様に騙されて、ここまで来たのだ。皆が確実に生きて姿を現すまでは、信じられない…。山の中なのは確かだし、ここまで生き延びたのに熊に殺されても馬鹿なことだ。
五人は表情を引き締めると、その日は何も考えずに、ただ休む事にしたのだった。




