表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
LEGEND COLLAR~色彩の英雄~  作者: 水晶 蜻蛉
青の章 水晶洞窟の主 編
41/256

青の章 第33話 VS蟹

青の章 第33話 VS蟹

 

 むぅ。

 

 少しの間、水晶蟹 (今命名)を観察してみたが、その結果分かった事をまとめてみる。

 

 まず水晶蟹のいる洞窟の空間だが、水晶蟹はどうやらこの空間の壁を掘って、そこから何かを見つけて食べている。水晶蟹は殆ど部屋の奥の方に居るので、あまり良く見えないが、食っているものは大きいものではなさそうだ。虫とかミミズを食べているのだろうか?

 

 それと、水晶蟹同士は別に仲間意識の様な物は持っていない様だ。

 先ほど、二匹の水晶蟹が喧嘩の様な事をし、なんと片方の水晶蟹がもう片方の水晶蟹の腕をへし折ったのだ。蟹なのだから当然腕には爪がついているが、その爪でもう一方の水晶蟹の爪のついた腕を根元からポキッと。

 折れた腕を引きずった水晶蟹は、他の水晶蟹から離れるように、つまり俺の方にゆっくりと歩いてくる。

 ちなみに横歩きではない。普通に正面を向いて歩いている。まあ、そう言う蟹は前の世界にもいたので、別に驚きはしないが。

 

 ……さて、狙うべきはあの片腕になった個体だな。

 なぜ喧嘩になったかは分からないが、餌場の争いとかそんな事だろう。餌場や縄張り争いに負けて傷を負う野生動物など前世の自然ではごく当たり前の存在だった。

 よく見れば足が一本無い個体や、甲羅にヒビの入っている個体も見られる。むぅ……同じ種族でも、結構不仲なのかねぇ。

 

 腕を失った個体は、空間の中央辺りまで移動すると、片腕で地面を掘りだした。

 流石に俺の近くに来るほど都合良くは行かないか。

 

 俺と片腕の蟹との間に他の蟹はいない。

 俺は、毎日特訓をしている忍び足で水晶蟹に非常に緩慢な動きで近づいていく。幸い片腕の蟹は俺に背を向けている。

 ……他の蟹も、特に俺に気が付いた様子はない。

 

 そしてやっと、俺の攻撃が届く範囲まで片腕の蟹に近づく事が出来た。……こうして近くから見ると結構迫力あるな。体の至る所から生えている細い棘等、ここまで近づいて初めて見える物もある。

 

 少し水晶蟹をカッコいいと思いつつ、攻撃態勢を整える。

 狙いは脚、六本ある脚の内、一本でも折る事が出来ればかなり有利に戦えるだろう。というか正直、そこ以外に狙える場所が無いのだよな。背後を取っているから、攻撃できるのは背中か脚。そして背中には見るからに堅そうな水晶が生えている。ならば攻撃するのは脚しかないだろう。

 出来れば正面から頭部を攻撃して、抵抗する間もなく仕留めたい。しかし正面に回れば反撃を受ける可能性が高い。

 ならば、こうして背後から不意打ちをするのが、初撃としてはいいだろう。

 こんなに大きな蟹、流石に正面から戦うのは俺も躊躇う。

 

 使うスキルは威力重視の『尾の重撃(へヴィー・テイル)』。

 未だこちらに気付いていない水晶蟹の脚目掛けて、……放つ!!

 

 バキッ! ベキッ!

 

 乾いた木材が折れる様な大きな音を立てて、水晶蟹の脚はへし折れた。

 体に比べ、それを支えるには細く感じられた水晶蟹の脚。見るからに堅そうな外見から、一本折れればラッキー位に考えていたのだが、なんと一撃で二本も折れた。

 

 予想外の自身のスキルの威力に驚くが、それよりも次の攻撃を……。

 

 片腕の水晶蟹は、六本ある脚の内二本、しかもこれは狙ったことだが腕の無い方の脚を二本失ったのだ。今現在もバランスを崩し胴体を地面に付け、それでも立とうともがいている。

 俺は素早く水晶蟹の正面に回り込み、その頭部に渾身の『尾の重撃(へヴィー・テイル)』を放つ。

 

 水晶蟹の頭部から生えていた蟹特有の形をした目の部分が、俺の一撃で両方とも吹き飛んだ。

 そして水晶蟹は俺の一撃の勢いで背中からひっくり返った。暫くもがいていた水晶蟹であったが、時間がたつにつれその動きは小さくなり、そしてその動きを止めた。

 

 今の戦闘でかなり大きな音が出たが、他の水晶蟹は気にした様子もなく、というか気付いた素振りも無かった。もしかしたら彼ら目は付いていても視力は良くないのかもしれない。

 ああ、そういえば蟹には触角もある。視力が無くても移動くらいなら問題ないのかもしれない。ただ喧嘩していた所を見ると、恐らくはある一定以上近くのものは見えているのだろう。

 でなければ相手の腕を爪で……なんて芸当出来ないだろう。

 

 俺は水晶蟹に、念のためもう一発、頭部目掛けて『尾の重撃(へヴィー・テイル)』を放ってから来た方の通路へ引きずって行く。水晶蟹は蟹らしく体液の混じった泡を吹き、ピクリとも動くことは無い。

 折れてしまった蟹の脚は、口に加える。……それにしてもどうしても自分より大きな巨体や長い脚は引きずる形になってしまうな。

 

 水晶蟹の身体は、思った以上に重い。馬鹿でかい水晶を背負っているのだから当然と言えば当然なのだが。蟹の背中の水晶は俺が歩を進める度に地面と擦れて不快な音を立てる。

 大きな水晶が少しずつ傷ついて行くのを見て、少しだけ勿体ないと感じるのは俺の貧乏性故だろうか。

 

 しかし、現状で水晶の使い道は考えられないので、運搬に邪魔なら捨てて置いてもいいのだが、流石に今現在水晶の様なかなりの硬度を誇る物質を破壊する手段が無い。手持ちで一番の威力を誇る尻尾を使ったスキル『尾の重撃(へヴィー・テイル)』でも傷一つ付かなかったし、牙で噛みつくスキル『咢の一撃(ヂョー・バイト)』でも目を凝らさないと分からない程小さな傷を作るのがやっとだった。この蟹の背中に生えた水晶、地味に骨蛇の骨よりも堅い。

仕方なく蟹の本体と水晶を一緒に運ぶ。

 

 数十分掛けてやっと巣に運び終えた水晶蟹だったが、別に水晶事態を破壊しなくても、確実に破壊できる水晶が生えている部分の甲殻を破壊すれば良かったと言う事実に、巣に到着していざ水晶蟹を実食しようとした時点で気が付いた。

 

 俺が本気で自分の頭の悪さを実感したのは言うまでもない。

 


 巣に戻った俺は、水晶蟹の身体を爪、脚、胴体、そして背中から生えていた巨大な水晶に解体する。

 巨大な水晶は思った通り、背中の甲殻との結合部分を『尾の重撃(へヴィー・テイル)』で攻撃したところ一発で蟹の本体と分離することに成功した。

 代償として、蟹の胴体から盛大に所謂「蟹みそ」をぶちまけ、俺の尻尾にもべったりと蟹みそが付いてしまった。尻尾についた蟹みそを少し舐めてみた所、前の世界で食べた蟹みそと大して味は変わらなかった。

 

 個人的には、蟹みその味はあまり好きではない。

 別に食べられない程嫌いと言う訳では無いのだが、食べなくてもいいなら好き好んで食べはしない。

 蟹みそは弟の太陽ヨウであれば喜んで食べる。妹の七星ナーは普通に食べる。それ以外の仲間たちに関しては、一緒に蟹を食べる機会は無かったので分からないが、嫌いと言う話も聞かなかったな。

 

 と言う訳であまり好きではない蟹みその詰まっている胴体部分と爪の部分は芋虫に、脚は俺の分として配分し実食する。

 

 前の世界では蟹の甲殻は別に食べられない事も無かったので、甲殻も食べてみた。

 甲殻自体、正直味はしない。堅いだけだったが、確か甲殻類の甲殻やキノコの類に含まれるキチン質は、コレステロールを下げたりなど、健康には良かったと記憶している。故に残さず食べる。……顎が滅茶苦茶疲れるぞ、これは。

 

 肝心の蟹の身は、想像以上に美味だった。

 生の身、それも何の味付けもしていないというのにとっても濃厚な風味があり、海の蟹とは違うからなのか水晶蟹だからかは分からないが、水晶蟹の身は少し硬めで、しかし噛めば噛むほど味が染み出てくる事から、イカの燻製を思い出した。蟹の独特な癖のある味も健在だ。

 これは下手に味付けするよりも生で食べた方が美味い食材だろう。出汁にすれば中々良質な旨味が出るに違いない。

 あまりの美味しさに六本あった水晶蟹の脚は全て俺の胃袋に収まってしまった。ここまで身が美味いと、堅い甲羅などむしろアクセントとなり全然気にならなかった。

 

 満腹にはなったが、正直美味しすぎて少し腹が空けばまた食べたくなるだろう。芋虫も甲羅ごと胴体と爪を平らげていた。

 

 かっはっはっは。

 

 いいなぁ。美味い飯が食えると力が湧いてくる。もっと美味いものが食いたいと希望が湧く。希望とは生きる原動力だ。

 

 暫くはあの水晶蟹を狩ろう。戦って見た感じ、単独のところに不意打ちさえ成功すれば被害は少なく狩る事が出来るだろう。

俺は満腹だというのに次の水晶蟹の身を想像し、胸に希望を、口の中を唾液で溢れさせていた。

 

 

 

 尚、水晶蟹の背中から生えていた水晶は、流石の芋虫でも歯が立たず、巣の入り口付近に飾っておいた。

 まあ、この物寂しい巣の中にインテリアが獲得できたと考えると、苦労して運んできた努力も無駄ではないと思えるな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ