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LEGEND COLLAR~色彩の英雄~  作者: 水晶 蜻蛉
青の章 蒼鱗の蜥蜴人 編
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青の章 第66話 皮

作業回です

青の章 第66話 皮

 

 「まだー?」

 「もう少し待ってくれ」

 

 かれこれ数十分、戦馬の皮の剥ぎ取りを行っている。内臓は既に取り出し済み、血抜きも終わっている。

 解体作業は残す所、皮の処理だけなのだが、これが意外に難しい。

せっかく質のいい皮が目の前にあるのだから、それを手に入れたいと思い始めた解体作業。俺はこう言った大型動物の解体経験は、経験が無いどころか、結構頻繁に店で鹿の解体等を行っていた。

地元に居た腕のいい猟師。彼や彼の息子が山で狩猟して来た鹿や猪を解体する代わり、肉の一部を譲ってもらう契約で何度も何度も解体作業をしたものだ。こう言った経験は日本では一部の田舎で無ければ出来ないものであろう。


だが包丁も何もない今現在、俺は包丁代わりに爪を使って皮をはぎ取っている。その為に通常よりも多く時間を使っている原因だろう。後は肉を吊るさずに解体している事や俺の腕が人間だった頃より短い事等、色々と時間が掛かっている要素は幾らでも挙げるが、それらはちゃんとした包丁さえ有れば補える程度の差でしかない。

ああ、せめてナイフでもあれば違うのだがなぁ。|俺(蜥蜴人)の爪は微妙に歪曲している分力加減が難しい。

 既に三分の二程皮をはぎ取れているが、やはり切れ味は同等でも勝手の違いは大きい。大きな失敗をしないのはスキル【器用】の影響かも知れないな。

 

 「内臓とか先に食べるか?」

 「むぅ~まってる……」

 

 涎で水たまりが出来ているのだが。そんな状態で放置して置くのは罪悪感がすごい事になるのだが。

 しかし急いで失敗するわけにもいかず、およそ十数分後にやっと戦馬の解体が終わった。脚が6本も有る生物の解体などしたことが無かったが、大体は俺の解体知識の通用したので助かった。

 

 「じゃあ、食べるか」

 「たべる」

 

 かなり赤黒い戦馬の脚を一本丸々持って、勢いよく齧り付く。

 脂っぽさはあまりなく、少し硬いが十分美味しい。だが、馬肉として見るなら地球の馬の方が美味しいな。

 スフレは早くも脚一本骨ごと食べ終わると、今度は内臓を食べ始める。

 

 「美味いか?」

 「んーふつう」

 「肉と内臓、どっちが好きだ?」

 「なーいぞう、好き」

 

 どうやらスフレは脚肉よりも内臓の方が好きらしい。見た目は子供だが、舌はおっさんか?

 結局スフレは内臓全てと、脚5本を完食した。残りは以外俺の腹の中だ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 『【ランクアップ】によりスキル【馬脚】を獲得しました』

馬脚

 脚力を強化し、持久力が上がる。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 ああ、足が速くなるスキルを手に入れた様だな。……食後の満腹感からスキルの検証をしようと言う気にはなれない。出来る事ならこのまま大地に横になってしまいたいくらいだ。……少し気を抜き過ぎだろうかな。

 食事はこれでいいとして、まだ日が出ている内に出来るだけ安全に夜を過ごせる場所を探したいな。まあ最悪木の上でも寝ればいい。どうせなら戦馬の皮の処理を夜までにある程度終わらせてもいいな。

 今後の予定をぼんやりと考えているとスフレが俺の顔を覗き込んで来た。

 

 「アマツ、おこってる?」

 「? むぅ? 俺が何を起こるんだ」

 「スフレ、うま、しっぱいした」

 

 ああ、どうやらスフレは先ほどの戦馬を逃がした失敗を気に病んでいる様だ。まあ、スフレは精神的にまだ子供の様だし、俺に怒られないか心配しているのだろう。

 

 「別に俺は失敗程度で起こらないさ。失敗は成功の元なんて言葉じゃないが、誰でも失敗はするんだ。いちいち怒る様な事ではない。俺が怒るのは……そうだなぁ、悪意ある失敗や理不尽な行為とかだな」

 「?」

 「難しかったか。まあ、わざとじゃないなら怒らないって事だ。次、成功するように頑張ろうな」

 「つぎ」

 「さあ、腹も膨れたし今日の寝床を探そう」

 

 これから暫く、俺達は巣に帰る事は無い。どうやらエルフの集落とやらはかなり遠くらしく、俺の足で数日歩き続ける必要が在るほど離れているらしい。ならばその日ごとに野宿の場所を探しながら、ゆっくり進むことにしたのだ。

 


 「今日は此処にしよう」

 まだ日は高いが、今日は初日の上やりたいことがあったので早めに寝床を決めた。まあ寝床と言っても丈夫そうで丁度いい木を見つけて、その木の上で夜を明かそうと言うだけなのだが。

 夜行性の肉食生物を警戒して木の上で寝ると言うだけ。単純な話だ。

 

 「アマツ、なに、してるの?」

 「ああ、ちょっと器を作っている」

 「うつわ、つくってる?」

 

 適当に拾ってきた大きな石を、鱗を楔の様に変形させて上から殴りつける事により真っ二つに割り、更にスプーンの頭状に変形させた鱗で中央をくり抜いていく。

 鱗が石より硬いので面白い様に石が削れていく。暫くして石の少し大きめのボウルの様な、しかしだいぶ武骨な器が出来上がった。

 

 ボウルの片方に残しておいた馬の頭をかち割り、脳漿のうしょうを器の中に取り出す。

 脳漿などわざわざどうするのかと言えば、ズバリ皮のなめしに使うのだ。実は俺は皮をなめした経験もある。猟師のおじさんに、皮のなめし方を数種類教わったのだ。


 「なめし」とは「鞣す」つまり動物の皮膚である「皮」を柔らかくし「革」にする技術の事だ。


 自然物でなめしを行うとき、本来なら樹皮を使う樹皮なめし手法が望ましいのだが、なめしに適切な樹皮がこの世界でどの木からとれるのか分からないので、今回は脳漿を使う。因みになめしに適した樹皮が採取できる木は日本だとモミザの木が代表的だ。

 

 脳漿を使うなめしは雑菌が繁殖しやすい等の問題がありあまりお勧めは出来ないが、無い物ねだりは出来ないので仕方がない。これが脳漿なめしがあまり知られていない理由だろう。

 日本では塩、水、菜種油を使う手法が広く知られているもではないだろうか?

 

 出来ない方法についてこれ以上考えても仕方がない。今俺が皮を革にする手段は脳漿なめしだけなのだ。

 まず、最初の工程として、皮の内側に付いた脂や肉を綺麗にこそぎ取る。これは俺の掌の鱗を細かなやすりの様に変形させて綺麗にこそげ取ったと言うか削り取った。

 次に水で皮を洗うのだが、スキル【水泡流咆哮バブルブレス】で作り出した水泡で脂でべとべとになった掌と一緒に洗う。

 

 因みに【水泡流咆哮バブルブレス】の水泡は俺の体内の水分を使っているのではなく、例によって俺のエネルギーを水に変換して出しているのだそうだ。つまりこのスキルを多用しても疲れはするが脱水症状にはなりえないと言う事だ。まあ、母に教わった事なのだが。

原理は不明だが、純粋な水を出しているので寧ろその辺の川や池の水よりも綺麗な水を生み出せる―――そうだ。なので俺は気にせず飲料水や手や身体を洗う水として使っている。先ほどの返り血も、【水泡流咆哮バブルブレス】で洗い流したのだ。どうして純粋な水が泡立っているのか? 等の疑問は考えない。頭が悪いから考えない。

 

 更に器にも泡水を入れて、脳漿と混ぜなめし液を作る。

 なめし液を戦馬の皮に手で丁寧に満遍なく塗り込んでいく。本当は皮自体を液に漬け込むのだが俺の教わったやり方だが、今回は塗り込むだけだ。たらいとかがあったなら漬け込むだけで良かったのだがな。


 小一時間放置した後、皮を洗ってなめし液を綺麗に洗い流す。

 そして木の枝に皮をひっかけて干す。この時皮がびしょびしょでも反対に乾ききっていても駄目だ。その中間、少し湿っている状態で干す必要が在る。

 その状態で干し、半乾きになった場所を引っ張り、ストレッチをして皮の繊維をある程度断ち切る。この時足で踏んでみたり、新聞紙の様にぐしゃぐしゃにしても効果的だ。皮と言うのはそう簡単に破れない、刃物でも使わない限りな。人間であれば皮を噛む・・事でもいいのだが、今の俺が皮を噛めば無数の穴が開くので出来ない。

 

 そして再びなめし液をつけて、ストレッチをするまでの工程を二~三回続ける事で質のいいなめし皮が出来上がる。

 出来た頃にはもう日が暮れており、予想以上に時間が掛かってしまっていた。

 

 スフレは最初の方は俺の作業を見ていたが、用済みになった戦馬の頭部を食った後木の上で眠ってしまった。

 俺も作業でかなりエネルギーを消費したので、スフレの隣まで行って眠る事にした。

 

 木の上で寝るのは初めてではないが、これが意外と眠れる。少なくとも岩の地面よりは寝心地が良かった。

 

 

 


脳漿なめしは作者が試しましたがカビが生えやすく一度も成功しませんでした。と言っても二回しか試して居ませんが。


因みに本来職人が行うなめしは一~二カ月掛かるそうです。天月が行っているなめしは品質度外視の、その場限りの急ごしらえのつもりで作っているので短時間で出来ます。その代り市場に出せば粗悪品以下の品質で使用できる寿命も大分短い物になっています。


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