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LEGEND COLLAR~色彩の英雄~  作者: 水晶 蜻蛉
青の章 水晶洞窟の主 編
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青の章 第35話 VS蟹3

青の章 第35話 VS蟹3

 

 「ガァァァ!!」

 

 爪で胴体を掴まれ、更に持ち上げられた俺は必死に暴れる。しかし胴体に食い込む程強く掴まれている爪から逃れることは出来ない。

 逃げるどころか寧ろ爪の掴む力がどんどんと強くなっていき、自分の骨が軋む音が聞こえる。

 『尾の瞬撃(ライト・テイル)』で俺を捕まえている水晶蟹に攻撃しようとするが、空振りに終わる。

 いよいよ俺の胴体が限界を迎え、口から内臓が飛び出しそうになりながら、どうにかしてこの状況から抜け朝ないかを考える。

 

 ―――ぐぅ……、この状態では尻尾を使った攻撃は届かないな。

 相手に噛みつく も当然届かない。

 尻尾と噛みつき以外の攻撃手段と言うと、あとは爪で引掻く位だが、スキルでもない爪での引掻きは、俺を掴んでいる腕に僅かな傷を付けるだけに終わる。

 ……いや待て、腕?

 本体に届かなくても、腕を折る事が出来れば……、そうだ、ものは使いようだ。別にスキルを当てる必要はない!

 

 俺は胴体が今にも千切れそうな痛みを堪え、全力で『尾の転撃(ロール・テイル)』を放つ。

 『尾の瞬撃(ライト・テイル)』は自身を回転させながら尻尾を振るスキルだ。

 当然、尻尾が水晶蟹の本体に当たることはなく、攻撃は空振りに終わる。

 

 しかし、今重要なのは尻尾の攻撃よりも、それにより生まれる遠心力だ。

 地味に俺が気に入っている『尾の転撃(ロール・テイル)』、これは他の二つの尻尾を使ったスキルとは違う点がある。俺はスキルを何度も使う練習の中で発見した。

 それは、『尾の転撃(ロール・テイル)』と言うスキルは、尻尾を使った一撃を強化する効果ともう一つ、回転を強化するという効果があったのだ。普通に宙返りをした時よりも、スキルを発動して宙返りをした時の方が圧倒的に回転の速さが異なっていた。

 別にだからどうしたと発見した時は思っていたが、今の状況ではそれが突破のカギとなる。

 

 空振りをした尻尾の力と自身の身体のひねる力、それに『尾の転撃(ロール・テイル)』の回転を強化する力が加わる。

 宙に居る俺を支えている水晶蟹の腕が、その力を全て受け俺を爪で掴んだまま、水晶蟹の腕はねじ切れた。そして水晶蟹の腕から離れた爪は俺を掴む力を失い、俺の胴体から落ちる。

 

 すかさず俺を捕まえていた水晶蟹に、お返しとばかりに『尾の瞬撃(ライト・テイル)』の連撃で戦闘不能にする。

 

 これであと八匹か……。

 さっきの泡の水鉄砲みたいな攻撃には驚いたな。―――考えてみれば蟹なのだから泡位出すか。水辺でもないからあんな風に水鉄砲の様に泡だか水だかを飛ばして来るとは思わなかった。

 これからはあの攻撃にも警戒しないとな。

 

 そう考えながらも体を動かし、数が減った分攻撃が回避しやすくなり、少し余裕が出てきた所で、他の水晶蟹との距離が十分離れていることを確認したうえで、『尾の転撃(ロール・テイル)』で目の前の水晶蟹の胴体を砕く。

 あと七匹。確実に疲労は蓄積するが、休んでいる暇はない。

 

 更に他の水晶蟹と距離のある個体まで走り寄る。狙った個体は走っている俺目掛けて、泡の水鉄砲の様な攻撃してくる。しかしあらかじめ警戒していたため、避けるのは簡単だ。

 最小限の動きで泡を避け、水晶蟹に向かって跳躍する。

 こいつも『尾の転撃(|ロール・テイル)』で仕留める。

 

 そして尻尾が水晶蟹の胴体に当たる瞬間―――。

 

 目の前の水晶蟹の身体が、突然飛来してきた何かに衝突し、吹き飛ぶ。

 

 俺は吹き飛んでいった水晶蟹に唖然とするも、すでに発動した攻撃を止めるすべはなく、大きく空振りをし回転しながら背中から地面に衝突してしまった。衝撃で肺の中の空気が全部吐き出されてしまい、うめき声も上がらない。

 

 盛大に自爆しながらも何とか体制を立て直し、吹き飛んでいった水晶蟹の様子をうかがうと―――。

 

 吹き飛んでいった水晶蟹には、見覚えのある物体が突き刺さり、胴体は砕け背中の水晶すらも粉々に砕けていた。その様子から、飛来した物体は相当の速度であった事が伺える。

 そしてその飛来した物体は、―――爪、であった。

 水晶蟹の爪ではない。水晶蟹のものよりも大きく、工具のペンチを連想させる白いそれは、今まで殆ど動きを見せなかった巨蟹の爪だった。

 

 巨蟹の爪には、本体よりさらに白いロープの様なものが繫がっており、その先を見ると依然最初に見た位置から動いていない巨蟹の腕に続いている。

 そして俺の目の向けた先で、巨蟹は更なる動きを見せる。

 蟹には爪の付いた腕は二本あり、当然巨蟹も二本ある。巨蟹は片腕の爪は水晶蟹に突き刺さっているが、もう一方の爪は残っている。

 そしてその爪はゆっくりとした動作で俺に向けられ、とんでもない勢いで発射される。

 

 ―――ふざけるな一体どんな生態しているのだ、この世界の生物は!

 

 心の中で悪態をつきながら、高速で飛来する爪を避ける事に成功する。

 

 俺の直ぐ傍を通過した爪は、その勢いのまま空間の壁に突き刺さる。この世界の生物は骨蛇にしろコイツにしろ、ふざけた生態をしている。

 

 泡を吐く程度ならまだ理解はできる。水のない場所で大量の水を吐き出せるのは、どうせスキルによるものだろう。別にスキルを使えるのは俺だけではないのだから。

 

 だが、まさか自分の体の一部を発射する……とか……、はぁ? と呆れたくなる。

 

 目の前で巨蟹の腕から伸びた白いロープ状のもの (たぶん筋とかその類)がするすると、まるで掃除機の電源コードの様に回収されていくのを見て、開いた口が塞がらない。

 

 呆然と見ている間に、巨蟹の腕の先には爪が何事もなかったかのように戻ってしまった。

 そして再び、俺に向かって爪が発射される。どうやらあの爪を使った攻撃は、己の爪を犠牲にしたものではなく、何度も繰り返し行えるものらしい。

 

 そのあまりにもあまりな光景に目を奪われながらも、回避だけはしっかり行う。

 だが敵は巨蟹だけではない。

 いつの間にか俺に接近していた水晶蟹が俺に向かって泡を吐き出す。同時に爪も振るってくる。

 これには反撃など考えず、回避に集中する。しかし今の行動で水晶蟹の身体で巨蟹の身体が隠れて見えなくなってしまった。

 

 いつ爪が飛んでくるか分からず、巨蟹の身体を視界に収めようと水晶蟹の陰から体を出した瞬間、水晶蟹の身体が吹き飛ぶ。

 どうやら巨蟹は水晶蟹ごと俺を攻撃しようとしたつもりらしく、俺が水晶蟹の陰から出てくるのが一瞬でも遅ければ、巨蟹の爪を喰らった水晶蟹の身体に潰されていただろう。

 巨蟹の戦い方は、水晶蟹に足止めさせている間に、獲物をあの爪を発射させる攻撃で仕留めるというものらしい。なかなかに狡猾だな。自分は最小限の被害で、美味しいところを掻っ攫うかい。

 しかも水晶蟹に対する配慮など一切ない。あわよくば一緒に始末しようとしている。

 

 水晶蟹はよくこんな奴と一緒に戦うものだな。

 いや、協力しなければこいつらが巨蟹の餌になってしまうのかもしれない。

 その証拠に、回収した爪に付いていた水晶蟹の肉片を躊躇いなく口に運ぶ様子を目の端で捉えてしまった。

 別にその様子に嫌悪感など抱かないが、同じような真似を自分がしたいとは思えない。

 

 いつ爪が飛んでくるか分からないので、警戒は緩めない。戦闘を始めた当初の様に『尾の瞬撃(ライト・テイル)』を駆使してまた一匹の水晶蟹を戦闘不能にすることが出来た。巨蟹のおかげで二匹仕留められていたので、残りは三匹だ。

 

 俺に向かっては来るものの、連携と言った行動は全くしないために、残りの三匹も直ぐに戦闘不能に出来た。うまく連携などされれば、流石に死んでいたかもしれないが、今はもう過ぎた話だ。

 

 残るは巨蟹一匹。

 無視できないダメージと、かなりの疲労感に襲われる俺。

 それに対し無傷の巨蟹。

 最後の戦いが始まった。


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