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午後の話し合いは、皆どんよりと暗い表情で向かい合って始まった。

彰は、どうやら本来話すのが面倒な性格のようで、今日はもう許容量は話したのであまり口を開くのも面倒だ、と、本当に必要なこと以外は黙って聞いている状態だった。

朝の会議が終わった後、占い師とパン屋が集まって話し合った事は、登が説明してホワイトボードに書いた。

占い師の考えとして、今夜は情報を待ってグレーでも占い師ランでもなく、確実に偽が透けて見えている、霊能者の中から吊るという形にしたい、ということだ。

そして、占い師が指定先を二人ずつ選んでいることも知らせた。

〇指定先

彰→千夏

俊→忠彦、奈美

敦也→純次、美子

玲→雄大、希美

明日は、この中から占うことになる。そこから先は、誰かの白先でも占い指定することが可能だ。

そういう形で、呪殺が起こった時に分かりやすくするためだった。

「それは…彰さん以外は、どっちかを占うってことだな?」

忠彦が言う。登は、頷いた。

「そうだ。占い師が多いからグレーが足りなくてな。人狼が噛み合わせて来るのを避けるために二人にしてる。まあ、噛み合わせて来ても今は、背徳者も生きてるだろうから分かるけどな。」

「今日吊られる人が背徳者だったら分からないわよ?」美津子が、言った。「出来るだけリスクは避ける方向で考えましょう。絶対勝ちたいし。」

登は頷いてから、ホワイトボードの前で立ったままみんなを見回して言った。

「で、どう思う?少なくても二人は真が居る占い師と、オレが考えた結果なんだが。他に意見があったら聞かせて欲しい。」

雄大が、手を上げた。

「いい?」登が頷くのを見て、雄大は続けた。「今日はそれでいいと思うけど、明日は霊能者を吊り切るの?だったら反対だな。霊能者は、あきらめてる霊能者の方が間違いなく偽だと思うから、限りなく真の霊能者まで吊る必要はないと思うんだ。だって縄がもったいないでしょ?出来たら占い師を綺麗にして行きたいし。」

それには、俊が首を振った。

「それは無いと思う。今日、霊能に行こうと思ったのは、占い師の中でも誰が偽なのか情報が少なすぎるからなんだ。それなら、もう1日結果を見て情報を収集して、それから考えようってことになった。なので明日からのことはまだ考えていないが、今日はまず、偽物だろう所を吊った方が良いと考えたんだ。」

ずっと黙っていたおとなしい啓子が、何か話さなければと思ったのか、口を開いた。

「それを、人外が二人混じっている中で考えたってことですよね…?それも、情報にならないかしら。占い、霊能が、狼、狼じゃそうはならないし、狐、背徳者でもならないと思う…。ということは、狂人が霊能者に出てるのかな?」

案外に鋭いことを言う。

敦也が感心していると、隣の彩芽が言った。

「必ずしもそうとは限らないと思うな。だって、狐が占い師に出ていて霊能者に背徳者だったら、どっちでもいいんじゃないかな。自分が残って勝てばいいんだし。狼からは狂人が分からないから切り捨てちゃうだろうし、同じようなことが狐の間でも起こりそうに思うわ。狼狼が無いってだけで。」

奈津美はあくまでもだんまりだ。さっき注意したのに…と敦也は歯噛みしたい気持ちだったが、もう吊るんだからと我慢した。

玲が、言った。

「だからぁ、今日は、あきらかに偽を吊ることで縄を無駄にしないってスタンスなの。情報が少ない初日で偽が吊れたら村にめちゃ有利でしょ?その間に、占い師の真贋を付けるんだよー。ラッキーでしょ?初日から偽が見えてる役職があるなんてさあ。」

純次が、むっつりと黙ってそれを聞いている。登が、何か言いたそうな純次に、話を振った。

「純次?何かあるか?」

純次は、フンと横を向いた。

「偽が二人も混じってる占い師の中で考えたっていうのが信用できないと思ってただけだ。うまく言いくるめられてるんじゃないかって心配になる。」

まだ彰に言い負かされたのを根に持ってるのか。

敦也は思ったが、登も同じように思ったようだ。とはいえ、当の彰はそれこそ面倒そうに顎を上げて、目を細めて上から見下ろすように見ているだけで、口を開かなかった。なので、仕方なく登が言った。

「オレも居たし、考え方は間違っていないと思う。恐らくは、この中の他の陣営の偽物も、合わせてるんだと思うんだ。だから明日以降、ぼろが出て来るのを待つしかない。情報を出せば出すほど、絶対にどこかおかしなことが出て来るんだ。それを待つしかないと思っている。」

そう、純次にだってこの中の誰が偽物なのか分かっていないはずなのだ…純次の陣営が、敵陣営でない限り。仮に敵であっても、役職によって知っていることは限られていているのは確かだが。

敦也は、じっと純次を見つめた。自分の指定先だし、ここを占っても実はいいのだが、これほど今、目立つ行動をしている純次が敵の可能性はあるだろうか。

人狼の可能性はあっても、狐の可能性は低そうだ。

既に一つ黒を見つけている敦也にとって、黒より狐の方が今は占いたい位置だった。何より、黒を見つけても信じてもらえないとどうにもならないのだ。

するとそこで、だんまりだった彰が口を開いた。

「今夜は、占い師は狐を探して占う。」敦也は、ハッと顔を上げた。彰が皆に向けて続けた。「黒はついでだ。見つけたらそれに越した事はないが、今日の敦也を見ても黒を見つけたところで信用が無ければ村に響かないだろう。呪殺を出してまず信用を取り、そこから黒を探す戦略だ。寡黙位置は狐と見なされるから、村なら積極的に発言して欲しい。私達に情報を渡すのも村の役割だと思う。」

彰がわざわざそんなことを言うのが、敦也には分からなかった。これで狐が頑張ったら、こちらは占い先に困るのではないか。

しかし、彰にとってはそれは言わなければならなかったことのようで、それだけ言うとまた黙った。

彰の意図は分からなかったが、美津子が言った。

「ということは、吊り先はほぼ決まっているから、明日のために占い師に情報を与えなきゃってことね。私は昨日から積極的に発言しているし片白だから、じゃあグレーに順番に話してもらった方がいいのかしら。」

登が、頷いてホワイトボードを見た。

「じゃあ…彰さんは一人指定だし千夏さんだけだから後回しで、俊の指定先の忠彦から行くか。」

忠彦は、腕を組んだ。

「いいけど、オレは結構話してると思うけどな。まあいい、ええっと、何を話す?狐予想としたら、黙ってる位置が怪しいと思ってるから、美子さん、千夏さん、奈美さん辺りが怪しいかなと思ってる。占い師の中に狐が居るとしたら…どうだろうな、見るからに真占い師っぽい彰さんに占われたくないと考えたとして、玲かなあ、ってぐらいだ。とはいえ玲も真っぽいから、多分違うだろうけどな。」

言われた奈美が言った。

「私は狐じゃないわ!みんな思考が速いからついていけなくて黙ってただけ。でも、確かに黙ってたのは怪しいよね…私から見たら、美子さんとか怪しいかな。だって、みんなで居る時は結構話すのに、議論の時は黙ってる事が多いんだもの。占い師はみんな真に見えて分からないわ。今忠彦さんに言われて、確かにそんなこともあるかなと思ったぐらいよ。」

登は、美奈を見た。

「じゃあ、奈美さんから見て占い師の内訳はどう思う?」

奈美は、顔をしかめた。

「分からないけど、人狼は出てないんじゃないかな。狂人に期待して人狼は潜伏してるように思うの。だから、占い師に狐と狂人で、霊能者は背徳者と真なんじゃないかなって思ってる。だから、呪殺は出ないんじゃないかって心配してるわ。」

彰はあくまで黙って聞いている。敦也は、言った。

「じゃあ、占い師同士の相互占いがいいってことか?」

奈美は、頷いた。

「そうね、その方が呪殺出来る気がする。」

玲が、ふーんと少し微笑んだ。

「グレーに行きたがらないのって、潜伏したがる人外の思考って気がするんだよねえ。」

それには、雄大が頷いた。

「オレもそう思った!占われたくないんだから、狐かな?とか。指定されてたら焦るよね。どっちにしても人外は絶対グレーにも居るんだもんね。黒でもとりあえず結果出せたらいいんだからさあ。占い師の相互占いは数が減ってからでも出来るもんね。」

奈美は、顔色を変えた。

「違うわ!私は狐が占い師に居ると思って…狐を探すって彰さんが言ってたからそう思っただけよ!」

俊が、黙ってそれを聞いている。敦也は、多分今日は奈美を占うだろうな、と思っていた。忠彦は昨日から落ち着いているし発言もしている。潜伏しようという感じを受けないのだ。しかし、奈美ならもしかして、何か出るかも知れない。

敦也は、先に奈美を取れていたら、と思っていた。占い指定が先だったから、あまり意見も聞けないままに決まってしまったのだ。

彰は、それを興味深げに見ている。それを見て、もしかして彰は、自分の指定先を、各々しっかり見るようにとこうして先に指定させたのではないか、と思った。その反応を見ることで、そう、占い師達と指定先の両方を、彰は観察して情報を頭に蓄えているのでは。

そして、自分の他の真占い師を探しているのでは。

そう思うと、敦也は自分こそ真なのだと気合いが入った。俊は、自分目線真もある反応だ。それでも、占い師がこの中に二人しかいない以上、彰が真なら俊は偽物なのだ。

彰が、偽物だったら…?

敦也は、うすら寒いものを感じた。あれで偽物なら、太刀打ち出来るのだろうか。

敦也がにわかに不安になっていると、玲が言った。

「ねえ、僕の占い指定先も話して?雄大はいいや、昨日から散々いろいろ話してるし。あんまりしゃべってない希美ちゃんはー?怪しいなあ。」

希美は、フフと笑いながら、言った。

「もう、なんか玲くんには疑われても憎めないなあ。私はね、村人。だから占っても白しか出ないよ?でも、占ってくれたらグレーを脱却できるからいいかなあ。それに、私は昨日もちょっと発言してるけどな。私が怪しんでるのは、奈美ちゃんと同じで美子さん。啓子ちゃんみたいにおとなしいから会話に入れないんじゃなくて、入れるスキルがあるのに黙ってる感じだから。潜伏したがってるのかなあって思うから、占うならここを占って欲しいって思うわ。占い師は、ほんとにみんな真に見えるの…これは感情だけど、玲くんが嘘を言ってるように見えないから真かな、その白先の彰さんがとても村のために考えてるように見えるから真かな、って感じ…だから、誰が怪しいんじゃなくて、真っぽいから他の二人が消去法で怪しい、って感じでしか分からないわ。誰が真でもおかしくないんだもの。」

登が、同感だとばかりに頷いた。

「そうなんだよなあ。誰が真でも驚かないんだよね。みんな白くて、みんな言ってることは間違ってないし村目なんだ。そうだなあ…じゃあ、怪しまれてる美子さんは?」

美子は、息をついた。

「私は、みんなの期待を裏切って悪いけど狐じゃないわ。そう言うしかないと思うかもしれないけど、ほんとにそうなんだもの。私が疑っている先は、千夏ちゃん、奈美さん、希美ちゃんかな。朝は占い師を吊りたがる中に狐が居るかなって考えてたんだ。でも、狐が中に居たらどうだろうって。占い師の中に居たら、彰さんは占い師の精査を今朝日散々言ってたし、見通しよくするために占い師から吊るって言っても同意してたから少なくても狐ではないなあって思ったけど…他の占い師もそれに反対する様子もなかったし…。他はよく分からないわ。みんな怪しくないってことは、みんな怪しいって思うようにしてるから、占い師の結果は呪殺が出るまで信じないつもり。」

登は、うーんと首を傾げた。

「じゃあ、君は占い師の内訳のことはどう思う?」

美子は、眉を寄せて唸った。

「そうねえ…奈美ちゃんは狼が潜伏してるとか言ってたけど、私はそうは思わないの。狂人がどう出るのか分からないのに、狂人任せにするかしら。今言ったことも合わせて、狐は占い師の中に居ないとしたら、人狼と狂人が出ていてもおかしくないし…狼と背徳者としてもおかしくないと思うわ。つまり、霊能者は狂人なのかなってのが私の推理よ。狼が出るなら、吊られにくいと思われている占い師に出るんじゃないかって思うから。」

登は、頷きながら彰の方を見た。しかし、彰は口を開かず、ただじっと黙って聞いている。何を考えているのか、その表情からは全く分からなかった。

「オレもしゃべるよ?」雄大が、皆に宣言してから、話し始めた。「話を聞いてると、美子さんの見方は村っぽいと感じたな。オレも彰さんを妄信するのは危ないと思ってるから、誰も怪しくないのが逆に怪しいと思って、占い師全員を偽だと思って見てるよ。そうでないともし彰さんが背徳者だったりしたら、狐をうまく隠してしまいそうだからね。でも…正直な話、とても発言が強いから狼か真かどちらかだろうなってのが感想なんだけどさ。回りが人より見えてないと、あそこまでハッキリ物が言えないと思うんだよなあ。」

登は、顔をしかめた。まあ占い師は、明日呪殺が出たらうまくその一人を使って真贋を付けて行けばいいし、最悪それ以外は吊ってしまう方向でもいいか。

「じゃあ、意見は聞いたかな。純次は?何か言いたいことがあるか?」

純次は、むすっとしたままだったが、言った。

「オレは今の話を聞いていて、美子さんと雄大は村っぽいなと思ったよ。逆に奈美さんは、占い師の内訳が見えてるように感じた。だから、怪しいんじゃないかって感じかな。今の時点で見えてる方が怪しいんだ。だから彰さんだって見えすぎてるように思うんだけどね。」

彰は、片眉を上げた。しかし、何も言わない。

敦也が、横から言った。

「でも、見えすぎって言っても占い結果からと発言からの考察で、その考察に至った過程を言ってるからおかしくはないと思うんだけどな。どの辺りが見えすぎだと思うんだ?」

純次は、それには言葉を濁した。

「それは…」

具体的には、出て来ないのか。

敦也は、思った。やはり、純次は彰に何やら感情的に軋轢を感じているらしい。

彰は、そこでやっと口を開いた。

「グレーの話が聞けて良かったよ。私の占い先は一つだが、他の占い師はこれで狐らしき場所が見えたんじゃないか?私としては、相方が呪殺を出してくれることを祈っている。私自身の思考のためにも、確実に相方を知るのが一番重要なのでね。自分の信用は、自分の思考力で掴むつもりだ。人狼に陥れられないように、精々気を付けておくよ。」

登が、きょとんとした顔をした。

「え…どういうことですか?」

彰は、笑った。

「真占い師は人狼にとっても目の上のたん瘤だからな。特に強弁であればもっとだ。私を噛めば済むのだが、それをすると私が真だと言っているようなもの。何より守られている可能性がある。ならば不審を煽り、村に吊らせれば吊り縄も消費出来て一石二鳥じゃないか。だから、私を陥れようとしている中に人狼は居ると私は思っている。今夜の襲撃先も、なんとなく予想がつくというものだ。私の真を陥れる、もしくは証明出来ない場所を襲って来るだろうからだ。警戒されてはいけないので、どこだとは言わないがね。」

ほとんど言っているようなものじゃないか。

敦也は思ったが、黙っていた。人狼には分かっていないかもしれない。

彰の真を僅かでも上げてしまう襲撃先は、白先の啓子と、彰に白を打っている玲だ。玲が真なら、彰は必然的に白となり狐でもなく、狂人もしくは背徳者、真となる。今の村の様子なら狼か真だと思われているようなので、ほぼ真だろうとなるかもしれない。

となると、残りの二人、俊か敦也を襲撃するとどうなるだろう。

襲撃されなかった彰は偽目が出て来る。呪殺が出せていなければ、そして他の残った誰かが呪殺を出していれば、吊り対象にもなるかもしれない。

霊能者を襲撃したら?

黒を出して吊っても証明する術がなくなる。襲撃されずに残っていたら、いずれは吊り対象に上がるだろう。

彰は、この三人、俊か敦也、彩芽を襲撃して来るだろうと予測しているのだ。

そして、陥れようとしているとしたら、彰を信じていないと言った、美子、雄大、純次ということになる。

彰は、ふふんと笑うと、立ち上がった。

「さあ、私の推理は終わりだ。今日の吊り先は決まっているのだろう?ならば、皆の意見を聞けたのだし話し合いはとりあえずここまででいいか。少し休憩したい。」

登は、どこまでわかっているのか分からないが、戸惑いながらも頷いた。

「ええ…はい、そうですね。後は、また投票前ということで。20時から投票だと言っていたので、19時にまた、ここで。」

皆が、黙ったまま顔を見合わせている。

彰は、立ち上がって日本語でも英語でもない、別の言語で純次に何か言った。

純次は顔色を変えたが、彰は笑ってそこを出て行った。

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