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LEGEND COLLAR~色彩の英雄~  作者: 水晶 蜻蛉
青の章 蒼鱗の蜥蜴人 編
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青の章 第64話 虫の名は

青の章 第64話 虫の名は

 

 『随分遅かったな。私を待たせて睡眠とはいい度胸だ。全く持っていい度胸だ』

 「いや、すまない。ついつい友の姿に気が緩んでしまってな」

 

 正直進化した友の姿はこの世界に来て一番愛嬌のある見た目だったのだ。気が緩むのも無理はないと言い訳したい。だが俺は素直に頭を下げる。

 

 『? 蜘蛛が好きなのか?』

 「むぅ? いや、嫌いとは言わないが……」

 

 一部の人間が異常なまでに蜘蛛を嫌っている事は知っているが、俺に関しては別段どうとも思わない。人間時代の俺が家庭菜園を行っていた畑は、夏場になるとそれこそ十や二十では聞かない程そこら中に巣を張っていた。俺はそれを見ても「害虫対策に丁度いい」程度の認識でしかなかった。何度か大型の蜘蛛を食べた経験も合わせるなら好意的な印象すら抱いていると言っても良い。

 

 『では人間の子供が好きなのか?』

 「あー、まあ元人間としては人間の子供は安心出来るな。俺は元来、子供好きだし」

 『ああ、なるほど、なるほど。元同族の外見か。てっきり繁殖相手と見ているのかと思ったぞ』

 「俺は断じてロリコンじゃないからな!? ジンと一緒にするな! ……むぅ? 俺ってコイツと子供作れるのか? どう見ても生物として相当な違いがあるように見えるのだが?」

 

 生物は別に完全な同種でなくても子孫が残せることくらい知っている。まあ所謂品種改良に近い。

 例えばイノシシと豚は生物学上は違う生き物だが、掛け合わせるとイノブタと言う生物が生まれる。ライオンとトラを掛け合わせたら確かライガー? と言う生物が生まれるらしい。馬とロバなんて組み合わせも聞いた事がある。

 つまりある程度近い生物なら子供を作ることが可能、と言う話だ。だが、俺は生物学とやらは高校で習った以上の知識は殆ど持ち合わせていないが、蜥蜴と蜘蛛が子供を作ったなんて話は聞いたことが無い。

 

 『作れるだろう。同じ卵生の生物だ』

 

 まるで当然の事を告げる様な平坦な母の声に、逆に俺は困惑する。

 ……ええ、そんな大雑把な括りなのか? 卵生って……。鳥や魚も卵生だろうに。

 その後も少しばかり母と子供の作り方について語り合ったのだが(言葉にすると何やら危ない感じがするな……)、ここでは割愛する。機会があればまた語るだろう。語りたくはないが。

 

 『それにしてもまた一風変わった者が来たな』

 「友の事か?」

 

 現在下半身が蜘蛛で上半身が美幼女と言う、一風変わったと言う言葉で表せるのか疑問な姿に進化(羽化?)した友は、俺と手を繋いでいる。

 母に友を連れて来いと言われたが、言葉の通じない友について来て欲しいと伝える事が出来なかったので手を繋いでここまで来たのだ。

 当の友は水晶が珍しいのか、指を加えながら辺りをきょろきょろ見回している。この分だと手を離せばこの部屋を駆け回りかねないので手は繋いだままだ。

 

 『お前の友は、今蜘蛛人アラクネと言う種族だな。進化前は|彩芋虫(ルケ―)と言う種族、これもなかなか見る事の無い種族だな。この私でさえな』

 

 友が相当珍しい種族という事は分かった。蜘蛛人アラクネね。確かに進化前の芋虫状態の……彩芋虫(ルケ―)? が森やら洞窟やらにうじゃうじゃ居る様子はあまり想像したい物では無いから、良かったと言えば良かったのかもしれないが、友からすれば同じ種族が居ないと言うのは寂しいのかもしれない。群れる事の無い生物と思えば当たり前かもしれないが、子供っぽい仕草の友を見ていると、少しかわいそうに思えて来る。

 気が付けば俺は友の頭に手を置いていた。

 

 「?」

 

 友が指をくわえたまま俺の方を向く。不思議そうに首を傾げるその姿は人間の子供そのものだ。

 

 「あー、指を加えるのは行儀が悪いからやめなさい?」

 

 俺の言葉に更に首を傾げる友。やはり言葉は通じない。言語でのコミュニケーションが取りたいものだ。

 

 「うぅ? ん!」

 

 友が突然声を上げて、口から指を離して手を腰のあたりにピタリと付ける。気を付けの姿勢だ。

 急な友の挙動に口を半開きにしたまま一瞬呆けてしまう。

 

 「……どうした急に」

 『私が【念話】で今お前が言ったことを伝えたのだ。【念話】は言葉を理解していない者でも、概念の様な形でこちらの意図を伝える事は出来る。私はそれを利用して眷属に命令を出しているからな』

 

 むぅ、それはすごいな。実質大抵の生物にも意思疎通出来ると言う訳だ。便利だなぁ母のスキルは。俺のスキルは戦闘関係が多くを占めていると言うのに。

 俺ももう少し戦闘以外で使えるスキルが欲しい物だ。

 

 『アマツ、お前を鍛えるついでだ。そこの友とやらも少し言葉を離せる程度には勉強をさせてやろう。私直々にな』

 「おお、それはあり難いな。友とコミュニケーションが取れるならそれはいい事だ。嬉しい」

 『なに、ついでだ、ついで。それよりお前はその友とやらに名前を付けてはやらんのか? 人間などは群れの仲間に名前を付けるのだろう?』

 

 ああ、名前か。正直名前とは一生付いて回る物だから、俺が付けるのはどうかと思っていたのだが……。確かに友と呼び続けるのも味気ない。

 だが俺、ネーミングセンスとか殆ど無いぞ。まだ風太郎とかの方が有る。

 

 『これから群れとして行動するなら、やはり呼び名はあった方がいいだろうな。私と違って群れを成す必要は弱きお前達にはあるのだから』

 

 母はだからお前が名前を付けてやれと言って友と向き合ってしまった。どうやら俺が友の名前を付ける事は母の中で決定事項の様だった。

 ……仕方がない。無い頭を振り絞って友の名前を考えるとしよう。

 えーっと、蜘蛛だから蜘蛛子とかは……無いな。どうせだったら女の子らしいお洒落な名前を付けてやりたいものだが……。

 蜘蛛は英語でスパイダーだよな? スパイダー、スパイダー……スパイダーガール、スパイダーレディ、スパイダー……フレンド? スパイダー(蜘蛛の)フレンド(友)……略してスフレなんてどうだろう? スフレケーキをイメージした食い物の名前。レイア辺りが聞いたら呆れられそうだが……響きはいいよな?

 

 「じゃあ、友よお前の名前はスフレだ。」

 『スフレ……ふむ、なかなかいい響きだ。もう少し力強い名前でも良いと思うが、まあいい。ではスフレは暫く私が面倒を見よう。お前は身体を動かす修行だ』

 

 ああ、やっぱりそうか。友……スフレを母が教えるという事は、俺は母の眷属と修行という事なのだろう。

 正直少しゆっくり休憩する時間が欲しいが……贅沢は言っていられないか。まあ、蟹も蠍も美味いから本当に贅沢なのだがな。

 

 『ああ、そうだアマツよ、お前がもう一度進化すれば取りあえず肉体的な修行は終わりだ。その後少しだけ知識を詰めれば一先ず外に出ても早々死ぬことは無いだろう域に達する。頑張って励め』

 「むぅ。そこまで行けば外に出てもいいのか?」

 『ああ、許可しよう。私もそろそろ面倒く……面倒くさくなってきたからな』

 

 だから本心を繕えよ。と言うか本来は褒美って話だったよな。なんで俺は母に外に出る許可を伺っているのだろう?

 いろいろと教わった恩があるので、暇つぶしに付き合う程度の事を今更気にするべきではないのだろうがな。

 

 「じゃあ気合い入れて頑張るか。外に出て未知なる食い物……女神を助けられるからな」

 『お前も本心隠せていないぞ』

 

 うるさい。繕っている分母よりましだろうに。

 

 『それでは修行のラストスパート、始めようか』

 「むぅ!」

 「むぅ~!」

 

 拳を握る俺の真似をして、スフレが拳を握る。

 入れた気合いが霧散したが、仕方ない。俺が格好を付けるのは無理なのだろう。


 蜘蛛少女の名前はあっさり決まりましたね。お菓子由来の名前を付けると言うのはどちらかと言えばペット等に対する名付けに近いかと思いましたが、筆者も天月同様ネーミングセンスは絶望的です。どうかご容赦を。

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