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LEGEND COLLAR~色彩の英雄~  作者: 水晶 蜻蛉
青の章 蒼鱗の蜥蜴人 編
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青の章 第55話 魔蠍

RPGゲーム等ではキャラクターの育成や装備の整え方に結構性格が出ますよね。筋力や武器の性能を上げたり、他の人とは違う奇抜な能力攻勢にしたりと。筆者は体力や防御力、防具を優先してしまいますね。回復アイテムや復活アイテムも持てる限り集めますし、根が臆病なんでしょうね。益体も無い雑談でした。

青の章 第55話 魔蠍

 

 「【尾の瞬撃(ライト・テイル)】!」

 

 最早スキルの名前を叫ぶ事にも慣れた。

 あいさつ代わりに放った【尾の瞬撃(ライト・テイル)】の衝撃は魔蠍の団扇の様な鋏に直撃し……予想はしていたが魔蠍には傷一つ付いていない。

 魔蠍は俺の攻撃など無かったとでも言う様に、微動だにしていない。

 

 しかし次の瞬間、俺の予想を上回る速度で行動に出た。肉食昆虫らしくその動きは鋭い。大きいからと言って鈍くなると言う訳ではないのだな。


 魔蠍はその団扇を思わせる鋏で俺を直接殴ってくる。俺は反射的にその攻撃を横に跳躍して躱す。

 魔蠍は俺よりも体高が低い為、この様な攻撃が可能になるのだがこれは大きな失敗だった。

 空中に居る俺に向かって、魔蠍の尻尾が迫る。蠍は小さい物ほど強力な毒を持っていると言うのが、地球での俺の知識ではあったが、それが異世界ここでも同党とは思えない。最悪刺されたら即死と考えた方がいいだろう。

 

 「っく【尾の転撃(ロール・テイル)】!」

 

 俺は空中で身体を捻りながら、魔蠍の尻尾の側面に俺の尻尾をぶつけて攻撃の軌道を反らす。

 軌道の反れた魔蠍の尻尾は明後日の方向へ向かう。俺はそのまま一度魔蠍の背中を踏みつけながら更に跳躍して距離を取るが、身体に勢いが付き過ぎていた為地面を無様に転がる様な着地となってしまう。

 

 『ほう、器用なことをする。それに尻尾を避けたのは正解だ。魔蠍の尻尾には強力な毒がある。まあ、獲物を殺す毒ではなく、自由を奪う毒だがな』

 

 母の言葉が頭に響いてくる。やっぱり毒あるのかよ。しかも麻痺しんけい毒かよ。

 

 魔蠍はやはり何事も無かったかのように六本の脚をせわしなく動かし俺に向き直る。俺の攻撃が当たった尻尾は甲殻が多少歪んでいるのが見えるが、ダメージは無いのだろう。

 母程でないにしろ、堅い相手は厄介だな。だが、ならば俺も同じ厄介な存在になればいい。

 

 「【硬質鱗キチンスケイル】、からの【尾の瞬撃(ライト・テイル)】!」

 

 俺の全身を新たな鱗が覆い、二重になった鱗の層が俺の身体を更に頑丈にしてくれる。

 そして全身を覆った鱗は、勿論尻尾も例外ではない。

 二重に鱗が覆った尻尾は更に強度を増し堅くなる。堅くなったという事は、更に威力が上がったという事。更には増えた鱗の分重量も多少は増している。

 再び放った【尾の瞬撃(ライト・テイル)】は魔蠍の鋏に衝突し、魔蠍はその衝撃に耐えられなかったのか数歩後退る。鋏には小さいながらも確かに傷が出来ていた。

 

 「……しかし頑丈だな。それに蟹もそうだが脚が多い分体制が安定している。体制を崩して隙を狙うのは難しいな。だが、手応えからして思ったよりも目方は無い様だな」

 

 確実にダメージを与えるなら俺の最も強力なスキル【尾の重撃(へヴィー・テイル)】を使うしか無いが、アレは攻撃後の隙が大きい。

 もし外せば俺が危険になる。しかも魔蠍の動きはかなり素早い。

 魔蠍の動きに比べれば水晶蟹や晶甲羅蟹など鈍足と言ってもいいだろう。

 

 俺が攻めあぐねていると、今度は魔蠍から仕掛けて来た。自分の前面をその大きな鋏で覆ったまま、魔蠍は俺に向かって直進――いや突進をしてくる。

 流石にそんな直線的な攻撃を受ける訳にはいかないので、地面を転がって回避する。

 

 再び俺に向き直った魔蠍を見て俺は嫌な物を目撃してしまう。

 

 「傷が無くなっているのか?」

 

 確かに付けた筈の傷が無くなっているのだ。尻尾の甲殻の歪みも、鋏の傷も元通りだ。

 だが驚くほどの事ではない。俺もつい最近同じような現象を自身の身で経験しているのだから。

 

 「こいつも【再生】持ちか……」

 『正確には【高速再生】だな。【再生】より多くのエネルギーを消費するが、傷を癒す速度は段違いだ』

 

 横合いから再び母の解説が入る。その声はどこかうきうきした声音だったが、分析に必死な俺は嬉しそうな母の様子は無視する。

 

 「より厄介だな……」

 『更に魔蠍は『外骨格』と『虫甲殻』、更には『盾鋏』のスキルを持っている。全て自身の防御力を上げるスキルだからな。なかなかに厄介だぞ』

 

 スキルの名前だけ言われてもピンとは来ない。つまりとっても頑丈な上に、傷は直ぐに癒えると言う所だろう。

 厄介どころではないな。

 

 再び魔蠍は俺に接近し、毒の尻尾を突き出して来る。

 そこに【尾の瞬撃(ライト・テイル)】を使い魔蠍の尻尾を反らす事に成功するが、今度は鋏に脚を殴られ体制を崩してしまう。

 不味いと思った瞬間には魔蠍は既に尻尾を俺に突き出していた。俺は腹部に迫る尻尾を両手で掴み、間一髪で毒の餌食を免れる。やはり魔蠍の身体は軽い様で勢いさえ殺せばかなりの速度で向かって来る尻尾を掴んだところで俺の小さな体躯が吹き飛ばされる様なことは無かった。

 しかし、両手が塞がれた俺に対し魔蠍は鋏で好き放題殴りつける。

 鱗が二重になっているお陰で我慢できない程痛みは無いが、それでも少しずつ【硬質鱗キチンスケイル】がボロボロと剥がれていく。

 

 このままではじり貧で倒されるならと、俺は魔蠍の尻尾に食いつく。

 咬筋力を上昇させる【咢の一撃(ヂョー・バイト)】を使って噛む力を強化しながら噛み続ける。その間も俺の身体は打たれ続け、鱗は剥がれ続ける。

 だが構わずに顎に力を入れる。

 

 ほどなくして魔蠍の尻尾にヒビが入り始め、そこから直ぐに魔蠍の尻尾は千切れた。

 俺の身体も無事ではないが、重症と言う訳でもない。

 十数か所出血している程度だ。

 

 俺は一旦距離をとり、千切った尻尾を投げ捨てる。味が気にならないでもないが、流石に今は毒が怖いので食わない。

 

 魔蠍は尻尾が千切れた事を気にした様子も無く、俺に向かってくる。

 俺も魔蠍へ向かって走り出す。

 

―――――


 「参った。俺の負けだ」

 

 恐らく数十分近く経った頃、俺は両手を上げて降参の意を示していた。

 

 身体は血まみれだが、まだ戦えない事も無い。

 しかし、流石の俺でも勝機が皆無の戦いをこれ以上続ける気にもなれなかったのだ。

 

 戦いの序盤はまだ勝機を見いだせていた。尻尾を千切る事にも成功したし、そこまで不利な戦いとは思わなかった。あくまで母との戦いに比べればだが。

 

 だが数分で千切れた尻尾が生え変わった辺りで、流れが変わった。何度尻尾を千切っても、脚を折っても、直ぐに元通りに回復する魔蠍。

 

 恐らく弱点は頭部ではないかと予想したのだが、魔蠍は頑なに鋏で頭部を守り、鋏を退けても尻尾の攻撃が来る。

 二本の鋏と尻尾を、俺の一本の尻尾で何とか死なない程度に捌く事は出来ても、攻撃に転じる事は出来なかった。因みに何度か爪での攻撃も試みたが鋏に当たった瞬間に右手の爪が全て砕け落ちたので早々に尻尾のみの戦い方に切り替えた。

 

 そのまま逆転することなく無為な時間だけが過ぎ、遂には今の俺が魔蠍に勝つのは無理だと判断したのだ。

 これでも数十分良く頑張った方だと思う。だが結局は倒しきる事は出来なかった。

 

 それに、恐らく魔蠍は本気を出していない様な気配を感じた。多分まだ幾らか手札を残している筈だ。

 母が本気を出して俺を殺さない様に魔蠍をコントロールしてくれていたのだろう。

 

 そんな状況でいつまでも粘ってもしょうがないので、俺は大人しく負けを認めたのだ。

 

 負けを認めて、前に進む為に。強くなって、魔蠍を食う為に。

 

 俺の降伏を受け、母は満足げに頷いた後、魔蠍を一口で食った。お前が食うんかい。

 


補足説明

 水晶蟹等の戦闘シーンでは前腕の事を爪、魔蠍のシーンでは鋏と描写しておりますが誤字ではありません。正確には節足動物の該当部位は「鋏状の関節肢」若しくは「鉗脚かんきゃく」と言う名称らしいのですが天月には勿論そんな専門知識は持ち合わせておりません。

 ですが天月は前世で通っていたスーパーや魚屋で「蟹の爪」と言うパッケージを度々目にしているので蟹に関しては爪若しくは鋏、それ以外の節足動物(特に昆虫)に関しては鋏と呼称する事が多いです。

 例えば、クワガタの顎も天月は鋏と呼びます。

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