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LEGEND COLLAR~色彩の英雄~  作者: 水晶 蜻蛉
黄の章 憧れの異世界 編
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黄の章 第2話 獣

少し短めの内容になっています。

黄の章 第2話 獣

 

 結論から言うと俺は人間から狼に生まれ変わった。そう狼、英語で言うとウルフだ。

 産まれたばかりだからか、うすぼけた視界。そこに確実に人間では無い毛むくじゃらな四肢をおぼろげに捉えた時は胸の奥でこれまでに感じた事の無い様な熱が渦巻き、無意識のうちに口が開き喉の奥から意味の無い方向が飛び出していた。とは言え俺の中の膨大な興奮に対し俺の叫びは小鳥並みの情けなさではあったが。

俺は、少なくとも人間を辞めた。あの真っ白な空間に居た女神の言った通りに。なら、俺が生まれたこの世界も彼女たちが言った通り「異世界ファンタジー」の世界であると確信を持った。

 

 今から約二週間前、地球で人間として誕生した鎧塚ヨロイヅカ風太郎フウタロウはこの異郷の地にて狼として再び誕生した。生まれ変わったのだ。

 生まれてから二日間は目が見えずに苦労したが、今では人間だった頃よりも視界が良好だ。嗅覚や聴覚も予想より遥かに優れたもので自分が人間では無くなった事を嫌でも実感させられた。妄想よりも確かな現実リアルを実感したんだ。

 

 今はこの世界で俺を産んだ母親狼の乳房に吸い付いている。兄弟達と一緒にな。

 視界が良好クリアになって初めて母親かのじょの顔を見た時はその迫力にちびりそうになった。動物園で檻の向こう側に居るのとは違う、視界いっぱいに広がる肉食動物の顔だぞ。怖がらない方がどうかしている。

 そりゃ俺だって狼は嫌いじゃないさ。むしろその生態や伝承等はクールだと思う。北欧神話のフェンリルとかな。

 今は流石に慣れたが、初めの頃は恐怖で足がすくみ自分の母親だというのに目を合わせる事すら出来なかった。

 しかし母親狼は、……何と言うかあまり俺に関心が無い様子だった。大抵は一日中寝転がって俺や兄弟に|乳(餌)を与える。何日かに一回は他の狼と一緒に何処かへ行き、帰って来た時は必ず自分たちの餌を引きずってくる。

 

 ああ、そうそう。他の狼と言えば母親狼以外の狼も居る。狼は群れを作る生き物だ。この世界でもそれは例外ではないらしい。

 先ず俺の母親と同じ大きさのメスが二匹。合計で三匹の大きなメスはそれぞれ数匹の子供を世話している。つまり俺と同じ赤子の狼が沢山いる訳だ。

そして群れのボスである父親狼。父親狼は赤子の俺達の十倍近い体格の母親狼の更に一回り大きな巨狼だ。多分地球に居るどんな狼よりも大きいのではないかと思う。

いや、別に俺は動物関係の知識にそれほど詳しくは無いのだけれどな。


俺が現在、暮らすこの場所はどうやら森の中の僅かに開けた場所の様だ。辺りには日本でも見かけそうな木から海外の写真でも見た事の無い様な奇妙な色形の木々が生えていた。そして俺の居る周辺だけは父親狼よりも数倍は大きな岩がゴロゴロしており、岩が無い場所も落ち葉が地面を覆い隠し雰囲気だけなら中々好ましい所だ。

流石にここからじゃ森の規模までは分からないが木々の高さがとんでもなく高く見える事から、そこそこ大きな森だと勝手に認識している。

 

 さてここで重要なのは「狼」と言う生物の生態についてだ。狼は人間よりも厳格な縦社会を持つ習性があると言われている。「縦社会」つまり群れに目ボスリーダーをはじめとした序列が存在し、上の序列の者が下の序列の者を統率する集団だ。この習性を持つ生物は多く存在する。代表的なのは犬や猿、昆虫だとアリハチだな。

 俺の生まれた群れだとボスが父親狼だと言う事は分かるのだが、それ以外の序列がいまいち分からない。まあ、群れの様子を観察していればその内分かる事だけどな。

 

 「ぐぇ!?」

 

 今一番厄介な現実は、こうして大人しく考え事も出来ない環境だ。遊び感覚で(実際遊び)ダイナミックに兄弟達が俺に絡んでくるのだ。食事と睡眠以外の時間は全て遊びに費やす幼き悪魔ガキ共のお陰で、俺はこの数日体力が尽きるまで彼らの遊びに付き合わされている。まあ見た目だけはほぼ子犬わんこなので大人の狼共を見るよりは大分癒される。

 今の俺の姿も傍から見ればこんな可愛いプリティな見た目なら女性受けは悪くないだろう。どこかの裕福な家庭で美女に飼われイチャイチャしている自分の姿を妄想して、そんな生活も悪くないと夢想する。

 最も現実問題、十中八九で暫くの間この群れでの生活を余儀なくされるのだが。

 

 俺の記憶では犬や狼は子供の頃に遊びながら狩りの仕方を学ぶ。ならば俺も全力で遊べば物語に出て来る狼の様に強くなれるのでは? そうと決まれば俺も全力で遊びに付きやってやる!




 と、その意気込みは初日に潰えた。

子供の理不尽で無尽蔵の体力には敵わなかったよ……。

 いや、冗談じゃなく。俺と同じ体格なのにどこにそんな力があるのだ? って程無限に遊び続けるんだよ、あのガキ共。可笑しいだろ。あれか? 俺は生まれ変わっても安定の低スペックですか? ああそうですか。

 ……上等だよ! こちとら二十三年間運動音痴と呼ばれ続けていますから。慣れていますから!

 兄弟達が体当たりやら取っ組み合いやら木の枝の取り合いで戯れている間、俺はその様子を呆然と眺め、乱れた息を整える。

 

 ……異世界、思っていたよりハードモードかもしれん。

 

 


皆さんはファンタジーやSFの世界に自分も行きたい! と思いますか?

 筆者はお金さえ掛ければ様々な美味しい食材が手に入る日本から離れるなんて考えられません。異世界どころか戦国時代にタイムスリップしただけで食材のバリエーションの少なさが原因で死ぬと思います。


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