黄の章 第1話 憧れの世界
約2カ月ぶりの投稿、大変お待たせいたしました。
黄の章 第1話 憧れの世界
大人になると社会の歯車になるのだと高校の頃担任の先生に言われた。その言葉は妙に印象に残っており専門学校を卒業し、とある会社に就職してから頻繁にその言葉が脳裏をよぎった。
だが俺は、鎧塚風太郎は二十三歳にして社会の歯車から、いや地球と言う星そのものから外れた。
きっかけとなったのは中学時代からの親友、倉井天月の家で恒例の食事会(飲み会とも言う)に参加した時だった。
独特ながらも気が知れた、いつも通りのメンツで一晩ご機嫌に騒いで酔いつぶれ、起きた時には見知らぬ天井を見ていた。……何を言ってるか俺自身も分からねぇが、細かい事はどうでもいいんだ。アニメでもゲームでもラノベでだって異世界ものの導入なんて突拍子が無いのが普通だからな!
で、簡単にその後の展開をまとめると俺、そして俺の友人とその友人みたいな奴等。合計十人の男女を変な異空間的な場所に連れて来たのは二柱の女神らしかった。
少し自分に自信がなさそうな金髪の少女、天使の様な見た目をした女神の名前は「ユグドラシル」。活発な小悪魔系の黒髪少女は「ヘルヘイム」と名乗った。
どちらも北欧神話系の名前だな。この分だと「アースガルズ」「ヨトゥンヘイム」「ミズガルズ」とかも居そうだな!
で、その女神達が言うには「天使」と言う存在に騙されてこんな辺鄙な場所から出られないから、俺達の様な人間を「召喚」して助けてくれる様に頼んでいるそうだ。
キタ―――! と思ったね。自分で言うのも可笑しいかも知れないが「異世界」と言う存在への憧れなら世界の誰にも負けない自信がある。異世界モノのコンテンツは大好物だし、それさえあれば他の娯楽など要らないと思える程だ。暇さえあれば「検索 異世界への生き方」なんて調べたりもした。そうして調べた都市伝説の様な話をファイルにまとめる事もしたなぁ。
そんな俺がこんな機会を逃す? ありえないね! 答えは勿論即答の「yes」だった。
俺のもう一人の親友である服部刃―――あだ名はジン。奴も俺と|同士(異世界好き)だったので直ぐに了承の意思を見せた。まあ、アイツは俺と違って家庭の環境とか性癖と言う特殊な事情もあるから全く同じ意見と言う訳では無いだろうけどな。ま、事情は人それぞれだろうよ。
そして意外にも早く異世界行きの決断をしたのは、高校時代からの友人で大企業のお嬢様である白石レイアだった。海外移住等とは比べものにならない程悩んだに違いないのに、心中に渦巻いていただろう苦悩や葛藤、ある意味身勝手で一方的な女神達に対する少なくないだろう負の感情。それらを一切合切蓋をして、眉一つ動かさないその姿、その姿勢だけでどんな鈍感な人間も彼女の非凡さを知る事が出来るだろう。
まあ彼女は昔から弱者を見過ごせない正義感の持ち主。高貴なる者の義務を体現したような傑物なのは長い付き合いで分かり切っていたので驚きはしなかった。寧ろ、彼女なら幼い少女の姿で懇願する存在を見過ごす事はありえないと率先して賛成する事は安易に予想出来ていたな。
天月辺りは特に深く考えずに了承した様子だ。まあ、アイツの事だから俺や刃が積極的に賛同しているからそれを尊重してとか、どうせ今ここに居る自分の家族や友人以外に地球に未練はないとか、まだ目にした事の無い美味しそうな食材がありそうだとかそんな理由で了承したんだろう。
そこに女神に対する憐憫や同情が一切感じられないのは、きっと女神に対する警戒心の表れかもな。
後はまあ、戦い狂いの女傭兵紅流狂歌。天月の弟、太陽。天月の妹、七星。その七星の親友、十羽野藍。ちょぴりマッドな発明家、霧崎原桐香。メイド・オブ・メイド、清井心。 その全員が短い話し合いの結果、異世界行きを承諾した。まあ、それ以外に選択肢は無かったとも言えるけどな。だって二柱の話だと俺達が元の世界に戻る事は出来ないらしいから。
さて、そこまでは俺の長年かけて作り上げた「もしも異世界に転生したら」マニュアルの中で何度も想定した内容だった。
俺の希望としてはこの後女神達に「チート」級の特殊能力を貰い、生まれ変わるなら―――例えば中世ヨーロッパ風の異世界ならある程度位の高い貴族なんかがいいな~。そんな俺の妄想は女神達の説明で砕け散った。
なんと俺達が異世界に行くにあたって人間に生まれ変わる事はほぼ不可能なのだそうだ。俺達がこれから行く世界に生息する生物の中からランダムなモノに生まれるとの事。そしてそれ以降は特に女神からの援助はなし。つまり自力で! 更には運任せで生きていけって事か? 何の特殊能力も持たず、常識からして違いそうな異郷の地で!?
ば、馬鹿な! ガチャ要素だと! と俺は愕然と頭を抱えた。残念な事に、非常に残念な事だが俺には「運」が絡む要素にはほとほと弱い。どれほど弱いかと言うと、とあるオンラインゲーム内にある一回百円のガチャで千分の一確率で排出するアイテムを手に入れる為に、十万円も注ぎ込み漸く手に入れたと言った、そんな|逸話(武勇伝)を複数個も所持している程だ。
だがしかーし! それはそれで面白いと言う、そうでなくて何がゲーマーだ。先が見えないと言うのは言い変えれば新しいゲームを始めようとしているかのようなわくわく感があるとも言える。気持ちの切り替えの速さもゲーマーの特性だ。
新しい世界への期待はこれ以上無い程高まっていた。人生を一から始められる経験なんて早々出来る事ではないからなぁ!
神を助けると言う大きな目標があるのも気に入った。
女神をとっとと助け、チート無しでも長年貯めに貯めた知識で無双して俺だけのハーレムを作ってやるぜ!
俺の戦いは此処からだ!
ちょっぴり妄想が激しく、ちょっぴり|欲望(下半身)に忠実で、とっても異世界を愛する男。
どこか残念な彼の冒険は、此処から始まります。




