青の章 第13話 迂闊
最近蜥蜴を見なくなりました。
皆さんの周りには蜥蜴、居ますか?
青の章 第13話 迂闊
むぅ。
生まれた空洞―――いや、その呼び方では味気ないな。一応あそこより快適な場所が見つからなければ、あの空洞を拠点に活動するつもりなのだ。
何か呼びやすい……、「巣」でいいか。あんまり凝った名前にすると忘れそうだ。「巣」……なかなかどうして、素晴らしいネーミングだな。
巣から外へ出た俺を待っていたのは、ある意味予想通りの風景だった。
巣の天井や壁と変わらない、岩でできた長い通路。それも上下左右に緩やかにうねっており、実に歩きにくい。
唯一の違いといえば、巣の暖かな砂浜のような地面と違い、通路は冷たい岩だ。というかたぶん、壁や天井部分と同じ岩で出来ているのだろう。
そして見事に岩しかない殺風景な場所だ。
ゆっくりと這う様に(というか実際這って)進み始めてからおそらく三十分も経っていないだろう。それでも景色は変わらない。こうも何も無いと不安になる。冷たい地面のお陰で四肢も随分と冷たくなってしまった。
今のところ何もない一本道を進んでいるが、動物や虫どころか植物すら見ないのだが?
もしかしてこの洞窟の外に出なければ餌を確保しなければならないとか?
……いや、あきらめるのは早い。
思えば先ほど巨大な芋虫を見たじゃないか。あれほどの巨体、相当量の餌を必要とするはずだ。そんな奴がいる場所の周辺が、何もないわけがない。……あの芋虫がこの洞窟の食えそうなものを全て平らげでもしない限り。
……むぅ?
歩みを進めて行くと、通路が二手に分かれる分岐路にたどり着いた。
さて左右どちらの道へ行くか。
……右に行くか。
俺は自身の勘で進路を決め、歩き出す。
―――――
分岐路から五分も歩かない内に、初めて食べ物を見つけた。
いや、前の世界に生きていた頃だったら、殆どの人はそれを食べ物とは認識しないだろうモノ。
それは苔。そう苔だ。あの、森の中とか古い感じの池とかによくある苔。
それが所々通路の壁に張り付いている。
そろそろ歩き続けるのも体力的きつくなってきた時、やっとお目当ての食料だ。正直かなり嬉しいぞ。
こげ茶に僅かに緑が混じった様な苔は、食べてみると意外にも多くの水分を含んでおり噛むたびに多くの水気が染み出て来る。味はほんのりとした苦味があるだけだ。
なんだか湿気た緑茶の茶葉をそのまま食べているような感じだったが、水分が多い分少量でかなり満腹になった。
満腹になったことで少し眠気が出てきた。まだ幼体のこの体には悪いが、冷たく硬い地面にこのまま寝る訳にはいかない。
ここが安全とは限らないし、何よりこの通路は寒過ぎる。
基本洞窟は気温が低い物なのだろうが、巣があまりにも温かかったため余計に寒く感じるのだ。
更にはまだ体感で一時間もこの通路を歩いていないのに、脚の指先の感覚が寒さで怪しくなっている。
冷たい岩の地面に体温だけでなく気力まで奪われている気分だ。
あまり長居は出来ないと、俺は出来るだけ大きく破かないように数枚の苔を剥がし、背中に出来るだけ乗せ、乗せきらなかった分は口に咥えて巣への帰路に着いた。
むぅ、暖かな布団で眠れていた人間の頃が懐かしい。
―――――
重い瞼が閉じない様に、歯を食いしばりながら歩を進める。
まるで数日間一切睡眠を取っていないかのように、意識が朦朧とする。
四肢の感覚は喪失し、鼻先は激痛を感じるばかりで嗅覚は機能していない。
視界はぼやけ、本当に自分が前に進めているのか不安になる。
しかし、唯一正常に機能しているであろう聴覚が、歩を進める度に俺の四肢の爪が、地面を引っ掻く音と、尻尾が引きずられる音を拾ってくれる。
―――――
鈍くなっている意識の片隅で、俺は僅かな後悔を覚えていた。
食料である苔を背負い、帰路に着いた俺は、洞窟の通路に体温を奪われながら歩を進めていた時、自らの身体の異常に気が付いた。
先ほどまで地面の岩肌の冷たさで感覚が怪しくなっていた四肢が、突然痛み出したのだ。
そして四肢の痛みが全身の痛みになるのにそう時間は掛からなかった。
一瞬、先ほど食べた苔に毒でもあったのかと思いはしたものの、恐らくはこの寒さのせいであると気づいた。
寒さが原因と気づいたのは、痛みの原因について必死に考察していた際、そういえばどこかで寒さに自分が弱かったと意識させられるような事があったと思い出したのだ。
そして今俺の居るこの異世界で、情報源となっているのはどこぞの女神様とのやり取りと、その過程で知りえたこの世界独自のシステムとやら。
ステータスだ。
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ネーム-クライ アマツキ
種族 リザード
レベル 6
スキル-パッシブ
暗視
水氷弱体化
寒冷弱体化
不完全成長
スキル-アクティブ
尾の一撃
自切
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ステータスとやら (スキルシステムと呼んでもいいらしいが、短いほうが覚えやすいのでステータスと呼ぶことに決めた)には、恐らく身体の不調の原因であるらしい『寒冷弱体化』の文字があった。
前回確認した時よりも、何やら項目が増えている気がするが、前回は戦闘中だったので落ち着いて確認できなかった。さらにはヘルちゃんと対面して説明を受けたにもかかわらず、負傷の治癒を優先してしまったためにそれまで完全に忘れていたので記憶が曖昧だ。
まあ、ステータスにある『寒冷弱体化』と言う文字を見る限り、俺が寒さに弱いのであろう事が分かった。……というか、蜥蜴なのだから寒さに弱くて当然か。冬、蜥蜴なんかは冬眠するからな。
あとは『水氷弱体化』……たぶん水や氷も駄目って事なんだろう。
それ以外の事を今は考える必要はなさそうだと判断し、とにかく巣まで戻らなくてはと考え、何とか急いで分岐路までなるべく早足でたどり着いた。
しかし、やっと分岐路まで戻って来れたというのに、体調はよろしくない。
痛みは引いたものの、痛む前よりも四肢の感覚はなく、加えて意識が混濁してくる始末。
更には冷え切った脚の歩む速度は亀の歩みと表現してもまだ足りないほど遅かった。
それでも何とか、ここで死んでたまるものかと気力を振り絞り、今に至る。
まったく、迂闊なものだ。
俺はまだ、前の世界で人間だった頃の感覚が抜けきっていなかったらしい。
よくよく考えれば、未成熟で生まれた幼体の俺は、通常の何倍も生存率が低いはずだ。
ならば、常に気を張って、どうすれば最善かを考え続けなければならないのに。
その最善ですら、この世界では通じるとは限らないのに。そんな事も見落とすとは。
外敵を見事撃退したことで気が緩んでいた?
むぅ、…………。
…………。
……。
「グ……ギュウ……」
いつの間にか、自らの前進を知らせる音が無くなっている事に気づき、再び前へ前へと進み始める。
歩き続けなくては。歩き、続けなければ、いけない。
……出来ることなら、この世界でも風太郎や刃と馬鹿がやりたかった。
……出来ることなら、この世界でも桐香さんや心と冗談を言って笑いたかった。
……出来ることなら、この世界でもあの毒舌のレイヤが文句の出ない様な料理を食わせてやりたかった。
……出来ることなら、この世界でも元気な藍を見たかった。
……出来ることなら、この世界でも七星や太陽と暮らしたかった。
……出来ることなら、もう一度あの真っ赤な馬鹿をぶん殴ってやりたかった。
……ああ、そうだ
ヘル……ちゃん、と、ユグちゃん、を助けなくては、な。
そうだ、それ……に、兄弟たちの、墓を、……立てる約束……。
俺は、借りは返す……。
むぅ、なんだか暖かい……。
こんな稚拙な文を書いている私の作品を読んでくださっている皆さま、ありがとうございます。
先日600PVを達成しまして、家でニヤニヤしておりました。
こんな私の作品でよろしければ、今後とも「LEGEND COLLAR」をよろしくお願いいたします。
皆様の日常を少しでも彩れれば幸いです。
……「COLLAR」だけにね!
……
…………
………………すみません。




