青の章 第2話 小さき命
青の章 第2話 小さき命
さてさて、やって来ました異世界。
神様達に呼び出された真っ白な広い空間から一転、真っ暗で狭い場所に現在俺はいる。
生まれ変わりねぇ、俺は何に生まれ変わったのやら。
いつだか『もし生まれ変わったら何になりたい?』って、心理テストだかでやった記憶があるが、まさか本当に生まれ変わるとはなぁ。そう言えば俺はその質問に何と答えたんだ? ……覚えてないな。まあいいか。
まあその話は置いといて、俺は本当に何に生まれ変わったんだ?
俺の今いる場所、たぶん卵とかのなかだと思う。
そう判断した理由は、何か固いものに体が当たっている感覚があるからな。
胎盤のある生物じゃあないだろうよ。
卵……、ふと思い付くのは鳥。後は……魚類とか爬虫類、……ああ、昆虫とかもそうか。
あと卵って言ったら何だろうか?
ファンタジーで卵と言えば、やはりドラゴンだろうか。
……。
考えるだけ無駄だな。いくら考えたところで別に何が変わるわけでもないしな。
……どうしようか。
これでもファンタジー小説大好きな友人、フウタのおかげである程度異世界なんちゃら、転生なんたらとか言う物の知識をある程度有している。
だけども、どの小説にも書いてなかったんだよなぁ。……産まれるタイミング。
いや、分からないんだ。
卵生の生物ってどうやって自分が殻を破るタイミングを決めているんだ?
……たぶん本能的な何かだと思うが。
……、こうやって思考出来るってことは、少なくとも脳は出来てるって事だろう。
だが他は? もしかしたら他の内臓が不完全かもしれない、骨が出来上がっていないかもしれない。
困った、本当に困った。
うっかり殻を破って、即死は流石にないと思うが……。未熟児が立派に成長できるほど、自然は甘くない。
いや、ファンタジーではどうか知らないが、少なくとも前の世界、地球の自然は厳しかった。
かといって殻から出なければ死ぬだろう、餓死か窒息かは知らんが。
……。
…………。
………………。
むぅ。
めんどくさい。
出よう。
うじうじ考えるのは性に合わない。俺はいつだって即断即決。思うままに生きてきた。
別に新たに生まれ変わったとしても、生き方を変える必要はないだろう。
後悔するぐらいなら行動して後悔するさ。
そうと決まればいざ、新な世界へ!
はい、未熟児でした。
いや、殻は破れたんだ。結構あっさり。
外に頭だけ出して感じたのは湿った空気、次いで薄暗い洞穴のような空間が視界に広がった。
しかし薄暗い視界はしだいにハッキリとし始め、数十秒程度で周囲を問題なく把握できる視野が確保された。
そして首を動かし、自分の身辺を見た。
びっしりと生えた青みがかった茶色の鱗、長い胴体、胴体と比べて頼りないほど短く小さな四肢、四肢の先に付いた黒い鉤爪、胴体から生える長い尾。
それらは透明な粘液が付着しており、恐らくそれを見た人の殆どが顔をしかめるような気持ち悪さがそこにはあった。
うぁ……蜥蜴、か? もしかしたらカメレオン? ……それとも全く別の生物だろうか?
兎に角、俺はは爬虫類の様な生物に転生したらしい。とりあえず爬虫類(仮)と呼ぶことにしよう。
まあ、それはいいさ。別に朝突然目覚めたら爬虫類になっていました! って物語にでもなっているような展開と言う訳じゃない。事前に説明があったのだ、転生してもらいますよと。
それよりも問題なのは大きさだ。体の大きさ、身長、体長、まあ呼び方はなんでもいい。とにかく体が小さいのだ。
むぅ? 比較対照も無いのに何故未熟児って判断できたか不思議か?
―――いや、あるんだよな~比較対照。
俺の先程まで入っていた卵の殻、これが俺の未熟児たる理由を物語っている。
明らかに生まれてきた俺の大きさと合っていないんだ。
今俺は殻のちょうど真ん中辺りから頭を出しているが、それでもほぼ直立の様な、蜥蜴っぽい爬虫類にはかなりキツイ体勢を取っている状態だ。
例えるなら、直立で有名なミーアキャットの立っている姿を蜥蜴の様な体つきの生物に置き換えてえもらえば、どれだけ無理な体勢なのか伝わるだろうか?
そしてその様な体勢を取ってなお、殻の全体の半分しか届かない事実。
もう、これは絶対早まっただろう。絶対まだ成長の余地あっただろう。
……むぅ、行き先が不安だ。
こんなに不安なのは、キョウカにどこぞの紛争地帯にラチられて、言葉の通じない怖そうな方々と数ヵ月、
共同生活を強いられたとき以来だ。
愛する弟と妹よ。兄ちゃん、爬虫類(仮)の未熟児として生まれました。
二人はちゃんとした新生児として生まれてくることを願っています。
……今日のところは寝るかぁ。