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LEGEND COLLAR~色彩の英雄~  作者: 水晶 蜻蛉
青の章 水晶洞窟の主 編
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青の章 第47話 勘違い

 2話ぶりの天月視点です。

青の章 第47話 勘違い

 

 「かっはっはっは」

 

 乾いた笑いが俺の口から漏れる。最早笑う他ない状況だ。

 

 初めの不意打ちは上手く決まった……と思う。何故か白蜥蜴から卑怯者の様に言われたが、勝つために手段を択ばないのは普通だろうに?

 というか、普通に勝てないのが分かっているのだから不意打ち程度・・気にするなよ。ここはボクシングのリングでも柔道や剣道の道場でもない、弱肉強食の自然なのだから文句を言われる筋合いはない。まあ罵倒されたからと言って別に怒る程の事でもないか。

 

 ……問題は、白蜥蜴と俺の圧倒的な実力差だ。

 俺は未だに直接的な攻撃のスキルは使っていない。こんなにも実力差がある相手に対し、早々と手札を全て晒すのは危険すぎる。それに今までの敵とは違い、頭が回る。

 だからこそある程度白蜥蜴の情報を得るために、牽制に近い攻撃を繰り返した。

 反撃を受けない様に、この部屋に来る前に拾っておいた小石……砂利で目つぶしし、更には子鬼との戦闘で有効だった呼吸を妨害する為に、僅かだが粘度のある泡と水を吐き出すスキル『泡の咆哮バブルブレス』で喉と鼻を塞いでみた、喉の方は上手く気管にでも水が入って咽てくれればと思ったが、想定した程の効果はなかった。鼻に入った泡水も期待したほど白蜥蜴に衝撃は無かった様だ。

 だが、目つぶしの効果は十分あった。目が見えない白蜥蜴の攻撃は何とか避けられる。

 振るわれる爪の速さはとんでもなく早く、白蜥蜴の魔法の攻撃よりも早い。たぶんまともに喰らったら進化して堅くなった鱗もろとも真っ二つになるだろう事は想像に難くない。

 冷静に位置を探られたらたまらないので、白蜥蜴の耳元で挑発をしてみた。風太郎フウタが言うところの「煽り」ってやつだな。あいつの人を怒らせる技術は昔から目を見張る物がある。今回はそれを真似させてらった。

 そのお陰か狙いが定まっていない攻撃は幸運にも俺の身体に触れることなく、俺は白蜥蜴の全身を攻撃してある程度白蜥蜴の防御力は確認できた。

 

 ズバリ、歯が立たない。

 

 スキルを使っていないとは言え、俺の最大の攻撃の要である尻尾の打撃も鋭くなった爪による斬撃も殆ど意味を成さない。

 特に胴体と後ろ足の鱗が硬すぎる。攻撃した感触がまるで鉄の塊だ。本気でスキルを行使した攻撃をしていたらこちらの身体が壊れていただろう。鉄の塊を素手で殴る様な物だ。

 尻尾や前足は振り回されているので攻撃は出来なかった。唯一首元の鱗は他の場所より多少やわらかいのか、爪で僅かに傷を付ける事に成功した。

 だがそれだけ。もし白蜥蜴の首に致命傷を与えようとすれば恐らく俺は一時間以上同じ場所に爪を振るい続ける必要があるだろう。

 それでは俺の爪が持たないだろうし、何より白蜥蜴も俺の狙いに気付いて首元を防御するだろう。

 

 とすると、後は眼球とかか? しかし既に一度砂利で攻撃をしてしまった以上、既に狙うには警戒され過ぎている筈だ。

 

 ……正直これ以上、白蜥蜴に対して有効な手が思い浮かばない。

 

 そうこうしている内に、白蜥蜴が生み出した? 水晶蟹が俺の周りによって来る。むぅ、脚の速さは前に戦った個体達と同じだな。

 いちいち相手をしていられないので、白蜥蜴の視力が回復していないのを確認し、『尾の転撃(ロール・テイル)』で水晶蟹三匹を一気に攻撃する。

 二足歩行になって可能になった、ステップを踏むような気軽さで放たれた『尾の転撃(ロール・テイル)』は進化前とは比較にならない威力で三匹すべての甲殻を砕いた。元々水晶蟹はそこまで堅い相手ではなかった事もあるだろうが、それでも格段に威力の上がった攻撃のもたらした結果は驚くべきだろう。

 問題はこのスキルを使ったとしても白蜥蜴には大してダメージは無いという事が、やる前から分かっているという事か。あの鱗相手にはこの程度の打撃は撫でるのと変わらないだろう。

 

 そんな事を考えていると白蜥蜴の声が頭に響く。

 要約すると「私に血を流す事が出来たら見逃してやる。更にはご褒美もやる。出来なければ殺す」だと。シンプルであり難い提案だ。

 なぜ白蜥蜴がこの様な提案をしてきたのかは不明だが、この際それはどうでもいい。正直手詰まりなこの状況に光明が見えてきたのは本当にあり難い。勿論提案を受け入れさせてもらう。これはアレだな、溺れる者は藁をもつかむってやつだ。ま、俺は元々泳げないけどな!

 

 ―――なんて、余計な事を考えていられたのはその瞬間まで。

 

 先ほどまでとは比べ物にならない威力・数の攻撃が俺を襲う。

 飛んでくる鏃の様な水晶は最早巨大な杭の様になり、俺の鱗を紙の様に貫く。

 足元から生えて来る円錐の水晶は変わらない。がしかし、油断すれば脚を貫かれてしまう。

 水晶蟹ではなく、数体の巨蟹・・を生み出され一斉に俺に襲い掛かってくる。

 球体の水晶が目の前に飛んできたかと思うたら、俺の身体に触れると同時に炸裂する。

 突風の様な風が吹いたかと思えば体のあちこちが薄い水晶に覆われ動きを阻害される。

 それらをかいくぐって白蜥蜴に接近して攻撃をしようとすると水晶の壁が現れ、攻撃を防がれる。

 

 暴風の様な防ぎ様の無い攻撃が四方八方から理不尽に襲い掛かる。息が詰まる様な濃密な攻撃は避ける事すら難しくなり、防御に徹した所で即死を免れるだけ。意地でも頭部と心臓付近は防御するがそれ以外は無事では済まない。攻撃が当たるたびに鱗は砕け血が舞い肉は裂け骨が折れる。

 

 


 どれだけの時間戦っていたのだろうか。……俺は地面に倒れ伏していた。

 左腕は水晶の杭に貫かれて大きな穴が開き、そこからゆっくりと血が溢れ出している。腹部は白蜥蜴の振るった尻尾の直撃を受け、鱗が全て砕けるか弾け飛んでいる。脚は細かい傷がおびただしい程付き、頭部から出血が目に入り右目が見えない。

 他にも骨折や打撲など数多くの怪我をしており、控えめに言って満身創痍。普通に言って死にかけだ。それほどの怪我を負って挑んだ白蜥蜴の方へ視線を向けると、全く無傷の白蜥蜴と目が合う。

 白蜥蜴は俺が目の前に倒れ伏しているにも関わらず、今現在追撃をする様子は無い。


 「なん……だ? 止めは……刺さないのか?」

 『ふん……、止めを刺そうとしてまた不意打ちでも喰らわん様に警戒しているだけだ』

 「かっはっはっは、随分と……慎重だな。目つぶしが効いたのか?」

 

 息を深く吸うだけで耐え難い痛みに襲われるため、一言発する度に浅く息を吸わねば会話すら出来ない。そんな俺の軽口を無視し、白蜥蜴は爪を振り下ろし俺の左腕を切断・・した。

 だが俺は動かない。どうせ穴が開き感覚も無くなっていた腕だ。あのままではどうせ二度と動かなかっただろう。肩口から噴き出る血を見ながら、俺の体の中にまだこんなに血が残っていたのかと変な関心をしてしまう。

 

 「……で、止めは、刺さないのか?」

 『……そのままでも、お前は血を失って死ぬ』

 「確かに、な」

 『……』

 

 ……? 白蜥蜴は何か戸惑った様な雰囲気をしているな? 

なんだ? 未だに生きている俺の身体が不思議なのか?

 

 『お前は何を考えている?』

 「……? 何を……って、何がだ?」

 

 本当に何を聞かれているのかは分からない。主語を言えよ、主語を。あー、血を失い過ぎて意識が朦朧とする。全身を包む倦怠感に口を動かす事さえ億劫だ。

 

 『お前は私に勝てない……血を流す事など出来ないと途中から気が付いていただろう』

 「いや? 最初から無理そうだな~、とは思っていたぞ?」

 『ならば何故、お前は私に向かってきた?』

 「いや、何故も何も、逃げ道は、お前が塞いだのだろうが。逃げ道があったらなら、逃げているさ」

 『命乞いでもすればよかっただろうに』

 

 ……ああ、そういうことか。

 

 「なあ、白蜥蜴さんよ、あんた三つ勘違いをしてるぞ」

 『白蜥蜴?』

 「まず一つ、あんたはもう既に勝った積もりでいるらしいが、まだ戦いは続いているぞ」

 『……』

 「二つ、確かに俺はあんたより弱いが、あんたの提示した条件を満たす事は可能だ。弱者には弱者の戦い方があるのだよ。まあ、確かに百%確実な方法じゃないけどな」

 『……ほう、まだ何か策があると?』

 「そう、まあ幾つか賭けが必要だったがな。かっはっはっは」

 『……』

 「じゃあ、その賭けを今から実践してみようか」

 

 言うや否や、俺は跳ね起き目の前の白蜥蜴の顔面目掛けて尻尾を振った。しかもスキル『尾の瞬撃(ライト・テイル)』、白蜥蜴と出会ってからここまで一度も使わず温存して来た俺の最速の技だ。

 

 『下らない』

 

 そう言うと白蜥蜴は口を開け、鋭い牙で俺の尻尾を噛んだ。尻尾に牙が食い込み鮮血が舞う。歯の食い込んだ尻尾を食い千切らないのは単に手加減する為か、俺がこれ以上行動出来ない様に押さえつける意味があるのか。

 俺はそこで初めて使うスキル『自切』を使い尻尾を切り捨てる。尻尾はスキルの発動と共にぷつりと痛みも無く根元から切り離された。

白蜥蜴は驚いた様子で目を見開いた。賭けの一つ目は成功。最大の攻撃手段を自ら捨てる事により、数舜白蜥蜴の対応は遅れた。

 

 俺は勢いそのままに身体をひねって白蜥蜴の前足付近目掛けて落ちる様に身体をコントロールする。

 そして俺は白蜥蜴の前脚……その爪の付け根目掛けて「かかと落とし」を決める。腕も尻尾も無くした俺が最後に使えるのは脚だけ。足と、血と肉を大量に失った為に大分軽くなった体重を最大限に利用した、最後の一撃。

 

 「かっはっはっは」

 

 結果、俺の目に移ったのは、地面と俺の「かかと落とし」に挟まれ、白蜥蜴の爪にヒビが入り僅かな血があふれる様子。そしてその衝撃で折れる俺の脚だった。

 人間の爪と違い、俺や白蜥蜴の爪はアーチ状に曲線を描いている。故に地面に接する部分とそうでない部分があるわけだ。俺はそこに一種の脆さを見出し狙い定めた訳だが、白蜥蜴の爪の耐久力が不明だったが爪の先端が僅かに摩耗し丸くなっていた事からそれほど理不尽な硬さではないと予想し、事実その通りだった訳だ。

 

 次の瞬間、初めて聞く白蜥蜴の痛みによる咆哮と、振るわれる前足。

 

 「三つ目の勘違いは、俺がお前より強い奴と戦った事がある事を知らなかったって所かな?」

 

 腕や尻尾、そして血液を失い随分軽くなった俺の身体が地面に崩れ落ちた直後、俺の胴体に白蜥蜴の前足が直撃し、ただでさえ少なくなっているであろう血液を撒き散らす。だがもはや悲鳴を上げる程の力も残っていない。乾いた口から出るのは喉の奥からあふれ出た胃液と鮮血の混合物。

 俺は意識を失う瞬間、真っ赤な髪をした女性がいやらしい笑みを浮かべる光景が脳裏に浮かんだ。アレの相手に比べればこの程度楽勝だな。かっはっは……。



 強大な敵に一矢報いる。ロマンですよね。

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