青の章 第49話 癒し
青の章 第49話 癒し
『……随分とあっさり認めたな。お前は自身の能力を晒す危険を知らんのか?』
白蜥蜴の呆れた声と共に俺の身体に血生臭い風が掛かる。恐らくはため息だろう。まあ、自分の手の内をペラペラ話す奴に呆れると言うならその気持ちは大いに理解できる。
「勿論知ってるさ。自分の手の内を晒しては勝負にすらならない事くらいな。……しかし、今俺の命を握っている白蜥蜴さんに嘘を付く危険の方が、俺にとってデメリットが大きい。それに、先ほどの戦いで自分の手の内云々以前の差がある事も分かってしまっているからな」
俺の身体を覆っている軟毛蜥蜴の一匹を掴んでしげしげと観察しながら答える。
むぅ、意外に小さいな。コイツ等は毛……じゃなくて触角が長いせいで大きく見えるが実際手に持ってみると掌サイズ、大体三十cm程しかない。因みに触角を含めると五十cm弱に見える。
『そうか、少なくとも私に隠す気は無いと。ならば好都合、お前のスキルを全て教えろ』
? 白蜥蜴の発言に疑問を覚える。別に先ほど言った様に、自身の手札を知られようが関係ない程の差があるのだから、別に俺自身のスキルを晒す事に抵抗は無い。しかし、今聞く理由が分からない。
俺の怪我を治してから聞くのでは駄目なのだろうか? 流石に血を失い過ぎて少し意識がボンヤリとしてきたのだが……。
まあ、白蜥蜴にも何か考えがあるのだろうと考え直し、疑問を飲み込んで白蜥蜴に俺の持っているスキルを説明する為に自分のステータスを確認する。
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ネーム-クライ アマツキ
種族 堅牢青蜥蜴人
レベル 9
スキル-パッシブ
『強化向上』
蜥蜴人の堅鱗
蜥蜴人の鋭爪
筋力上昇
『作成』
器用
『特殊』
暗視
『耐性』
痛覚耐性
恐怖耐性
自殺志願
『脆弱』
水氷冷脆弱
『固有』
青ノ魂(覚醒)
位
スキル-アクティブ
『尾』
尾の重撃
尾の瞬撃
尾の転撃
『牙』
咢の一撃
『咆哮』
水泡流咆哮
『生態』
自切
脱皮
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レベルが9。レベルとは進化する毎に上がりにくくなるイメージだったが、流石に白蜥蜴との戦いは俺にとっていい経験になったようだ。これは嬉しい……が、二度と同じような事はごめんだな。
そしてステータスに新たに耐性と言う項目が増えていた。これは戦闘中に獲得したものだろう。戦闘前は無かった筈だからな。
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『痛覚耐性』
痛みに対して耐性を持つ。
強い痛みを受ければ受ける程、痛みを多く緩和出来る。
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『恐怖耐性』
恐怖に対して耐性を持つ。
強い恐怖を受ければ受ける程、恐怖を多く緩和出来る。
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『自殺志願』
自身の生命に対して関心が薄くなる。
生命の危機に瀕しても、通常時と変わらない行動が出来る。
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むぅ。『痛覚耐性』、『恐怖耐性』はとても使い勝手がいいスキルの様だ。実際腕を切り落とされても普通に思考出来るのはこのスキルのお陰かもな。感覚が麻痺しているだけかと思っていたが、実際はスキルの恩恵だったのか。
問題は……『自殺志願』、お前だ。どの様にしてスキルに名前が付いているのかは知らないが、この名前はあんまりだろう。もう少しカッコいい名前は無かったのかと問い詰めたくなる。スキルに名前を付けている奴は俺と同レベルにネーミングセンスが無いのは確実だろう。
おそらく最後の特攻に近い攻撃のお陰で得たスキルが『自殺志願』なのだろうが、……むぅ、「自身の生命に対して関心が薄くなる」? これは少し危なくないか? 別に俺自身の感覚としてはスキル取得前と後の違いは無い無いのだが。……まあ変化が無いなら死に掛けている今気にする事は無いか。
新たに獲得したスキルも含め、獲得した経緯、スキルの説明も詳しく説明する。説明を受けた白蜥蜴は時折質問を挟みながら、真剣な様子で俺の説明を聞き続けた。
まもなく俺は全てのスキルの説明を終えた。
『ふぅむ。なかなかに面白い存在のようだなお前は。面白い。そして、生まれてから随分と濃い時を過ごしている様だ』
……たぶん笑ったのだろうか? 声色は優しかったので機嫌が悪くなった訳ではないだろうが、鋭く揃った牙を見せるのはやめてほしい。おい『恐怖耐性』、仕事しろ。怖いぞ。
『そして、どうやらお前は未熟な者として生まれたせいで、本来蜥蜴の時点で獲得していたスキルを持っていない様だな。なかなか回復が遅い様なので気にはなっていたが、お前『再生』のスキルを持っていないな。逆に私の聞いた事の無いスキルを持っている。……面白い』
『再生』ね。文字通り捉えるなら傷が治るスキルか? まさかビデオの「再生」ではあるまい。
『『再生』は本来殆どの鱗族が持っているスキルだ。そのスキルは存在が進化する毎に強さを増し、私程になれば脚を切り落とされてもひと眠りの間に脚が生えて来る。……お前は生まれてから一度も『自切』を使っていないな? いや、先の戦いでは使ったか……。あれは英断だった。本来鱗族にとって『自切』とは『再生』と二つ一組のスキル。『再生』が無ければ『自切』で尻尾を切り落としても次の尻尾が生えて来る事は無い。勿論『再生』は尻尾を生やす以外に傷の治りを早め、別の部位が欠損してもある程度なら治す事が出来る。流石に心臓や頭を破壊されても再生する様な能力は鱗族には無理だがな。』
むぅ。普通は持っているスキル……。俺はどうやら早く生まれて来過ぎたせいで、本来持っていた筈のスキルを獲得し損ねたらしい。
聞いた限り、とても優秀な能力の様だ。『再生』があったのなら何度か死にかけた怪我の大半は問題にならなかったのかも知れない。
「そんなスキルがあったのか。しかし、俺には残念ながらそんな便利なスキルは持っていない。今からそのスキルを獲得できるのか?」
『普通は生まれつき持っているスキルだ。後天的に『再生』を獲得した者は私の知る限り存在しない』
そうか、それは残念だ。そんな便利な能力、これからの事を考えると是非欲しかったが。
『しかし、お前は普通では無い。『位』などと言うスキルは初めて知るが、私の考えではお前のその力が在れば後天的に『再生』を得る事も可能だろう。そうすればお前はその傷を癒し、私は約束を果たせる』
「……どうすればいい? 出来れば早めにその方法を教えてほしい。流石に意識を保っているのが限界だ。気を緩めると今にも気絶しそうなのだ」
当然塞いでもない傷口からは、白蜥蜴と話している間も出血は続いている。
流石に身体の中の血も残っていないのか、今ではほんの少ししか血は流れ出てはいない様子だが。
俺の出血のせいで、俺を覆って温めてくれている軟毛蜥蜴もところどころ血で濡れてしまっている。可愛い姿がなかなかホラーな見た目になっている。
『お前の話を聞く限り、『位』とはその生物の特性をその身にスキルとして獲得する力だ。お前が私の水晶蟹を喰らってその甲殻の強度や爪の鋭利さ、そして泡のブレスをも獲得したようにな。まあ、欠点を上げるなら「喰う」必要が在る為、喰えない生物の特性を得る事は出来ない事だろう』
「ああ」
『それに、あくまで「生物としての特性」を得る能力であって、その生物の持つ技術等は獲得出来ないのだろう。例を挙げれば、外の森に棲んでいる森精人を食えば、その優れた視力等は手に入れられる。しかし食った森精人が武具や布を作れたとしてもお前が出来る様になる事は無い。森精人は魔法を得意としているが、魔法とは技術的な面が強い。恐らくお前の能力でも獲得は出来ないだろうな』
「そう言う考察は後で聞くよ……それで? どうすれば俺は『再生』を獲得できるのだ? 何となく何かを食えば獲得出来るのだろう事は理解したが、流石に今から狩りに出るのは無理だぞ? ……まさか白蜥蜴さんを喰うのか?」
『ふははは! 私を喰うか! それもいい。出来るものならするがいい。もし将来的に私を殺せる程強くなったのなら私を喰ってみろ。……だが今お前が食うべきなのはお前の身体を覆っているそいつらだ』
身体を覆っている……、まさか、軟毛蜥蜴の事か?
ああ、鱗族なら生まれつき『再生』を持っているとか言っていたな。蜥蜴と名前が付いているなら軟毛蜥蜴も鱗族なのだろうが。いや、しかし……。
「仮にも俺の身体を温めてくれた恩があるコイツ等を喰わなければならないのか……。地味に愛着すら湧いてきていたのだが」
『恩と言うならそれらを生成した私にあるだろうが。……まあ、気に入らんなら他の者を出すか。手ごろで美味い生物なのだが……。なら別の――』
ぶちり、と俺は軟毛蜥蜴を頭から食いちぎった。
……むぅ、口に入れてから暫くは白身魚の様な淡白な味だが、噛めば噛む程脂の旨味が広がる。
触角がいいアクセントの様な役割を果たし、食感も楽しい。まさに珍味って感じだな。
出来れば料理して食いたかったが……、この感じだと焼いても煮ても揚げても美味いだろう。酒の肴にも良さそうだ。触角だけ揚げるというのも良さそうだなぁ。
料理人の性か、初めて食べる食材の調理方法を考えながら、その味を堪能していく。
淡白な味だが不思議と飽きが来ない軟毛蜥蜴は十匹以上居たその全てが俺の胃袋に納まった。
『お前……恩云々はどうした……』
何故か呆れた様子で俺を眺める白蜥蜴の姿が気になったが、それよりも問題は『再生』を獲得出来たどうかなのだが……。
『『位』によりスキル『触手生成』『触手操作』『再生』を獲得しました』
『≪最適化しますか?≫』
俺は安堵と共に「はい」と念じた。
バトルシーンよりも説明回の方が書く事に力が要りますね。




