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そのまま、全員登の指示で階下へ降ろされ、寝癖のついたままの者も居る中で、強制的に議論となった。

焼き立てパンの良い匂いがしていたが、誰もそれに対して言及しない。そんな空気ではなかったのだ。

登が、ホワイトボードの前に立ち、険しい顔で言った。

「今朝は美子さんと憲二が死んだ。議論を始めよう。まずは結果から聞く。彰さんが美子さんを占って白、玲が啓子さんを占って白、敦也が希美さんを占って白。で、霊能者の彩芽さん、結果を頼む。」

彩芽は、見るからに憔悴しきった顔で、涙を流しながらうなだれて、言った。

「ごめんなさい…本当にごめんなさい!奈美は、黒だった…No.15は人狼でしたって、昨日液晶に出たの…。信じられなかったけど、でも、嘘はつけないわ。私…ほんとに必死で狩人だって言うから、奈美を信じていて…。」

奈美は、人狼だった。

敦也は、その事実すら上の空だった。今日、二人が死んだ事に自分の中で答えが出ないのだ。なぜ、美子が死んだのだ。確かに白だったし、変な行動はしていたが間違いなく彼女は、狐ではないはずなのだ。

登は、そんな彩芽に表情を変えずに黙々とホワイトボードに結果を記した。

「今日は二人の犠牲者が出た。それについて、みんなの意見を聞きたい。」

それには玲が、口を開いた。

「あの…僕は普通に彰さんが自分の相方だったって思ったよぉ。何でか分からないけど、人狼は敦也を吊りたかったんじゃない?だから黒を出されてた憲二を襲撃したんだ。狐だと思ったのかもしれない。結果的に狐じゃなかったから分からないけど、そういうことじゃないかな?」

敦也は、そう見えても仕方がないと思った。だが、自分はまごうことなく真占い師。自分自身がそれを知っていた。

玲の話に同意するような村の空気の中で、純次が険しい顔のまま、言った。

「…納得できない。初日から、場を彰さんに転がされているような感覚がしていて、警戒していたんだ。こんなにきれいに呪殺が起こるなんて、おかしくないか?グレーを占うんじゃなかったか?これじゃあ、人狼と一緒になって敦也を陥れようとしているみたいに見えるんだが。」

それには、雄大が顔をしかめて純次を見た。

「でもさ、現に呪殺が出た事実はどうするんだよ?憲二だって死んでるんだぞ?敦也が真だったら、憲二は黒だったって訳で、死ぬはずなんかないんだ。」

純次は、軽く雄大を睨んだ。

「みんな忘れてるぞ。もし美子さんが白で憲二が黒なら、起こる事態があるだろうが。昨日散々彰さんが言ってたじゃないか…人狼が、自分の呪殺で真が確定するのを恐れて、占い先を噛んで来るかもしれないって。」

彰は、そこで頷いた。

「確かにな。私も二人の犠牲が出たので自分の呪殺かと思ったが、純次が言うのも考えられる。敦也が私の相方で真だと考えるとしたら、憲二が黒、人狼で、そして美子さんが猫又だと考えたら矛盾しない。敦也は、まだ破綻していない。」

敦也は、ハッとした。そうだ、彰が占っていた先が死んだので、猫又を忘れていた。美子は彰目線でも白なのだ。もし、美子が猫又で、そこを憲二が襲撃したのだとしたら合点が行く。

「そうか!オレも自分が真なのにどうして呪殺がって、そればかり考えてて…猫又が居たんだった!」

登は、顔をしかめて敦也と彰を交互に見た。

「でも、そんなにうまく猫又を噛むか?それだと、狼が彰さんを真で敦也を偽だと思っているってことだろう。だって昨日美子さんは敦也に占われているのに死ななかったんだ。呪殺が出てないってことだ。もし憲二が敦也の言う通り黒だったなら、敦也が真だと知ってたはずだろう?美子さんを彰さんが占うから噛んで憲二が死んだって、その時点でおかしい。そっちこそ綺麗過ぎるし不可解で理解できない。」

そう矛盾する。

彰が真で美子を呪殺したとしたら、狼は憲二を噛んだ。その動きは次の日に敦也を吊れという狼の意思のように感じるし、村に敦也が偽だと言っているようにも思える。狐じゃないかと思う先だったのかもしれないと思うと辻褄は合う。つまり狼目線、敦也は黒出しで偽だと知ったが、狂人でも無さそうだし背徳者か狐だと予想出来たのではないかと思える。

敦也が真で美子が猫又だったとしたら、黒の憲二が猫又の美子を噛んだことになる。その行為は、彰の真を確定させたくなかったのだと考えたら辻褄は合う。だが、そうなると人狼は敦也を真だと知っていたという事になるので、その真が美子に白を出しているのに、彰が呪殺すると危惧するのはおかしい。敦也が真なら、美子は狐ではないからだ。

しかし、敦也から見たら、狼の意図は分からないが、自分が真なのでなんと言われようと、美子は呪殺ではなく、憲二は狼だった。なので、美子が猫又なのは敦也目線確実だった。

「狼の考えなんか分からない。でも、オレ目線はそれしか考えられないんだ!狼にはオレが誤爆した狂人か、陥れようとしている背徳者に見えてるんじゃないか。だから、そんなオレは最初から切ってて、彰さんが真だと考えて美子さんを噛み合わせに行って、猫又に当たったんだ!」

登は見るからに疲れた様子で、立っているのがつらくなったのか自分の椅子を引きずって来て、ホワイトボードの前に置いて、座った。そうして、ホワイトボードを見上げて、組んだ腕の間から、持っているペンを指で振り回しながら、ため息をついて、言った。

「…敦也は猫又だと主張するしかないだろうし…こうなると、なんで昨日猫又も聞いて置かなかったんだと自分を責めちまう。聞いてたら、分かったってのに。今日募って出て来ても、それを信じるのが難しいじゃないか。でも…一応、募ってみるか?誰が猫又だ?」

全員が、きょろきょろと自分以外の誰かを見回した。だが、誰も出て来る様子は無かった。

「ほら!」敦也が、叫んだ。「今出ない意味はないじゃないか!吊られないし襲撃されることも無いんだから!美子さんが呪殺だったらまだ生きてるはずの猫又が出て来ないんだから、絶対、美子さんが猫又だったんだよ!オレが真だ!」

皆の空気が、そうなのかもというように、戸惑いがちに変わった。じっとその様子を見ていた玲が、あからさまに長い溜息をついた。

「…あ~もう。」皆が、何事かと玲を見ると、玲が不貞腐れたような顔をして、皆の顔を代わる代わる見た。「この中に居るんでしょ、人狼?なんで僕を噛まないのさ、占い師だよ?それに、結構真目に見られる行動してるって思ってたのに。噛むなら僕じゃん、何やってんの?そんなだから、こうして追い詰められるんだよ~。これじゃ、村のためにならないでしょー?こんなの、望んでたんじゃ無かったのにさあ。」

彰が、険しい顔をしながら、チラと玲を睨むように見た。

「…どういうことだ?」

玲は、彰を頬を膨らませて見た。

「初日、まだほんとに死ぬなんて思ってなかったでしょ?だから、奇策に出ようって思った。狼を引っかけてやろうと思ったのー。僕、占い師じゃないよー。」

彰が、睨むように玲を見返した。

「…君が猫又か。」

玲は、頷いた。

「うん、そう。彰さんが真かどうかは、今朝までは状況を見て判断してただけなんだけど、今朝の様子を見て確信したよー。だから僕目線、敦也は絶対に偽物。で、昨日死んだ俊が真で、彰さんは今、たった一人の占い師なんだと思うよ。」

登は、身を乗り出した。

「じゃあ、お前が真猫又か?人狼に襲撃させようと思って占い師に出たってことか。」

玲は、申し訳無さそうに頷いた。

「そうだよー。僕、なんだかんだって真目のある動きをしようとしてたから、絶対噛んで来るんだと思ってたのにさあ、僕じゃなくて俊を狙ったでしょ?後で思ったけど、真らしくし過ぎて護衛が入ってると思われたんだなって。ちょっとは疑われた方が良いのかって、昨日は模索してたけど…噛んでもらうのって、案外難しいよねえ。実際死ぬのを見てしまってからは怖いし…どうしたらいいのかなって、真だと思える彰さんに合わせてたんだけど、正解だったなあ。」

純次は、それを聞いて玲を睨んだ。

「猫又が、占い師騙りだって?だったらなんでもっと早く言わなかったんだ。呪殺を出さなければならなかったんだぞ?役職ローラーになってたらどうするつもりだったんだ。真占い師が犠牲になっていたかもしれないんだぞ。」

玲は、スッと目を細めると、真顔になった。玲が口元の笑みを消すのも珍しく、誰かが死んだ時だけしか見ていなかったので、純次も少し、詰まった。

「別に、ローラーになるなら名乗り出るつもりだったよ。ルールを読んだけど村騙りは禁止されてない。僕はあくまでも真占い師を守って、自分が噛まれることで狼を道連れにしようとした猫又だよ。初日の処刑が終わるまで、本当に殺されるなんて思ってもなかったもの…でも、やり始めたからには、ちゃんと役目は果たすよ。狼、まだ二匹いるんじゃないの?一人が僕を噛んで一緒に死んでくれたらいいんだよ。そしたら分かるし、村のためにもなるから僕はいいよ。でも…ねぇ純次?」と、ニイッと笑うと、顔を近づけた。「どうして敦也を庇うのぉ?っていうか、美子さんが猫又だって言い出したの、一番早かったよねえ?もしかして…そんな筋書きをあらかじめ考えていた、人狼なんじゃない?人狼は、もう一人だって村を油断させたいんじゃない?彰さんを疑いたいんだもんねぇ。だって唯一の真占い師で、君よりずっと頭が切れるからさぁ。ねえ、違う?」

純次は、その言葉に激高して飛び上がるように立ち上がると、玲の胸をドンと突いた。

「そんなはずないだろうが!オレが狼だったら、あんな厄介な占い師なんかさっさと噛んで消してしまうだろうが!初日から何だがオレにちょっかいばっかりかけて来るのに、オレだったら俊を噛んでる暇があったら、彰さんを噛む!」

登が、慌てて純次と玲の間に入った。

「待て、こら!暴力はダメだ、ルール違反だ!お前ら取っ組み合いになったら二人とも一瞬で死んで全部パアだぞ!落ち着け!」

それを聞いて、純次はぐっと黙ると、椅子へとどっかりと座った。玲も、ブスッとして服の胸元を直す。

彰が、落ち着いたのを見て、息をついた。

「…という事は、どちらを信じたらいいのかと言われたら、やはり玲になるか。辻褄が合うからな。敦也の真は、どうもこじつけているような矛盾があって、今一信じ切れない。今私が一番疑っているのは、純次だ。なんなら今日吊りたいぐらいだよ。だが、占う事にしようか…私が色を見よう。」

登は、みんなを見た。そして、ホワイトボードを見て、うーんと唸った。

「村はどちらを信じるかで投票先を決めるしかないな。彰さんを信じるなら敦也、敦也を信じるなら…それでも彰さん真はまだ可能性があるから、敦也の結果と矛盾する、玲。ただ、玲が真だったら誰か死ぬ可能性があることを念頭に置いて投票しなきゃならないってことだ。」

彰が、顎に手を置いて考え込むようにして、言った。

「そうだな…私は呪殺が出たと思っているが、もし敦也が真だとして狐の処理がどうなっているのかを考えた。誰も他に死んで無いから狐は吊られていないと思っていたが、初日処刑の奈津美さんは白が出ている。もしも狐だとしたら彼女だろう。初日はまだ、軽いゲーム感覚で彼女もそんなに生き残ろうという感じではなかったし、負ける事に抵抗無くてもおかしくない。で、それなら背徳者はどうなったと言われたら、俊が背徳者で、死ぬ日にそれを知らない狼に襲撃されたと考えれば辻褄が合うのだ。それとも…玲が狐で背徳者は奈津美さんで死んでいるのか。そして、人狼は二匹処理出来ていて、後残り一人。あくまで、敦也を真だと据えたらという事だが。」

登は、頷いた。

「敦也目線にすると、かなり狭まっていますよね。つまり、奈美さんで一人、憲二で一人死んでいるんだから、あと一人で終わりだ。そうなると狐の位置が一番重要になって来るんだが、今彰さんが言ったような状況で、もう処理されている可能性もあるということだ。彰さん的には、そっちの方が願ったりということですか。」

彰は、頷き返した。

「そうだな。先が見えているわけだから。だが、玲が真の時は違う…人狼はまだ二人居る。彩芽さんはまだ、一人しか黒を見ていないのだ。なので、万が一を考えて、敦也は吊っておかねばならない。狂人であれ狼であれ、パワープレイになるのを避けるためにも着実に偽は吊って行く必要があるから。しかし、狐は処理出来ているわけだから、狼だけに尽力出来るので悲観することも無いだろう。私の真が証明出来ているという事になるから、私が占って、黒を見つけたらいいだけだ。そうなったら憲二が狩人でない限りまだ、生きていると思われるから、狩人には私をなるべく守ってくれるようにとだけ言っておきたいものだな…万が一、敦也が真であったならまだ呪殺をしなければならない。占い師は死ぬ訳にはいかないのだ。」

登は頷いたが、忠彦が言いにくそうに言った。

「その…確かに彰さんが真の気がするんだけど、それでもどちらの可能性もまだ残ってるよな?玲が狐で、狼を陥れたい可能性を考えたら、両方の可能性を追ってまず、玲を占うべきなんじゃないかな。吊るのはリスクが高いから、オレは玲を占って欲しいと思う。それで、彰さん目線まだ占ってない中から一人、吊ったらどうかな。敦也がもし真だったら、縄を消費するのはもったいない。まだ余裕があるなら、もう1日残したらどうかな。」

奈津美、俊、奈美、美子、憲二の五人が居なくなって今残っているのは12人。五縄で今日吊って四縄、夜の襲撃で明日は10人だが、もし玲が狐だったら彰の呪殺で7人、三縄。もしも敦也が狂人だったとしても数で村は負けないはず…誰かが間違えなければ。

「僕はそれでいいよ?」玲は言った。「僕で呪殺は出ないからね。なんなら敦也も僕を占ったらいいんじゃない?確実だよー。」

その余裕が、敦也を不安にさせた。呪殺をされないと確信しているようだ。落ち着いているし、それがやせ我慢でも虚勢をはっているのでもないと思わせる。狐ではないのか…もしかして、背徳者?

「…もしかして、玲は背徳者で、グレーに居る狐を庇ってるんじゃないのか?それとも囲えてるのか?」

玲の白先は、彰、希美、啓子。初日から囲うのはあからさまだし、占い師に狐と背徳者が出るのはあり得ないので、彰はない。とすると、啓子は彰の白先だし、あるのは、希美。

希美が狐なのでは…!


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