第2話 重さ
女性に聞いてはいけない事柄ベスト3
1位 年齢
2位 体重
3位 彼氏が居るかどうか
第2話 重さ
「く、ぅ~~~むぅ」
天月は大きく背伸びをしながら、改めて自信の身体に異常がないか確認する。
幸い、床に寝ていた事による背中の痛み以外、確認できる範囲で身体に異常はない。
未だに眠っている七星を背負い、桐香を抱っこした天月は、未だに風太郎を踏みつけている心の場所まで歩む。
両手に華どころか、華にサンドされた状態の天月に、再び風太郎が声を上げようとするが、心が常人では目にも止まらぬ速さで踏みつけた為、言葉を発することはなかった。
その様子を特に何も思わず、心の目の前に着いた天月は、取り合えず風太郎の上に立つ。
「ぐえ」
「さて、ココロ、取り合えず現状の俺達の状況を知りたいから—-」
「はい、情報収集でございますね。今の状況ですと、起きているもの達にこの状況となった前の話を聞き、それらをまとめる事しか出来そうにありませんが」
「ぐ、お、重い、アマツ……」
足下からの異音を気にすることなく会話をする二人、二人の異性に挟まれて平然と会話をする燕尾服の男と、男を無表情で踏みながら淡々と話すメイド服の女、そして計四人分の体重に圧迫されながらどことなく息を荒くする厨二病全開の男。端から見れば異様な風貌のもの達が異様な体勢で居るが、残念ながらそれを指摘出来るものは居ない。三人は自身が今の自分たちと同じ状況をその目で見れば、迷うことなくツッコミをなりするだろうが、この様に端から見て異常な行動をするもの達の大抵が、本人達にその意識が無いと言う場合が多い。話題間休。
「十分、ああ、でもまだ寝ている奴等は起こすなよ? 何となくだが、あんまり無理矢理起こすのはよくない気がする」
「かしこまりました」
「わざと!? わざと無視してるだろう!」
このまま話を進めようとする雰囲気に、天月に抱かれた状態の桐香が流石に口を開く。
「アマツくん、流石に少し可哀想だ、降りてやってくれないか?」
「そうだ! 体重で背骨が折れるわ! 霧崎原さん、良いことを言った! 重い! 重いから!」
「キリカさん、背骨が折れる程重いらしい」
先程まで慈愛の目付きで風太郎を捉えていた桐香の瞳は、急速に光を失い、そして腐った生ゴミでも見るようなそんな瞳をする。
「そうかい、ああアマツくん、何故だか私は今この場所、この位置が気に入ってしまった。もう少しだけこのままでいてくれないだろうか?」
「かっはっはっは、勿論ですとも」
「あれ!? キリカさんまでが敵に回った!?」
風太郎が驚きの声を挙げるが、桐香の耳には届かない
「ふ、ふふ、そうかい、重いかい、これでも普通人より軽い筈なのだが、……いや、気にしていなよ? 私は事実を述べているだけであってね? 確かに最近は少しだけ、本当に少しだけ肉付きが良くなった気が、しなくもなくもないと言うか、今までの食が細かっただけで、アマツくんの所に来てからの食事は一般女性が摂取するカロリーの平均にも満たない程であって、確かに私は運動はしないが、それでも必要エネルギー量を超過するほど摂取する事は無くてだね? ああ、アマツくん、此処は少し見晴らしが悪いね。申し訳ないのだが爪先立ちになってくれないかね?」
「ストップ、キリカさんは十分細いし軽いですよ」
正直、天月としてはこのまま爪先立ちをしても、何ら良心は痛まないのだが、しかし傷付いた桐香のフォローを優先して行う。
この場でフォローを行わなければ、桐香は先の重い発言を引きずって、以前天月と出会った頃の様に殆ど食事をとらなくなってしまう。今でも成人女性の平均体重の半分ちょっとしか桐香の体重は無い。そこで更に食事をとらなくなってしまうと、桐香の身の回りの世話をしている天月からすれば、それは絶対に避けなければならない事だからだ。
「そ、そうかい? そうだろう?」
失敗を親に見つかって、怒られる心配をしている子供の様を連想させる雰囲気で天月に問い掛ける桐香。
(正直、キリカさんがたまに子供に見えるときがあるんだよな……。この場合、自分を抱き抱える俺の体力を心配しているんだろうな)
彼女の不安を取り除くため、ニコリと微笑みながら言葉を紡ぐ天月。
「ええ、勿論ですとも、こうやって抱えている俺が言うのですから間違いありませんよ。それに、キリカさんは食が細いんですから、もう少したくさん食べてくださいね」
「う、うむ、しかし、」
「それに、もう少し重くなってくれた方が、俺の好みですよ。まあ、俺の好み何ぞどうでも良いとは思いますがね?」
「こ、好み? …………ごほん、重くなってとか、アマツくんはもう少し言葉を勉強した方が良いだろうね! ふ、フォローしたつもりだろうが、余り良くできたとは言えないよ? まあ、でも、お礼は言っておくよ」
十人中十人が間違いなく、今の桐香を見ればそう判断出来るほど、機嫌を良くする桐香。そのチョロさっぷりに、端から見ていた心ですら不安を抱いている様子だ。
いや、どちらかと言えば心の不安は、桐香ではなく天月の方に向いているのだが、天月はその様なことを知るよしもない。
「かっはっはっは、そうですね、もう少し勉強しときます。まあでも期待しないで下さい。俺頭悪いんで」
「天月様の場合、頭が悪いのではなく、もとから中身が入っていないだけでは無いのですか?」
「かっはっはっは、泣くぞ?」
「どうぞご自由に」
「ああ、俺の背中でリア充が、リア充が……天よ! 何故人はこんなにも差が生まれるのだ! 俺が何をしたと言うのだ! 何故俺は持てないのだ!」
「「「変態だから (だろう?)(でしょう?)(ではないかね?)」」」
「ごっぱぁ!」
いつの間にか再び漫才のような雰囲気となっている。しかし、風太郎以外は今の異常事態を忘れた訳ではない。これは彼等なりのお互いを気遣った緊張のほぐし方の様なものだった。
「まあ、取り合えず起きている奴から情報収集宜しくココロ」
「かしこまりました、|我がご主人様(イエス、マイロード)。」
「あのさ、そろそろマジで退いてくんない?」
怒った女性はそれだけで怖い