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LEGEND COLLAR~色彩の英雄~  作者: 水晶 蜻蛉
青の章 水晶洞窟の主 編
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青の章 第46話 母の試練2

青の章 第46話 母の試練2

 

 「グゥガァァァァァァァァァァァ!?」

 

 痛みによる絶叫。

 頭を振ろうが、前足で目を擦ろうが痛みは引かない。むしろ砂利が眼球に擦れて更なる痛みを引き起こす。

 

 生物には必ず弱点がある。それは強者も弱者も同じ事。それはどれだけ長く生きようと、克服出来ない物が多い。

 多くの生物に共通する弱点に「頭部」が挙げられる。言うまでも無く生命活動に重要な機関であり、頭部を持つ生物共通の弱点だ。例外があるとすれば既に生物では無いアンデット等は、頭部が無くても生きられる種類が居るらしい。

 

 亜竜である私も当然頭部は弱点だ。勿論、強固な鱗や頭蓋に守られた私の頭部はそう簡単に傷つかない。が、それでも目に異物が入った時の痛みは生まれた頃から変わらない。

 しかも目に入ったのは砂や虫などではない。細かく小さいとはいえ砂利が生み出す痛みは、私を絶叫させるのに十分な痛みを生み出している。

 

 私は水晶の映す景色を見る事が出来る魔法があるが、全ての魔法は一定以上の集中が必要だ。現状直ぐに魔法を発動させる事は出来ない。つまり私はこの痛みがある程度引くまでの間、暗闇の世界で戦わなくてはいけないのだ。

 

 不意に首の辺りに衝撃が伝わってくる。恐らく蜥蜴人が私を攻撃したのだろう。衝撃から恐らく爪で攻撃したのだろうが、やはり私には大したダメージは無い。

 

 すぐさま蜥蜴人の居場所を予測して爪を振るう。しかし同族の鱗すら切り裂く爪は、空気しか切らない。

 少し間を置いてまたも首を攻撃される。爪を振るうが結果は同じ。視界が封じられた私の攻撃は単調で、さぞ避けやすい事だろう。だが、それもあと少しの間だ。もう大分痛みも引いた。もう少しで蜥蜴人を簡単に殺せ―――

 

 「オイオイ、お前は踊りでも嗜むのか? 自慢の魔法はどうした。まさか痛みで使えないのか?」

 

 わざわざ耳元であざける様な言葉が聞こえた。挑発以外の意図を汲み取る事の出来ない言葉が。

 ……たかが、たかが生まれたばかりの弱者の言葉が、私の胸の奥を傷つける。頭に血が上り、自分の鼓動がひどく煩く感じる。うめき声ではなく唸り声が私の喉の奥から自然と漏れる。

 怒り。それも生まれてから初めてともいうべき屈辱・・からなる怒り。

 

 『たかがこれだけの事で調子に乗るなよ蜥蜴人風情が! 不意打ちを一度成せたからと言って、何が変わるのだ! 貴様は私の鱗を傷つける事は叶わない。二度も同じ手は食わんぞ!』

 「ガァァァァァァァァァァァ!」

 

 咆哮と共に、スキル『念話』で蜥蜴人に向かって話しかける。それと同時に、先ほど生み出した水晶蟹達に『蜥蜴人を攻撃しろ』と言う命令を下す。

眷属は私の命令に絶対服従だ。例えその命を犠牲にしようとも命令を愚直に守る。


「不意打ちの何が悪い。俺の特技は不意打ちと言っても過言じゃなくてね。とある真っ赤な大馬鹿には、これだけは一定以上効果があるのだよ。仲間にも俺には不意打ちの才能があるって褒めてくれてな」


『なに? 何が言いたい!』


「不意打ちなんぞ、俺から言わせれば隙を見せた奴が悪いと言う事だよ。待ち伏せだろうが、目潰しだろうが、金的だろうが、遠距離からの狙撃だろうがな。命を掛けているのに食わず嫌いしている余裕がある訳ないだろう?」


『この……!! 貴様、私が手加減していればどこまでも調子に乗って……、本来であれば貴様程度一瞬で殺せ――ぐぇぇ!?』

「ガァァァァァァァ――グボォ!?」

 

 会話の途中、咆哮を上げている口の中、喉の奥に何かが入ってくる。

突如入って来た異物は、私の喉の奥まで侵入し、結果として異物を排除しようとする体の反応として、盛大に咽る。息もままならない程咳をしても、なかなか異物を吐き出しきれず、遂には吐き気まで催して来た。異物は少し粘度のある液体の様だ。


 間髪入れずに鼻にまで液体を掛けられ、思わず吸い込んでしまった私の鼻の奥を痛みが襲う。


「『水泡流咆哮バブルブレス』って言うらしいぞ。使えないと思った技―――スキルだが、意外に使い勝手がいいな。二重の意味で汚い攻撃だな。かっはっはっは」


 っく、そう言えばこの蜥蜴人は進化直後、何やら水晶蟹や巨甲殻蟹の使うブレスに似た技を放っている姿を、水晶蟹の水晶を通して見た事を思い出す。

 水晶蟹が使うものと比べても半分の威力も無いソレは、大して警戒する必要もないと今まで完全に忘れていた。まさか呼吸を阻害し、嗅覚も封じるか!


 未だ軽傷の蜥蜴人、方や視覚と嗅覚を封じられ、呼吸もままならない私。これではどちらが強者か分からないではないか!


「俺にあんたは倒せない。しかし、一泡食わせる事は出来るぞ? おっと、そういえば本当に泡を食わせていたな。かっはっはっは!」


『……、貴様!』


 何が可笑しいのか、妙な笑い方をする蜥蜴人に再び激高し掛けるが、歯を食いしばり何とかその感情に蓋をする。

 

『……いいだろう。貴様を殺すのは一先ずやめてやろう。そもそも、殺すことが当初の目的ではないからな』

「むぅ? 随分と寛大だな? 俺は死を覚悟して戦っているのだが?」

『ただし! 条件がある!』

「むぅ? おっと!」


 会話の途中に水晶蟹が蜥蜴人に迫るが、鎧袖一触とばかりに回転を利用した尻尾の一撃で倒された。あのような技を私は他に見たことは無いが、恐らく威力からしてスキルなのだろう。


「むぅ、結構威力上がっている、な。……それで、殺さない条件とはなんだ?」

『貴様……、いや我が子よ。お前は私にさほどダメージを与えてはいないだろう?』


 まだ涙で歪んでいるとは言え、視覚は回復。口や鼻に入った液体も殆ど残っていない。

 ある程度痛みを与えられはしたが、傷と呼べるものを私は負っていない。私は負けていない、圧倒されて等断じていない!


『私にを流させよ。それが出来ればその命奪わないでおく』

「……それ、無理って分かって言っているだろ?」

『そうでもない。蜥蜴人如きにここまで翻弄されたのは初めてだ。流石我が子と言った所だな。そんな優秀な我が子であれば私に傷の一つや二つ付けられても不思議ではないさ』


 威圧のつもりで蜥蜴人を睨んで見るが、蜥蜴人は別段気にする事も無く口元に手を当てて何か考えている様だ。

 こんな隙だらけな状態では、本気を出せば一撃で確実に殺せる……が、それは私の誇りが許さない。自らが非難した行動を取る事は、私には出来ない。亜が頭に付こうとも竜と称される私には誇りが、矜持がある。

 ……私の身体に傷一つでも付けられるなら、私と蜥蜴人は対等と認めてやる。これは私にとって最大限の譲歩だ。

 もとよりどの程度実力があるのか見定める事が目的だった。弱ければ殺す云々は半ばただの脅し文句だ。よほど期待外れでなければ今後私の暇つぶしの相手をさせるつもりだった。……皮肉な話だな。私の予想より優れている故に、私を怒らせ自らの生きる道を断ったのだ。


 やがて考えがまとまったのか、蜥蜴人は私を真っすぐ見つめながら話しかけてくる。


「本当に俺を殺さないのか? 結構ひどい事したと思うが。」

『ああ、誓う。もしお前が私に血を流させる事が叶ったのなら、私はお前の命を奪わない。それだけではない。ご褒美もくれてやろう。だが出来なければお前は生きたまま私の眷属の餌にしてくれるわ!』

「……よし、了解した。ならば何とかしてお前に血を流して見せよう。と言うかそれしか生き残る術は無さそうだしな」


 分かっているじゃないか。そうだ、もっとお前の力を見せて見ろ。正直殺したくてたまらないが、一時の感情で退屈な日々を抜け出せる―――可能性を捨てたくはない。現に怒りと憎しみ意外にどこか高揚感を感じている私が居る。まるで大昔、手にした宝箱を開けようとしているその瞬間の様な高揚感。ああ、成程……、今の私にとって蜥蜴人こやつは何が出て来るか分からない宝箱なのか。ならばこそ多少の不愉快な発言も程よい刺激スパイスとなると言う物だ。


『ならば始めようか。ただし、もう容赦はしない。一撃で終わらせる事は……つまらないのでしないが、先ほどの様なぬるい攻撃は無いと知れ!』


 私は戦いの宣言と共に、数多のスキルを繰り出した。




 プライド高い人で、不測の事態が起こるとちょっとだけ訳の分からない理不尽な要求して来るって事有りません?

 母蜥蜴さんは、パニックで変なテンションになってしまっています。だから可笑しな思考回路で変な条件を考えてしまったんですね。



 ……決して筆者が夜なべして書いた文を後日読み、「え、何でこの人(竜)こんな事言っているの?」となって慌てて後書きを書き足した訳ではありません。

 そういう事にして下さい。


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