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昨日よりも更に暗い雰囲気だったが、空気はピリピリとしていた。本気で命が懸かっている今、誰しも死にたくはない。狼ですら、おそらくは何とかして場を自分のペースに持って行こうと緊張しているはずだった。

ぐるりと円を描いて座る中、二つの掛けた椅子は折り畳まれて脇に立て掛けられていた。

不自然に欠けたそこを意識しないでおこうとしながら、敦也は緊張気味に皆に向き合っていた。

「俊が襲撃された。改めて占い結果を頼む。」

登が言うと、彰が口を開いた。

「私は、昨日の指定通り千夏さんを占って白。」

登が、頷いて書き込んだ。

「はい、じゃあ次敦也。」

「美子さんと占って白だった。」

敦也が堅い表情で言うと、登はそれにも頷いて、淡々と記した。

「はい、じゃ、玲。」

玲は、言った。

「僕は、希美ちゃんを占って、白だった。」

それも、ただ事務的に頷いて記すと、彩芽を見た。

「結果は?」

話すのも気が重いのか、言葉が少ない。彩芽も、空気を察して静かに答えた。

「白だったわ。」

これで奈津美は、偽物だったとしたら狂人か背徳者か、狐。

但し、狐だったとしたらまだ背徳者が居たはずなので、どこかで護衛成功が出ていて、俊が背徳者だったと考えられる。

ホワイトボードには、あくまでも結果だけが書かれてあった。

*占い*

彰→啓子○→千夏○

俊→美津子○→×

敦也→憲二●→美子○

玲→彰○→希美○

*霊能*

彩芽→奈津美○

登が、息をついて皆を振り返った。

「…この結果を見て、考えることがあったら聞きたい。」

気が滅入っているのは誰も同じだった。しかし、彰が言った。

「まず、残った占い師目線を一人ずつ話して整理してみよう。私目線、啓子さんと千夏さんが白なので、グレーは美津子さん、憲二、希美さん、純次、雄大、忠彦、奈美さん、美子さん。奈津美さん白が出ているので、彼女が狂人なのか背徳者なのか狐なのかは、わかっては居ない。ただ、狐であったならどこかで護衛成功が出ていないとおかしいので、それにあの諦めた様子だったし、狂人か背徳者だったのだろうな、とは思っている。ちなみに、昨日襲撃された俊の事は、真なのか白人外なのか、まだわかっていない。」

敦也は、それを聞いてから、同じように自分の目線をまとめた。

「オレは、憲二が黒、美子さん白を知ってる。オレ目線のグレーは今、美津子さん、啓子さん、希美さん、純次、忠彦、奈美さんになる。昨日の吊り先の奈津美さんに関しては彰さんと同じだ。俊の事だって、まだそこまで考えられてない。」

続いて、玲が言った。

「じゃあ、僕だね。僕はグレーが多いよーだって彰さんが白、希美ちゃんが白しか見えてないもん。一応言うと、僕目線のグレーは美津子さん、啓子ちゃん、憲二、純次、忠彦、千夏ちゃん、奈美ちゃん、美子さんになるねえ。奈津美ちゃんは…あの感じ、狂人かなあとか思ったりしてる。もちろん、分からないよ?根拠はないんだけど、狐陣営の背徳者だったら、あんなにすぐ諦めてしまわないと思うんだー。だって、二人しかいないのに、あっさり諦められないよねえ。俊のことは…ほんとに、分からない。彰さんがさっき階段で言ってたように、護衛が入って無さそうな占い師だから噛んだのかなって。人狼だって猫又怖いでしょ?潜伏してるだろう猫又に当たるの、嫌だもんねえ。」

登は頷いて、気力を奮い立たせるように頭を振ると、ぐっと手にしたペンを握って言った。

「つまり、村目線誰が真占い師が分からないので、完全グレーだけを見ると、純次、雄大、忠彦、奈美さんって事になるな。全役職から見て、この中に一狼、ないし二狼居る事になる。今夜は、ここから吊るか、敦也の黒の憲二を吊るか、占い師から吊るかって事になりそうだが、みんなはどう考えてる?」

憲二が、立ち上がって言った。

「オレは人狼じゃない!昨日みたいにお気軽にはもう出来ない。村なのに殺されるなんて理不尽だ。占い師から吊ることを提案する。オレは少なくても、一人は偽物を知ってるんだからな。」

敦也は、憲二を睨んだ。

「オレは真だっての。お前が黒だって知ってるんだから、オレだってお前から吊りたいに決まってるだろうが!確実に黒を仕留めて行かないと、犠牲が多くなるんだからな!」

純次が、割り込んだ。

「まあまあ、そうなるのは仕方ないんだ。絶対に敵対している同士なんだしな。オレは、占い師の真贋を見極めるのが重要だと思う。俊が偽だったとしたらまだこの中に二人、真だったとしたらあと一人、本物が残っているんだろう。オレもさっきはカッとなって占い師から吊って行こうと言ったが、占い師は後一日様子を見たらどうだろう。今夜、必ず呪殺を出すって事で。で、呪殺を出さなかった占い師は吊る。そうしないと、人外が残って縄が足りなくなるぞ。」

彰が、意外だったのか片方の眉を上げた。しかし、何も言わなかった。

雄大が言う。

「そうだなあ、人狼が占い師を襲撃してきたのを見ても、おそらく占い師の中には人狼は居ないんじゃないかと思うよ。だって、吊り切りやすくなるのに、自分も吊られるじゃないか。だったら、占い師はもう1日待って、出ている黒か完全グレーから行くかどっちかがいいかな。潜伏してる人狼に当たるかもしれない。」

彰が行った。

「私目線から言うと、昨日の奈津美さんから白が出ていることから人狼ではなかったので、グレーの中により多くの人外が潜んでいることになるな。今雄大が言ったように占い師を噛んで来たことから、占い師に人狼が居ないとなると、グレーの中に狼が全部居るので、確率を考えたらそちらから行きたいと今のところ思っている。」

敦也が、言った。

「彰さんのグレーの中にオレの黒が居ますよね?だったらそこを吊って欲しいです。そしたらオレの真要素が上がる。確かに狂人の誤爆とか背徳者とか狐とか言われるかもだけど、ある程度は信じてもらえるんじゃないかと。」

憲二が顔をしかめる。それには彰は、考えるように目を細めた。

「…確かにそうなのだが、私はまだ君を信じられていないからな。誤爆の可能性もあるが、しかし憲二単体を見た時に、まだそこまで黒い要素を見つけられていないのだ。昨日からの話し合いの中で、もっと黒い者達を見つけている。なので村の意見を聞いて、決めたいと思っている。」

敦也は、唇を噛んだ。信じられていない…。

登が、疲れた声で言った。

「昨日襲撃されたのが俊だったからな。これが敦也だったら、黒を見られたことで焦った人狼が真を知って狙ったんだと判断して今日は憲二だっただろうけど、護衛が入って無さそうなのは敦也も同じなのに俊を狙ったことから分からなくなった。」

敦也は、顔を赤くした。確かにそうなのだが、それでもそれは人狼がオレを残そうとしたからで…!

「だからだ!」敦也は言った。「オレが真なのを知ったから、オレだけ残して他の護衛入ってない所を選んだんだよ!狐を知るために…きっとそうだ!オレが偽物なら、人狼は憲二を吊らせようとオレを狙ったはずなんだ!憲二を守るためにも、オレを襲撃するわけには行かなかった。彰さんは護衛が入りそうだし、玲は昨日の議論で狐かもとか言われてたし、確実に襲撃成功しそうな所を狙ったんだとオレは思う!」

登は、困ったように彰を見た。彰は、言った。

「君が言うことはもっともだ。しかし肝心の憲二より黒い所を精査する方が、私達目線安心なのだ。君が生き残った事実は重い。私は黒塗りするために残されると昨日は思っていたので、生きていて当然だと思っているのだが、君は生き残ったのだ。その君の黒は、今日吊るのは難しいかもしれない。」

敦也は、そこまで自分が生き残ったことで信じられないとは思わなかった。全ては昨日黒を見つけてしまっていたからで、憲二を占ったことを、今さらながらに後悔していた。

「…だったら…今日はオレから指定先を選ばせてください。」敦也は、言った。「確かに狐だろうって所を選んで占いたい。呪殺を出さないと、誰にも信じてもらえないんですから。」

彰は、玲を見た。

「玲、それでいいか?」玲は頷く。彰は頷き返した。「では、君から占い先を指定してくれていい。私は君が占った先と、今日吊られず残ったグレーから一人、指定しよう。君の真を信じる情報を積み重ねるためにもな。」

忠彦が、おずおずと口を開いた。

「それで…じゃあグレーからなんだな?完全グレーのオレ達が話していいか。命が懸かってるんだから、こっちも死ぬ気で弁明するぞ。」

登は、頷いた。

「ああ、占い師の中にもし人狼が居たとしても、2日連続で囲ってはいないだろうし、間違いなくお前達の中に少なくとも一人は狼が居るはずだ。話を聞こう。

忠彦は、その小太りの体を小さくして、小刻みに震えながら頷くと、口を開いた。」


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