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村人達は話し合っているようだったが、当事者である敦也と玲は避けられているようだった。

彰がもはや定位置になっているリビングの端のソファに座っている回りに、数人が集まって話しているのを見たが、敦也や玲が加わろうとすると途端に誰からともなく黙る。なので何を話しているのかは聞く事は出来なかったが、それでも敦也は彰の平等な考え方は信じていた。

その証拠に、皆の苦悩しているような顔色は、時間と共に濃くなってきていた。どちらを選べばいいのか、そしてどちらが正解なのか誰にも分からないのだ。

女性達は集まっていたが、男性達はバラバラに一人で食事を摂って、19時の議論に備えた。敦也は、真の自分が陥れられて死ぬわけにはいかないんだと気持ちを引き締めて、自分の椅子へと座った。


椅子は、五つ畳まれて脇へと立てられて片付けられてある。

そのうちの一つに自分の椅子がならないことを祈って、敦也はじっと皆が揃うのを待った。生き残れたら誰を占うかも重要になって来るので、入って来る一人一人を見つめて様子を見たが、誰も皆困り切っているようで、顔色はよくない。

その中でも純次は、比較的落ち着いているように見えた。彰が数日前から疑っているようだったが、純次は自分を庇うような中立な意見を出してくれた。狼だったら知っていても、仮に狂人だとしても敦也を放って置くと思えるのに、純次は呪殺ではなく猫又の可能性を最初に村に言及した。狼なら、目立ちたくないので考えられ合い行為だった。

それに、狐でも有り得なかった。なぜなら狐は、村が呪殺だと間違っていてくれた方が都合がいいからだ。わざわざ村と違う意見を積極的に発言して、目立つことはしないものだった。

雄大は呪殺を押したい派だった。しかし敦也の弁明を聞いて分からなくなったと言っていた。忠彦は最初からどっちも見た方がいいと言った。女性達は…右に倣えな感じで、美津子が主導権を握っているような感じを受ける。美津子は俊の白だが、初日から結構発言していて考えていて、白いと思っていた。

そうなって来ると、女性達の中に潜伏したい狼がまぎれているような気がして来る。

登も今回はもう、椅子を元通りに皆の円の中へと戻して、そうして座って言った。

「投票対象の二人以外で、ある程度の事は話した。彰さんに言って、どんな可能性があるのかと挙げてもらって、皆でそのリスクを頭に置いて、それぞれ投票することにしたんだ。で、最後だが玲と敦也、何か言いたいことがあったら話してもらっていいか。」

敦也は、一瞬戸惑った。いったいみんなが、自分の何に対して不安を持っているのか知ることが出来なかったからだ。

玲が、先に言った。

「今日、僕を吊るのは間違ってる。リスクを伴うんだ。村目線で僕が狐の可能性があるのは分かるよ。でも、占えばいいことだと思うんだ。その方が、呪殺が起こったり起こらなかったりでみんなに僕の正体が分かるでしょ?吊っちゃったら、誰かが死ぬんだよ。狼だったらいいけど、村人だったら敦也の思うツボじゃないか。明日の情報って、明日のことは明日考えるべきだ。人狼が誰を噛むかでも情報は落ちるからね。僕で白が出るのも情報だ。誰かが死ぬリスクを負ってまで、僕を吊る必要はあるの?」

全員が黙ってそれを聞いて、玲を同情するように見ている。彰は、ただ無表情で黙ってそれを聞いていた。

敦也は、口を開いた。

「玲は村っぽくない。明日のことは明日って、噛み先だけで何が分かるって言うんだ。情報が無かったら、結局吊り先に困って玲を吊るかってなるはずだ。誰にも玲かオレのどっちが正解なのか分からないからだ。でも、明日だったら余計にリスクが高くなる。もし本物だったらと皆がためらうはずだ。お前も自分が真猫又なら分かるだろうが。今日二人死ぬより、明日二人死ぬ方が村人には対処のしようが無いんだ。もちろん、オレはお前が偽物だって知ってる。だが、村人は知らないんだから、もしお前が狂人で、もし生き残っていても白なんだからと明日は残すかもしれない。そうなったら、最終日は人狼の思うツボだ。お前は残せる位置じゃないし、吊るなら今日、そして彰さんとオレはグレーを精査するんだ!」

玲は、反論した。

「でも、村人はどうやって僕が狐じゃなかったって知るの?僕が吊られて誰か死んだのに、それをさも背徳者が後追いしたみたいに言ってまた混乱させるつもりなんじゃないの?死んだら弁明出来ないのを良いことに、君が場を転がして行こうとしてるんじゃない?」

それを聞いて村は困った顔をしたが、彰が首を振った。

「それは無いな。」玲が驚いていると、彰は言った。「数の問題だ。何度も言っているだろう、玲が狐なら背徳者がどこかで出ていないと数が合わない。同じ役職に狐と背徳者が出るはずがないので俊は違う。これだけやり合っているのに敦也も考えられない、私は自分が真だと知っている。となると奈津美さんではないかと思われる。狼が占いを騙っていない限り、背徳者が潜伏していてまだ生きているとは考えられない。既に死んでいると考えられる。君が狐なら、明日は余分に誰か犠牲が出る事は考えられないのだ。なので君が狐であったのかどうかは分からないが、しかし誰も死なない事で君が猫又ではないという情報は落ちる。誰かが犠牲になれば、君が猫又だったのだという情報が落ちる。もちろん私が君を占うことも出来るが、それは村の総意で君が吊られなかった時だ。私は村の意見に従う。」

玲は、自分が敦也と同じく焦って数を見誤った事に悔しそうな顔をした。敦也を疑わせるつもりが、自分の把握漏れを指摘されることになってしまった。

敦也が、言った。

「オレも混乱して焦ってたから、数を見誤って彰さんに同じことを指摘されたから分かる。把握漏れが問題なんじゃなくて、今日だけじゃなく明日以降の村の進行を考えて無いことがまずいんじゃないかって思うんだ。オレ目線では玲は絶対に偽だから、吊っても明日数が減らないのを知ってるから言える。減ったら吊ってくれてもいいとまで思う。だから、玲を吊って欲しいんだ。」

玲は、恨めし気に敦也を見た。

「良い奴のフリして。僕目線君が偽物なんだから僕が吊られるのはまずいって思うのは仕方ないことだと思うよ。それに、占って欲しいっていうのも、僕は白で呪殺が出ないのを知ってるけど、みんなが知らないから知らせるためじゃないか。つまり、村のためだ。僕だって、君を吊って彰さんにグレーを占って欲しいよ?でも、みんなが僕を信じて無いんじゃないか。僕は猫又なのに…敦也の嘘と、彰さんの呪殺を教えてあげようと思って言った事だったのに。だったら僕は、黙ってた方が良かったって事じゃないか。」

登は、それを聞いて激しく顔をしかめた。そうなのだ、玲は黙っていた方が安全だったのだ。何しろ、敦也が疑われていて、玲と彰は限りなく真に近いと思われていた。

あのタイミングで出て来るという事は、玲にとってリスクしかなかった。村のためだと言われたら、本当にそうだった。

「…ますます分からない。」と、登は、彰を見た。「彰さんは、どう思われますか?」

村人の目は、彰を縋るように見た。彰は、それこそ目を細めて険しい顔をした。

「…皆は私に期待し過ぎだ。私は占った所しか分からないのだぞ?君達はどこまで私が超常的な力を持っていると思っている。皆の考えている事など見えないのだ。昼間に全て話しただろう。あのリスクを考えて、君達自身でどちらかを選ぶのだ。私も投票する。が、自分が投票したようにならなくても、村の総意に従って占い先を選ぶ。ただ」と、玲と敦也を見比べた。「もし玲を吊らないのなら、玲を真置きするべきだ。そして私はグレーを占う。敦也を吊らないのなら、敦也を真だと思うべきだ。皆は、自分が信じられる方を残して、信じられない方を吊るんだ。もう、それぐらい切羽詰まって来ている。決め討って行かないと明日からが本当に困る事になるぞ。今日の二択の比ではない。」

言われて、ますます皆の目は険しくなった。どちらももっともな事を言っていて、どちらも間違ってどちらも間違っていないように感じるからだ。

しかし、村は一人を決めて吊らねばならない。絶対にどちらかが嘘を言っているのに、それがどちらなのか判断できないのだ。

全員が自分の判断が間違っているのかいないのか分からないまま、議論は平行線を辿って時間ばかりが過ぎて行った。

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