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LEGEND COLLAR~色彩の英雄~  作者: 水晶 蜻蛉
青の章 誕生の洞窟 編
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青の章 第23話 夢と決着

青の章 第23話 夢と決着

 

 ある夏の昼下がり。

 

 その日に店で提供する料理の仕込みを一通り終え、厨房の片づけをしていると厨房の扉を控えめにノックする音が聞こえた。

 基本的に従業員である清井心ことココロと弟の太陽ヨウは、厨房に俺が居る時にノックなどしない。

 心は俺に用がある時は厨房の中まで入ってくるし、太陽は大声で俺のことを呼ぶだろう。

 桐香キリカさんであれば、用事があるなら今もポケットに入っている携帯電話スマートフォンに電話かメールをしてくるだろう。

 

 ならばドアの外に居るのは―――。

 

 「どうした? なー」

 

 妹である七星ナーだ。

 七星には基本的に、厨房には入らない様に言い聞かせてある。

 言うまでもなく、店の厨房には危険なものに事欠かない。万が一大事な妹が怪我をする事態にはなって欲しくないからな。

 

 厨房から出ると、そこは客席が並ぶ店内だ。まだ営業時間ではないので、当然客はいない。

 

 七星は、麦わら帽子に真っ白のワンピース、それにサンダルという服装だ。まるで雪のような白い肌を持つ妹は、夏の日差しの下では直ぐに肌を真っ赤にしてしまうので、麦わら帽子や日焼け止めクリームが手放せないのだ。今七星は夏休み中で、朝に外に遊びに出掛けた筈だが……。

 

 俺は七星に目線を合わせるため、屈みもう一度話しかける。

 

 「お帰りなー、どうした? もうお昼食べるか?」

 

 ふるふると首を振る七星。「じゃあどうしたんだ? お兄ちゃんは丁度今仕込みが終わった所だから、一緒に遊ぶか?」と聞くが、またも首を振る。むぅ、少し寂しい。

 

 七星はぐっと握った手を俺も前に出す。その手には紐のような物を握っており、「ん?」っと俺は七星の手に持ったモノ・・をよく見た。

 

 「おお!?」

 

 なーが持っていたのは紐などではなく、細長い蛇だった。

 確かに俺の店の近くには山があり、蛇などはそう頻繁ではないが見かける事もある。

 だが妹がわざわざそれを見つけてしかもそれを持って来るとは思わなかった。そのため少し大きな声で驚いてしまった。

 

 「どうしたんだ? ……蛇、捕まえたのを見せたかったのか?」

 「…………」

 「むぅ。た、食べる、のか? その蛇を?」

 

 どうやら我が妹は、蛇を捕まえるために朝から外で蛇を捕まえに言っていたらしい。何ともワイルドな妹だ。危ないから是非二度としないで欲しい。

 詳しく話を聞くと、どうやら俺が昔仕事で外国に行っていた時、蛇を食べたことがあると言う話を太陽ヨウから昨日の晩に聞いていたらしい。それで蛇に興味を持った様だ。

 よく見ればワンピースの裾とサンダルが土で汚れている。山に入ったのだろう。虫刺されが心配だ。


 「あー、なーは蛇が食べたいのか?」

 「……」

 「お揃い……、むぅ。俺が蛇を食べたから、なーも蛇が食べたくなったのかー」

 「……、……?」

 「むぅ。蛇を食べるのは別に駄目じゃないが、そんなに小さい蛇だと食べるところ無いぞ?」

 

 そう、俺が食べたことのある蛇は胴体が親指と人差し指で作った円よりも太い、なかなかに食べ応えのあるものだった。七星が持っている様な靴紐と間違えるくらい細いものだと食べられる部分など殆どないのだ。

 

 「……」

 

 心底残念そうに項垂れる七星。よほど食べるのが楽しみだったのか。

 仕方ない。ここは妹のためにひと肌脱ぎますか。

 

 「じゃあ、蛇を食べるのは今度にしような?」

 「……?」

 「そう今度。後でキリカさんに蛇肉の取り寄せができるサイトがないか、調べてもらおうな? 流石にスーパーとかには売ってないだろうし」

 

 ぎゅぅ、と首元に抱き着いてくる七星。

 ……ちょっと待とうか? 小さいとはいえ蛇を握ったまま抱き着くのはちょっと待とうか?

 

 「じゃ、じゃあ、蛇さんと外でバイバイして来なさい。その後洗って、それからキリカさんの所へ行こうか?」

 「……(コクリ)」

 「ああ、ちょっと待ちなさい」

 

 早速駆け足で外に出ていこうとする七星を引き留める。

 

 「なー、蛇はな、尻尾じゃなくて首元を持たなきゃダメだぞ。尻尾を持つと噛まれるからな」

 

 素直に頷くと蛇の首元を掴む七星。まあ、すでに抵抗する力も残っていないのかぐったりした蛇にはそんな気遣い必要ないかもしれないが、今後また同じような事があった時のためにしっかりと教えておく。無い事を切実に祈るが。

 

 「というか、こういう時は蛇を店の中に持って来る事を起こるべきだっただろうか?」

 

 外に出ていく妹の後姿を眺めながら、小さく呟く。

 この後、七星は心に蛇を捕まえてきた事がばれ、そもそも女の子は蛇を捕まえないと叱られていた。

 後日、夕飯の食卓に蛇のスープとから揚げ、かば焼きが並んだのだが、心や桐香さんは微妙な顔をしていた。対照的に七星は満足げな表情をしていた。因みに太陽は無言で完食した。

 

 ―――――


 「ギゥゥ……」

 

 どうやら壁に衝突した際に気を失ってしまったようだ。しかし気を失ったのは一瞬だったようで、上半身? だけで突進してくる骨蛇が見える。何か、蛇に関する夢を見ていた気がするが……。

 

 ダメージで四肢に力が入らないが、戦わなければ死んでしまう。俺は歯を食いしばって頭を振り意識をはっきりさせる。

 走る余力もない俺は、そのまま骨蛇を待ち構える事にした。

 

 すぐに骨蛇は直ぐそこまで迫ってきた。どうやらそのまま突進してくるつもりらしい。まったくスピードを緩めない。……ああ、下半身? がないから頭を振りかぶるのにバランスが取れないのか。

 

 目前まで迫った上顎だけの骨蛇の頭部を、ほぼ真上・・に跳んで避ける。

 

 そのまま壁に衝突して砕けてくれないかと思ったが、そこまで馬鹿ではないらしく、どういう動きをしたのか骨蛇は壁際で急停止していた。

 

 だが、その急停止は絶好の隙だ。

 俺は残る力を振り絞り、骨蛇の頭部に、宙返り付きの『尾の一撃テイルアタック』を喰らわせる。

 

 骨蛇の頭部はせんべいが割れる様な軽い音を立てて、予想以上にあっけなく割れた。

 頭部を無くした骨蛇の上半身はピタリと動きを止めた。

 

 しばらく警戒して骨蛇の体を警戒していたが、上半身も下半身も砕けた頭部も動くことはなかった。

 蛇は執念深いと言うが、あそこまでとはな。

 

 

 余談だが俺は蛇の頭部があまりにもあっけなく割れた為、勢い余って頭から地面に突っ込んで、頭を引っこ抜くのに苦戦した。

 はぁ、カッコ付かないなぁ。


 天月の妹七星。食に関しては外見に反してかなりチャレンジャーです。どんなゲテモノでも好奇心で食べます。蛇の唐揚げは無事彼女の好物に加わりました

 弟の太陽は食卓に奇抜な食材が使われる事に関しては諦めています。

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