青の章 第30話 既視感(デジャブ)
残念な美人って逆にポイント高くありませんか? 完璧に見える美人より好感が持てるのは私だけでしょうか?
筆者の戯言でした。
青の章 第30話 既視感
むぅ……。どうしたものか。
ハーピーを助け―――ゴホン、ゴホン。……ゴブリンという食料を手に入れる過程で、結果的に助かったハーピーだったが。
まあ、当然の如く意思疎通なんて出来る筈がない。何か言葉の様な規則的な鳴き声で語りかけられている気がする。が、それが本当に言葉なのか単に鳴き声なのか判別する術は無い。
ハーピーはゴブリンを倒した直後は思いっきり警戒して、女性がしてはいけない様な歯をむき出しにして眉間に皺を寄せて威嚇された。
まあ、俺もありがとうと言われる為に助けたんじゃな―――ゴホン、ゴホン。
とにかく、モノはついでと、木の幹に縫い付けられていた翼を、石斧を抜いて解放してやる。すると一先ず威嚇は無くなった。
それから、翼に穴が開いてしまった怪我はどうしようもないが、せめて足の怪我はと自分の四肢に巻いた糸を解いて、ハーピーの千切れた足を止血するように (と言っても血は殆ど止まっていたが念の為)糸を巻き、日が傾き、辺りがオレンジ色の光に包まれる頃、ようやく満足いく処置が出来た。
やはり人間の様な器用な手が欲しいな。今の俺の前足では細かい作業はとても時間が掛かる。
処置が終わる頃にはハーピーもだいぶ落ち着いたのか、ゴブリンをバリバリと頭から食べていた。なんか既視感があるな……。
一応、そのゴブリンは俺が仕留めたのだが……。
そして腹が減った俺が、もう一匹のゴブリンを食べていると、怪我をしていない方の翼で俺の体を突いたり、尻尾を鳥の足で掴んだり、仕舞には俺の頭を甘噛みしてきた。これも既視感があるぞ……。
まあ、美人にかまってもらってあまり悪い気はしないので、好きなようにさせている。
それよりも腹ごしらえが今は大事なのだ。今回は予想以上にスキルを連発してしまったので、空腹がいい加減限界に近いのだ。
それから食しゴブリンを腹いっぱいになり (と言っても半分も食べきれなかったのだが)残りを持って帰ろうとすると、すでに丸々一匹のゴブリンを平らげたハーピーがジーっと穴の開くほど、俺のくわえたゴブリンを見つめていることに気が付き、仕方がないのでゴブリンをハーピーに差し出した。けして無言の圧力に屈した訳ではない。単純に、もって帰る残りの体力がギリギリだったので、この場でハーピーにあげても問題ないと判断しただけだ。本当だ。
直ぐにハーピーはバリバリ、グチャグチャとゴブリンを貪る。胴は折れそうな程細いのに、どこにそれだけ入るのだろう?というか、骨ごと食べて胃とかは大丈夫なのだろうか? それに、脚を失い、翼も傷ついているのに、随分と元気だな?
鳥の体の部分は痛覚が鈍いとかなのか? コイツの生態には疑問が尽きないなぁ。
というか、……むぅ。
き、気まずい。
だってハーピーさん、何も身に着けていない全裸の状態なのだ。少々所ではない大問題だろう。
いや、理解は出来るぞ? そんな翼があったら服なんて着る事等出来ないだろうし、そもそも服を作れないだろうからな。
でもな、ハーピーさんすごくスタイルもいいのだ。胸囲はあまりないが、胴は引き締まっているし、お尻も引き締まっている。更に顔の造形も美しいし、絹の様な白い髪の毛が何とも幻想的だ。瞳は猛禽類の様な縦筋の入った金色。これは、容姿に関しては褒め言葉以外見つからないだろうこれは。
まあ、そんな美人も口元や全身にゴブリンの血や臓物で汚しているので、何とも言えない残念感が漂っているのは、俺の精神衛生上良かったのか悪かったのか。
取り敢えず、女性の体をじろじろ見るのも失礼なのでそろそろ退却――ではなくて、撤退――でもなくて、巣に帰ろう。それがいい。
ガシッ。
……むぅ?
尻尾が引っ張られる感じがして後ろを振り返ると、ゴブリンの死体を引き千切りながら、ハーピーさんが俺の尻尾を鳥の足で根元からがっしり掴んでいるじゃありませんか。
え? 何?
そんな思いを込めてハーピーの目を見るが、当の本人は俺と一瞬目を合わせると「ぴゅい」と上機嫌そうに笑って鳴き、再び肉の咀嚼を始める。
なんとなく、食い終わるまで放して貰えそうもない雰囲気を感じたので、仕方なく足から力を抜き、地面に寝そべる。
女性がああいう感じの雰囲気を出している時は下手に逃げてはダメだ。俺の前世で経験がそういっている気がした。と言うか下手に女性に反発して苦労した経験が圧倒的に多い気がする。
世界が変わろうとも、女性と言う生き物は慎重に扱わなければ危険なのだ。
ただ、こうして寝転がっているのも暇なものだな。
そうだ、ステータスでも確認するか。ゴブリン五匹も倒したのだ。もしかしたら何か新しいスキルでも身に付けているかもしれない。時間は有意義に使わないとな。
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ネーム-クライ アマツキ
種族 堅鱗蜥蜴
レベル 9
スキル-パッシブ
暗視
水氷弱体化
寒冷弱体化
青ノ魂
蜥蜴の鱗
蜥蜴の爪
スキル-アクティブ
尾の重撃
尾の瞬撃
尾の転撃
咢の一撃
自切
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……ん、おお、レベルが二つも上がっている。殆ど一、二撃で倒せるゴブリンを五匹倒してレベルが二つ、妥当なのかは判断できないが、一応喜ばしい事だ。
女神―――ヘルちゃんの説明では、格下相手ではあまり経験値とやらが入りにくいと説明されたが、ゴブリンは俺よりも格上判定なのだろうか?
あまり脅威には感じなかったが、奇襲とスキルによるゴリ押しに近い戦いだったからな。
先にゴブリン達に発見されていたら逃げるしかなかったし、スキルがなかったら一匹一匹を仕留めるのに時間を掛け過ぎて、手痛い反撃を受けていた可能性も十分あり得る。
まったく、強くなったとしてもまだ子供どころか赤子に等しいのだ。あまり無謀なことはしないようにしなければな。今回は多くの幸運が重なっただけ。
少しばかり強くなったことで調子に乗っていたかもしれないな。今後はもう少し慎重に……。とは言え、今まで俺なりに慎重に行動しても何故か厄介ごとばかり降り注いでいる気がするのだが……な。
何にしてもまずは強くなる。それからだな。……俺はいつ解放されるのだろうか?
補足
成体ゴブリンは天月より格下の生物ですが、武装している事で同格の生物扱いとなっております。
この世界では武相の有無も格の上下に関与します。それ以外にも、生物には当然個体差が有り得られる経験値も個体によって変わります。
例えば「マヌケゴブリン」は一応武装していましたが、「リーダーゴブリン」から得られる経験値の三分の一もありません。楽に狩れる個体程経験値は少ないのです。




