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LEGEND COLLAR~色彩の英雄~  作者: 水晶 蜻蛉
黄の章 憧れの異世界 編
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黄の章 第5話 ハンティング

青の章で展開が遅すぎると反省したので黄の章では少しテンポよく話が進む予定です。はい、あくまで予定です。

どうも細部まで書きたがる性分なので内容が詰め込み過ぎになる可能性もありますが、その場合はその都度分かりやすい言葉に置き換えるなど対処していきたいと考えております。

黄の章 第5話 ハンティング

 

 太陽の光が降り注ぎ豊かな森に更なる活力と恵みをもたらしている昼下がり。様々な動植物の発する音がやかましく鳴り響く中、森の中をわめきながら走る四つの影がある。

 影の正体はこの森では珍しくない……いや、酷くありふれた生物である小鬼ゴブリンだ。その名の通り小さくやせ細った体躯の鬼であり、彼らはその細い身体を全力で駆使し彼らの身体の数倍も太い木々を避けながら走っている。

 彼らは最低限の木々や岩などを避けながら必死の形相で身体を動かし、身体をかすめた小枝や木の葉が渇いた音を立て、意図せず蹴り飛ばした小石が茂みに飛びまた音を立てる。彼らの口からは呼吸する度にぜえぜえと悲鳴交じりの喘鳴が突き出ている。はっきり言って今の彼らは酷く騒がしい。

 小鬼と言う種族はこの森では強者では無い。肉を好む雑食ではあるものの同程度の体格を持つ生き物と比べれば草食動物にすら劣る弱者である。

 弱者であるなら本来はこの様に物音を立てる物では無い。優れた五感を持つ上位の肉食動物に自分の居場所を教える事になるからだ。しかし、今の彼らに自身の出す物音を気にする余裕は無い。

 

 走る事に気を取られ過ぎ、僅かに地面から出ている木の根っこに一匹の小鬼が足を引っ掛け大きく体勢を崩した。不注意な小鬼は転びこそしなかったが一度地面に手を付き、再び疾走に移るまで数秒を要した。野生に置いてこの数秒は致命的だ。

 その証拠に他の三匹は既に数十歩先を進んでいる。彼らが歩いている場所は整備された道路では無く、見通しの悪い森の中だ。今は辛うじて仲間の姿をその目で捉えられているが、これ以上距離が開けば仲間を見失う。それを知っているからか、集団から遅れた小鬼は気が気でないだろう。

 

 しかし唐突に遅れた小鬼の直ぐ傍の木々の間から灰色の体毛を纏った獣が飛び出す。狼だ。

 

 小鬼より一回り小さいものの勢いの付いたその全身を使った体当たりを真横に受け、それを予期せず無防備に受けた小鬼は今度こそ地面に倒れた。恐怖のあまり四肢をやたらめったら振り回し狼を遠ざけようとする小鬼の足首に灰色の狼はそのあぎとを突き立てそれを左右に振り回す。狼の真っ白な牙は瞬く間に赤く染まり肉が裂ける生々しい水音に興奮した狼は骨まで砕かんばかりに強靭な顎を駆使する。

 だが小鬼にとっては幸運な事にでたらめに振り回した逆の足が狼の側頭部を捉え、怯んだ狼が小鬼の足首を解放した。

 

 無残に裂けた傷口から溢れ出る血で地面を濡らしながらも、生きる為に起き上がりそして走り出す小鬼。だがその足はたったの数歩で止まった。

 

 前方から俺ともう一匹、黒毛の狼が飛び出したからだ。

 仲間の姿は既に影も無く、土と自身の血で濡れた小鬼の顔。果たしてそれは負った傷の痛みからか、それともこれから自分に訪れる運命への恐怖からかあふれ出る涙で覆われていた。だが同情は出来ない。哀れに思う事は許されない。

 

 「よし、じゃあ後は予定通に頼むぞ二匹とも」

 

 俺の言葉に小鬼の後方に控えていた灰色狼と黒狼が小さく吠える。了承の意だ。

 ……数分後、決死の抵抗虚しく体力の尽きた小鬼は背後からの俺による体当たりにより地面に倒れ伏し黒狼に首筋の肉を噛み千切られて二度と起き上がる事の無いむくろとなったのだった。

 

 

 ……

 …………

 ………………

 

 

 狼の生態には人間よりも厳しい縦社会のルールが存在する。その内の一つが「群れのトップから順に餌にありつける」と言う物だ。

 言うまでも無く群れのトップとは俺の父親ノーガであるが、彼はこの場に居ない。

 序列で言うなら末端も末端の子供であるが、この場に居る俺を含む三匹の子供狼の中にも序列は存在する。上から俺、黒狼、灰狼だ。……まあつまりは俺がそこに転がっている小鬼の死体に口を付けなければいつまで経っても他の二匹は飯にありつけないと言う訳だ。

 俺は渋々小鬼の肩口の肉を食い千切り口に含むと他の二匹に顎で食事を促す。黒狼が真っ先に小鬼の腹部を食い破り、灰狼は数拍遅れて先刻自身が噛み付いていた足を食べだす。その様子を見届けると俺は近くの茂みに口内の肉を吐き出す。

 異臭特典付きの不味い肉を嚥下するのは俺には無理だ。本当は口に入れるのも嫌だが群れの中で生活している以上それは許されないのだ。

 

 「おなか、いっぱい! いっぱいたべた!」

 「フウタ、すごい! かりうまい! きょうもにく、たべれた!」

 「はーはっはっは! うやまあがめろこびびへつらえ。じゃあ食い終わったなら帰るぞ」

 「「はーい」」

 

 俺がこの世界に生まれてから既に二月が経過している。

 生後二週間当たりでお父様の狩りを見学し更に二週間の間、お父様ノーガは日替わりで子供数匹を狩に連れて行った。そしてその後唐突に「これからは自分で餌を取る様に」と言うと一切俺達に肉を与える事をしなくなった。

 俺は毎回連れ出されるたびに不味い生肉を食わずに済むと歓喜したが、他の子供たちはショックを受けた様だった。まあ、確かに俺も生後一か月で一切の手助けが無くなると思うと幾ら狼でも厳しい気がしなくも無かった。

 だが群れのボスの決定は絶対だ。その日から子供たちのサバイバルが始まった。

 

 次々に森へ餌を求め歩みだしていく子供達。その中で俺は今現在行動を共にしている灰狼と黒狼に声を掛けた。「俺がお前たちのリーダーをするから、協力して狩りをしないか?」と持ち掛けたのだ。二匹とも一度首を傾げた後意外にも簡単に了承してくれた。まあ、俺の言葉の意味を全て理解した訳では無く、子供らしい純朴さで「ついてこい」と言われたから後を付いて来たと言うだけかもしれないけどな。

 まあ俺がこの二匹に声を掛けた理由は単純。「数こそ力」と言う事だ。一匹より二匹、二匹より三匹の方がこれから生きて行く上で有利なのは間違いない。

 じゃあ十数匹居る子供達全員を連れて行けばいいと思うかも知れないが、数を増やす事にだって当然デメリットはある。集団の数が増えればそれだけ多くの獲物を仕留めなければならなくなるし、狩りの際に対象に先に気付かれやすくなる。プロの軍隊や傭兵なら森の中でも円滑な集団行動が出来るだろう。だが生後一か月の子供狼では幼稚園児の遠足並みの騒がしさになる。先程仕留めた小鬼だって四匹でぎゃーぎゃー騒いでいる所を俺達に見つかったのだ。統率の取れない集団では余計な外敵を呼び寄せる。

 子供の狼の中には未だに満足に会話の出来る物が半数も居ない事を考えれば、一度お父様の狩りを見学した際に拙いながらも言葉の扱えた彼らに声を掛けるのは、偶然では無くそれなりに考えた結果なのだ。そしてその結果はそれなりの成果として表れている。

 

 ……別に人間時代のコミュ障を発揮して、同世代の子供相手に緊張して話し掛けられなかったとかでは無い。断じて違う。

 

 まあ、今現在俺達三匹が十分な食事を出来ている事を考えれば俺の判断は正しかったのだろう。食生活の影響か俺達の身体も大分成長した。俺は他の二匹よりは小さいものの大型犬程度の大きさになっているし、灰狼と黒狼は俺より一回り大きい。今の所、俺達三匹は同世代の子供の中ではトップスリーを占める大きさに成長してるからな。それでも三匹の体躯を全部合わせてもお父様の半分の大きさも無いと言えばまだまだ俺達に成長の余地はあるのだろう。

この一カ月で既に四匹もの子供がお父様達の待つ住処へ帰る事が出来ていない。殆どの子供は狩りが成功しようとも失敗しようとも暗くなる前には安全な住処に帰っているのにだ。帰って来て居ない子供がどうなったのかは想像に難くないだろう。

 因みにここ最近俺の指導の元行われている狩りの手法はインターネットで目にした記憶のある狼の狩りの風景と親友であり副業で傭兵をしている天月から聞いた外国の戦場で本当にあった野犬被害の情報を元にし、それを更に幾度の実戦を経て磨いたものである。

 それは言ってしまえばただの追い込み漁の様な物だが、獲物を追いかけまわし体力が限界に来た所で狩ると言う物だ。獲物が弱っていればいる程俺達は安全マージンが取れるし獲物を逃がす確率も減る。シンプルだが野生の狼が実践しているだけあって異世界でも今の所通用している。

 

 帰路で後ろを歩く二匹を見ると両者とも長く走った後だからか舌を出して体温を調整している。……いや、走ったせいだけではないか。二カ月で大分気温が上がり、過ごしやすい気候になって来た最近ではある。これから更に気温が上がるらしいのでクーラーも冷蔵庫も無い生活に耐えられるか少し不安である。

それに同時に温かくなると強い獣も活発に動き出すと言うのはお父様の談だ。

 今でこそ住処の周辺は小鬼や今の俺程の体躯を持つ昆虫等が殆どで、俺達に積極的にちょっかいを出してくる肉食獣は未だに見ない。まあ手を出したら確実に返り討ちに合うであろう鹿や馬、猿っぽい生き物も居るにはいるが大抵は俺達の事等構わない。

お父様程大きな狼なら兎も角、子供の狼に等負ける訳が無いと言った様子だからな。俺も鹿や馬なら生肉の味も多少良くなるのじゃないかと思うのだが、俺の中では生肉は食い物として認められないので狩ろうとは思えない。苦労して仕留められたとしてその報酬がただの生肉では全く食指が動かないのだ。

 この世界では生き物を倒してもRPGゲームの様にアイテムをドロップする訳では無いと言う事実も食指の動かない理由の一つだ。これで調理済みの料理や装備品なんかをドロップしてくれれば多少危険でもやる気がでるんだけどなぁー。

 

 あージャンクフードが食いたい。キンキンに冷えたビールが飲みたい。快適な部屋でゲーム三昧の日々を送りたい。

 何と言うか、緊張感は有っても今の所危険スリルが足りないのだよな。もっとこう、ゲーム的に言う「イベント」みたいな? そう言うのが欲しいよな。過酷は過酷なんだがこう順調に生活が送れていると少しずつ気が緩んできて欲が顔を出してくる感じがする。あれ? 俺ってもっといろいろ出来るんじゃね? ってな感じにな。

 今の所俺をこの世界に送った女神の頼み事に関する情報も、俺と共にこの世界に来た奴等の情報も全く無い。が、まあ何とかなるだろうと思ってる。根拠は無いがな!

 おいおい、異世界さんよこんなもんか? もう少し楽しませてくれよ! もっとおれにファンタジーな要素プリーズだぜ!

 

 



はい、見事に調子に乗っている風太郎でした。

賢明な読者の方であれば風太郎がこの後の展開でどうなるのかはお分かりですよね? まあ、この後書きを書いている時点で筆者は次の話に手を付けても居ない訳ですが……。

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