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昼食を終えて皆が来るのを待つ間、敦也は皆を観察した。

雄大は、忠彦と仲良くなったようで、登と三人で何やら話をしているのが見えた。一見、とてもお気楽に見える雄大も、聞いてみると内に秘めた悩みがあるようだった。

こうしてみると、女性達もそれぞれ、仲が良くなった数人で固まって話をしている。美津子は美子と啓子、彩芽と固まっていて、希美、千夏、奈美が三人で固まっている。

男性は、今見た雄大、忠彦、登、そして意外にも玲が仲良くしているようで、憲二と純次が二人で何やら話しているのが見えた。

男性の方は、別に憲二と純次の方へと登が移動したり、忠彦が移動したりとうろうろするので、それで固定しているわけでもないようだ。

昨日まで居た俊と奈津美が居ないのが、ズンと心の奥に重かった。

彰は、相変わらず一人でじっと奥のソファに座って庭を見て考え込んでいた。

何を考えているのか、彰の思考を全て見ることが出来たらいいのに、と敦也は思った。彰は、初日から数日後を見越していろいろと種を撒き、それに対して起こることで判断しているようだった。

聞くことにも意味があって、それに言葉一つ間違えただけで、鋭く指摘されて怪しまれる。

人狼は、かなり彰を面倒だと思っているはずだった。

そう、人狼どころか狐も、かなり追い詰められているはずだ。

もちろん、彰が人狼でなければの話だが。

敦也は、彰に話しかけた。

「彰さん。占い先は決めましたか。」

彰は、敦也を見てフッと軽く息をついた。

「希望はある。だが、今日は君から先に指定すると決めただろう。君は、どこを占いたいと思っているのだ。」

敦也は、首を振った。

「いえ、次の話し合いで完全グレーの誰を吊るのか決めたら、その中から一人と、他の占い師の白から一人、選ぶつもりで居ます。」

彰は、頷いた。

「ということは、千夏さんか?」敦也が、驚いた顔をすると、彰は笑った。「啓子さんでもいいんじゃないか。私の白先を疑っているのだろう。しかし、残念ながら私は背徳者ではないのだ。ま、それで君の気が済むならそうしたらいいと思う。私は、完全グレーから一人と、美子さんを占う。君の白先だ。情報は積み重ねて行かねばならないからな。気が変わるかもしれないが、恐らくは美子さんで確定、グレーの事は占わないと思う。」

敦也は、不機嫌に彰を見た。もちろん、自分も彰を疑っているからこそ、呪殺が出せるかもしれないと思ってそこを占うことにしたのだが、それでも自分が疑われるのは面白くない。

「…白しか出ないのに。呪殺を狙うんじゃなかったんですか。」

彰は、笑って首を振った。

「だからだ。君が真占い師ならただの白だが、もしそうでないなら狐だろうと思った。彼女の初日からの行動を見たか?…何かを持っているように感じたのだ…女性の中で雑談している様を見ると、そもそもが控えめな性格では無さそうな風情なのだが、議論の時は静かだ。誰かがそれを指摘していたが、確かにそうだと私も思う。他はリラックスしすぎている…潜伏しなければならない役職にしては、だが。」

敦也は、しかし少しホッとしていた。美子は、狐ではない。彰が間違ってくれているから、自分は呪殺を出せる可能性が上がるのだ。何しろ、自分が真なのだ。

「彰さんには悪いですが、今夜はオレが呪殺を出します。美子さんはオレの白なんだから。」

彰は、フフと笑った。

「自信満々だな。まあ、彼女が狐だとしても、狼が噛み合わせてでも来たら私にはそれを証明できないのだから、お手上げだとしか言えないがね。」と、敦也の後ろへと言った。「なんだ、議論を始めるのか?」

敦也が振り返ると、そこには登が、純次と憲二、それに玲と共に立っていた。どうやら話を聞いていたらしい。

いつものパイプ椅子には、もう数人が座っているところだった。

登が、頷いた。

「そろそろどうかって。いいですか?」

彰は、なぜか上機嫌で立ち上がって頷いた。

「いいだろう。始めようか。」

そうして、また15人は丸く円を描いて椅子へと座ったのだった。


登は、朝の時よりは幾分持ち直した様子で、ホワイトボードの前に立っていた。皆が座ったのを確認すると、口を開いた。

「じゃあ、朝の続きだ。完全グレーは全員話したな。それを聞いて、今度は誰かに一度は占われている人たち、俗に言う片白の人たちから話を聞こうか。まずは…美津子さんから。」

美津子は、待ってましたとばかりに頷いた。

「私は、占い師は彰さんを信じています。なので必然的にそこに白を打ってる玲くんも真かなって感じ。あくまでも今の時点ではってだけで、明日以降呪殺が出たらまた変わると思うけど。完全グレーの中では、やっぱり奈美さんが怪しい。昨日からの発言で、俊さん襲撃とつながることが多いので、そう思わずにはいられません。ちなみに、憲二さん黒は信じてないわ。初日に黒って出来すぎてるように思えるし、敦也さんには真だと思える要素が今一少ないのよね。」

それも、呪殺一発で覆せる。

敦也は、思って黙っていた。

登が、問うた。

「じゃあ、今夜はグレーの中だと奈美さんに投票しようと思うってことか?」

美津子は、頷いた。

「今のままだとそうね。何か、決定的なことがあれば別だけど。」

隣りの啓子が、息をついた。

「そうね。役職のCOがあったら、今のうちに言って欲しいわ。私も、このままだと奈美さんに投票すると思う。だって、純次さんも結構自分の考えを積極的に出しているし、忠彦さんの考えも私の考えと同じだったし、雄大さんもそうだった。だから、村の自分と同じ考えが出来る村人だと思ってる。疑えるのは奈美さんしか居ないわ。」

希美が、気遣わし気に奈美を見てから、言った。

「私も片白だから話すわね。奈美さんが黒いというよりも、他が白すぎると思うの。だって、占い師の相互占いだって、別にナシじゃなかったわ。ただ、あの時は時期が悪かっただけで。何も思わないで、ただ何か意見を出さなきゃって思って言ったのかもしれないなとも思う。でも、他の人が白いから、それだけでも黒く見えちゃうのよね。だから、完全グレーの中からだったら、奈美さんで仕方がないって感じかな…。」

千夏が、隣の奈美を庇うように言った。

「そうね…確かに。でも、意見の一つとして、寡黙じゃいけないから必死で言った結果かもしれないわ。占い逃れっていうか、でも今日は占ってくれたらって言ってるし。もう一日待って、占ってからでもいいかもしれないなとは思ってる。」

それには、彩芽が顔をしかめた。

「じゃあ、他の三人の中から吊るってこと?今言ったように、他の人って黒くないわ。その三人から吊って、私が今夜黒を見られるとは思えない。私だって、いつまで襲撃されずに残るか分からないから…狩人は、連続護衛ありで守り放題だけど、うまく護衛の入っていない時に襲撃されたら、私はもう色を村に伝えられないのよ。黒を見るなら、早くしたいわ。一番黒い所に行って欲しい。」

霊能者の彩芽からしたら、そうかもしれない。

美子が、何かに気付いたように登に言った。

「ねえ、それで今夜の占いの指定先は決まったのかしら?」

登は、首を振った。

「いや、まだだな。」と、敦也を見た。「お前、自分が先に指定したいんだろ?誰にする。二人選んでくれ。」

敦也は、今の少しの会話でもう選ぶのかと、慌てて言った。

「ちょっと待ってくれ、もう少し話を聞かせて欲しい。オレは、どうしても今夜狐を呪殺したいんだ。慎重に選ばなきゃ。」

彰が、少しうんざりしたように眉を寄せた。しかし、何も言わなかったが、玲が代わりに言った。

「え~?まだなのぉ?早くしてくれないかな、僕もう指定先決めてるんだけど。そんなに考えなきゃいけない感じ?先に指定するよお?」

敦也は、玲を見た。

「いや…ほぼ、決まってるんだけど…。」

玲は、あからさまに面倒そうに言った。

「だったら、それでいいじゃん。彰さんを疑ってるとか言ってたんだし、その白から選んだらどう?それとも僕の白の希美ちゃんにするー?俊の白の美津子さんも居るよぉ?」

面倒そうなのだが、おっとり話すのでそう殺伐とは聞こえなかった。それでも、敦也は自分の無能さを責められているように感じて、勢い、言った。

「じゃあ、オレは千夏さんと、忠彦で!」

玲は、顔をしかめた。

「えー?忠彦取っちゃうの?じゃあねぇ、僕は純次と…彰さんが美子さんって言ってたし、啓子さんにするよー。」

彰が、頷いて言った。

「じゃあ、私は雄大と美子さんを。これで、とりあえず良いかな。」

美子が、それを聞いて顔を曇らせた。

「私じゃ、呪殺は出ないと思いますよ、彰さん。彰さんが真だとみんなに知らせるために、呪殺を出されるのなら、他の誰かの方がいいと思いますけど…。」

彰は、隣の美子を見て、微笑んだ。

「確認のためでもあるし。それに、私はまだ君を占うとは限らない。雄大かもしれないしな。」

雄大が、ずいと身を乗り出して言った。

「オレを占って欲しいです!もう、グレーだとか言われ続けるのは疲れるから。オレは村人だし、吊られるかもってハラハラするのはうんざりなんです。」

彰はそれをじっと聞いていたが、また微笑んで答えた。

「考えておくよ。」

しかし、奈美が立ち上がった。

「あの!」皆が、一斉に奈美を見る。奈美は言った。「誰も私を指定してないってことは、私を吊るつもりってこと?!みんな、私を殺すの?!私は…私は、役職を持ってるのに!」

皆が息を飲んだ。

役職…?狩人だったら最悪だ。猫又だったらワンチャン…。

敦也がそう思っていると、登が言った。

「待て。まだ言うんじゃないぞ。」と、皆を見回した。「オレは、彼女が猫又なのか狩人なのか知らないが、このままにしたいと思う。もし他に真が居て、露出してしまったら狩人は噛まれるし猫又は本来の機能が果たせない。ただ、今日は奈美さんを吊れないな。どうする?」

雄大が、スッと険しい顔になると、言った。

「…吊り逃れだろう。」みんなの視線は、雄大の冷たい声に向いた。「どう考えてもな。オレは吊っていいと思う。この村は、一日待つとかそんな悠長なことを言ってられるほど平和じゃないんだ。明日には、みんな死んでるかもしれないのに。」

「ルール上みんなということは無いとは思うが」彰が、脇から言った。「私も吊り逃れだと思う。他に、真役職は居るのではないかな。苦し紛れに役職COして来たのだと思う。判断が間違っていなかったということだ。今日、彼女を吊って色を見たらいいのではないかね。」

皆は顔を見合わせるばかりで、反対意見も出なければ、賛成意見も出ない。

もし真猫又だったら、明日誰かが死ぬ。人狼ならいいが、吊りで死んだ猫又はどちらを連れて行くのか分からない。

狩人だったら、大事な役職たちを守る術が無くなってしまう。ノーガードになった役職は、噛み放題になってしまうのだ。

奈美が、叫ぶように言った。

「私は、狩人よ!私を吊ったら、誰も守られなくなるわよ!信じてちょうだい!」

「待て!」登が叫んだ。「もし狩人が他に居ても出るなよ!生きてるのは分かってるんだ、だから他に居ても今、出るな!」

美津子が、苦笑した。

「出ないと思うわよ。だってこんな序盤で狩人を失ったら村が大変なのは、狩人だって分かってるはずだもの。」と、奈美を見た。「そうねぇ…じゃあ、こうしたら?後でどこかで登さんに言えばいいのよ、他の誰かが狩人なら。そこが疑われてない位置だったら、多分そっちが本物じゃない?人狼だって露出は避けたいし出て来ないと思うんだ。誰も出て来なかったら、今日は様子を見ることにしたらどう?」

彰が、それには頷いた。

「いい考えだ。このゲームはいつものゲームと違って時間がたっぷりある。隠れて狩人がパン屋にCOすることも可能だものな。それでいいんじゃないか?」

登は、ため息をついて頷いた。

「そうですね。じゃあ、狩人がいたら後でこっそりオレに言いに来てくれ。誰が人狼か分からないから、気をつけてな。オレもなるべく一人で居るようにするから。」と、皆を見回した。「それで…となるとこれ以上は話す事はないな。狩人CO待ちだ。じゃあ、夜7時にまた、ここで。その時に結果を話すよ。それまで自由行動にしよう。各自気をつけて…特に村は狼が変な動きをしないか見張ってくれ。分からないだろうけど狩人を守るためだ。」

まだ一時間も議論していなかったが、それで場はお開きになった。

奈美のCOがどう転がるのか、敦也もまだ分からなかった。


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