青の章 第51話 ご褒美?
前回までのあらすじ
天月は母親を名乗る白く巨大な蜥蜴に酷似した生物と戦闘になり、苦戦の末一矢報いる事で命を繋いだ。
だが手足や尻尾など身体の一部を失う重症を負ってしまった。しかし母親の施しにより【再生】と言う名の能力を獲得した。
青の章 第51話 ご褒美?
『そうか』
俺の前世のおおまかな話、女神からの頼み事、そして俺が蜥蜴として生まれてから今までの事を事細かに説明した結果、白蜥蜴の口から出てきた言葉は意外に淡白な言葉だった。
どうもこんにちは。
左腕と尻尾を失って現在療養中の元人間、現在は蜥蜴人という存在のアマツキだ。
スキル【再生】を獲得した俺は、白蜥蜴と共に白蜥蜴の部屋で軽く睡眠を取った後、先に述べた説明を白蜥蜴にしたのだが、その反応が思いのほか薄くて驚いた。
俺の感性では、相手が別の世界から生まれ変わっただの、神様に合っただの、そんな事を話す奴に合ったら精神科か頭の病院を進める。間違いなくな。
「むぅ……、にわかには信じられない話だと思ったか?」
『ん? いや、別に信じられん程の話ではないと思うが?』
「そうか? 反応が薄いから、てっきり疑っている……もしくは呆れられているとかだと思ったのだが」
『……ふむ、まあ普通なら別の世界から生まれ変わったなどと言う話を信じるのは難しいだろう。しかし、私としてはお前の異常性を裏付けるに十分、そう十分な話だった。それに……』
言葉を区切った白蜥蜴は、何かを躊躇う様に俺から目をそらす。何故か巨大な尻尾をプラプラと揺らしている。
数秒の静寂の後に、ドスンと尻尾を地面に倒した白蜥蜴は目をそらしたまま俺に語り掛ける。
『生まれ変わり……『転生』とやらをした人間を、私は知っている』
一瞬、白蜥蜴が何を言っているのか分からなかった。
しかし、白蜥蜴の言葉を理解した時、女神ヘルヘイムとユグドラシル――ヘルちゃんとユグちゃんの言葉を思い出す。
たしか―――俺達の前に百人程呼び出した人間が居た、と。
俺たちが人間以外の生物に生まれ変わったのは例外らしい。ならば必然的に俺達の前の百人は人間のまま転生……いやこの場合はそのままこの世界に呼び出されたのだろう。
白蜥蜴はその中の誰かと面識があるという事か。
この世界の広さ等知らないが、それはどれだけ低い確率なのだろう。
まあ、なんにせよ俺にとってはあり難い。その名も知らぬ誰かのお陰で白蜥蜴に俺の言葉を信じてもらえ、結果的に無駄な時間を浪費しなくて良くなったのだからな。
「因みに、その人間はどうしたんだ?」
『食った』
「……むぅ?」
『いや、その人間は私に言葉が通じると分かると、ひどく怯えた様子で私に保護を求めて来たのだ。勿論何の利益にもならん弱き者を守ってやる気にならなかった私は、せめて永遠に怯えなくて済む様に食ってやったのだ。『転生』や『地球』とやらの話はその時少しばかり聞いていたのだ。まあ、お前の話を聞くまで忘れていたのだがな。うむ、忘れていた』
聞かなきゃ良かった。
確かに突然こんな巨大な蜥蜴に出くわしたら怯えるだろうし、言葉が通じると分かれば交渉の余地があると思っても無理はない。
まあ、結果は哀れな物になってしまった訳だが。
別に同情はしないがな。食われた奴の顔も知らない訳だし、弱肉強食は自然の摂理だからな。
「そうか。話は変わるが、俺の―――俺達の目的は二人の女神が封印から助けてやる事なのだ。二人の女神の封印されている様な場所とかに心当たりは無いだろうか?」
『ふぅむ、私は封印などと言う術には明るくない。私の扱う魔法は水晶を操る物が大半だからな。それに、封印の手段は魔法以外にも多く存在する。私の知識で言える事は、封印には『魔力を多く含む物』である必要がある。という事だな。昔その様な話を聞いただけだが』
「物に封印されているのか……。その話を聞いたって、相手は? やはり蜥蜴なのか?」
『洞窟の外にある森の中に住んでいる森精霊だ。ああ、封印や女神について森精霊共に聞くといいかもな』
……これはかなり有益な情報だな。
エルフか……、確か俺の友人である風太郎ことフウタが大好きな異世界の種族だったな。森で弓を扱って狩りを行う―――とても長寿な生き物だとかなんとか。
果たして地球の物語に沿った様な存在なのだろうか?
友好的な種族である事を祈るしかないが……。
しかし、白蜥蜴の話から一先ずの目標が出来た。
『この世界で生き残る為に力を付ける』
『家族や友人達との再会』
そして『女神達を助ける』為に『エルフからの情報収集』だ。
やはり白蜥蜴の元に来たのは正解だった。
腕や尻尾を失ったが、それに釣り合う情報だろう。
寧ろ【再生】を初めとするスキルや経験値とやらを獲得出来た事を考えると大きな利益となった。
白蜥蜴には今となっては感謝しかない。まあズタボロにされたのでその感謝が口に出る事は無いけどな。
『ああ、ところでお前、私との約束を覚えているか?』
「むぅ? ああ、白蜥蜴さんに血を流させたら俺の命を助けてくれると言うやつか?」
結果的に俺の命を繋いだ、白蜥蜴の提案。強者故の余裕から来たのだろうその提案を思い出す。戦いの終盤は提案の条件を満たすと言うより、寧ろ一矢報いたいと言う思いが強くなっていた。
自分では冷静に行動出来ていたつもりだったが、少しばかり頭に血が昇っていたのだろう。
『それもあるが、言っただろう褒美をやると』
「……言っていたな。しかし、見逃してもらった上にいろいろ情報を貰った。これ以上借りを作りたくは無いのだが……」
『ふん、借りなどと思わなくてよい。私が約束した事なのだ。お前はあり難く褒美を貰えばよいのだ』
「むぅ、そうか? そこまで言うなら……その褒美とやらを受けよう」
俺の言葉を聞いた白蜥蜴は牙を剥き出しにして、恐らく笑った。
相も変わらず怖い表情だが、俺は別の嫌な予感を感じる。
俺はこれに近い表情を何度も見た事がある様な……?
『そうかそうか。受けるか。それは良かった』
「む、むぅ」
『それで、褒美と言うのはな、お前を直々に私が鍛えてやろうという事だ』
鍛える? 意外な提案だな?
俺はてっきりもっと直接な、それこそこの部屋の壁際に飾られている水晶の中から一つ貰えるとか、もしくは新たな情報の様な物を貰えると考えていたのだが。
まあ、鍛えてくれるという提案はあり難い。
力はどれほどあっても邪魔にはならないからな。
『お前は私に傷を付けた。それ自体は大したものだ。』
「むぅ? おう、ありがとう?」
『お前の機転と覚悟は大したものだが、それは私の油断があったからの話だ。実際外に生息している生物には私を傷つけられる力を持っている者等いくらでもいるし、私よりも堅い表皮を持つ生物も多い。寧ろ私は同族に比べ身体の強度は低い。このままお前の腕や尻尾が治ったとしても、外に出たら一年と生きていられるか怪しい』
「む、むぅ?」
『故にお前が多少長生き出来るようにお前の身体と頭を鍛えてやろうと思ってな』
おお、身体だけでなく頭も?
つまりこの世界についての知識を与えてくれるという事か?
それはあり難い。良い事尽くめだな。
『だからお前には暫くここで私のおもち――、いや、暇つぶ――、……遊び相手に任命してやろう』
「――今、玩具とか暇つぶしとか言いかけて、結局遊び相手に落ち着いたよな? どれも変わらんよな?」
『今更嫌とは言うまい? 実際お前にも利はあるしな』
ああ、思い出した。
あの笑い方、何処かで何度も見たことがあると思っていたが、アレは俺で遊ぼうとする赤い髪の馬鹿が悪巧みをしている時の笑顔だ。
あの、暴力の化身の様な女が機嫌のいい時の表情―――ああ、くそ。あの表情には嫌な思い出しかないのだが。
つまり、これから俺に碌でもない事が起きるという事だな。
報告が遅れましたが4000PV達成いたしました。稚拙な文では御座いますが、少しでも皆様の生活を彩れます様今後も精進してまいります。




