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LEGEND COLLAR~色彩の英雄~  作者: 水晶 蜻蛉
青の章 誕生の洞窟 編
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青の章 第8話 困惑の勝利

肉食動物の肉は不味いと言うイメージですが、熊や鰐、蛇等美味しいお肉もあります。

筆者は鰐がお気に入りです。

青の章 第8話 困惑の勝利


 「ギァウ?」

 

 今の俺が前世の身体だったなら「はぁ?」と声に出していただろう。今の爬虫類(仮)の身体では、かすれたカラスの鳴き声の様な声になってしまっているが。

 

 異世界このせかいで生まれ変わり、爬虫類の様な見た目の生物(未熟児)として生まれて、初めての外敵の危機にさらされた俺は、三匹いた外敵の内、二匹を仕留め一匹を撃退(と言うか多分勝手に逃げただけ)し、見事生き残る事に成功した。

 前世の人間に、今の苦闘を分かりやすく説明するなら、『家で一人留守番をしていた幼児が、三人組の強盗を撃退した』と言ったところか。……何か、似たような洋画が年末にたまにテレビで放送されていた気がするが? 確かホームなんたらとか言う……。何だったか?

 

 まあ、とにかく簡単ではなかったということだ。

 俺の身体はボロボロだ。背中には鱗が剥がれ引っ掻かれた生々しい傷があるだろう。前世の俺にはなかった長い尻尾は半ばで折れ、砂浜の様な地面に俺の走った跡を刻んでいる。一度踏まれた腹部はいまだ鈍い痛みが残り、もしかしたら内臓にまでダメージが入っているのかも知れない。もろに骨の無い部分を踏まれたからなぁ。

 前足は捻った後、走り回ったせいで痛みが悪化している。先程殴られた際には頭部を殴られた。まあ、頭部は多少触ると痛いくらいで、別に歯が折れたりもしていない。

 正直少し身動ぎするだけでなかなかの激痛がする。

 

 むぅ、冗談抜きで重症だよな。良くまぁ生き残れたものだ。

 風太郎フウタ曰くゴブリンと言えば、ファンタジー作品では主人公などにとっては一山いくら程度の雑魚扱いが多いらしいがなぁ。

 

 生物を殺したことに対する罪悪感は無い。一応俺は料理人だから、生きた食材くらい普通に扱う。

 森や山に囲まれた田舎に住んでいるから猪とかなら仕留めた事はあるしな。

 俺の店の裏手には俺が作った家庭菜園レベルの畑が有る。ある時そこにイノシシが侵入して暴れまわり店に被害がる前に仕留める羽目になった。あの時は大変だった。

 猟銃なんて店に置いてないから、一m半の体長はあった猪を農具で仕留めたのは、今となってはいい思い出だな。その日以降食卓に牡丹肉が並んだ事も含めて良い思い出だ。

 

 っと、少し現実逃避していたな。

 これから待ち受けているイベントが、あまりにも気乗りしないものだから、思わず思考がずれてしまっていたらしい。

 

 さて、イベントとは、食糧を手にいれたのだから勿論食事だ。

 俺でも流石に人間は食べたこと無いが、人に近い形をした生き物を食べるに忌避感が無い。まあ、高校時代近所の外国人が営むカレー専門店で猿肉・・のカレー等食べた経験があるからなぁ。……そのカレーは正直微妙だった。

 

 俺はひとまず二匹のゴブリンの死体を、唯一の出入り口から一番遠い壁際まで、足を噛んで引っ張り、一匹ずつ運んだ。

 これがなかなかの重労働で、なんと体感で一時間近く掛かってしまった。

 そりゃ犬が人をくわえて運ぶ様なものなのだから、時間が掛かるのも当然と言えば当然か。

 

 ゴブリンを運ぶ途中、パキリと何かを踏んでしまった。足元に目をやると、小さく割れた白い卵の殻。

 ……むぅ、そうか、ゴブリン以外にも亡くなった命はあったな。

 

 流石に自分の身を守る事に必死だったあの状況下で、卵まで守る事は出来なかった。そして現実として幾つかの卵は砕かれ、中の小さな命は失われた。

 もし、卵の犠牲がなければ、ゴブリンを複数同時に相手しなければならなかったのだ。そうなれば恐らく高い確率で俺はゴブリンの腹に収まっていた筈だ。

 結果的に俺はまだ生まれていなかった兄弟を助けられなかった上、その兄弟に助けられた形になる。

 

 ……まだ生まれていいなかった兄弟達、これは借り・・だ。

 今はまだ俺が生きるのに精一杯だが、近い内に墓でも建ててやるからな。それで勘弁してくれ。

 俺は少しの間、目を閉じ兄弟の冥福を祈る。

 

 本当はすぐにでもゴブリンの肉を食って眠ってしまいたかったが、俺は散乱する卵の殻を出来るだけ集め、非常食として置いておく事にした。卵の殻は生肉よりは腐りにくい筈だ。本当は地面に埋めた方が供養になるのかもしれないが、余裕が無い現状俺の腹に残さず収める事で供養としよう。

 備えあれば憂いなし。世界と言うからにはどんな不測の事態が起こるかもしれん。

 それに、前世の俺は非常食を常に一カ月分備蓄していた。家族を守る身としてはその程度は当たり前なのだろうが、弟のヨウが言うには俺には貯蓄癖があるとの事だ。……今はその話はいいだろう。

 

 むぅ、そろそろいいか。

 では、いただきます。

 

―――


俺が先程疑問の声を挙げたのは当然理由あってのことだ。

 

 まず、俺が練った策はとても簡単。

 ゴブリンに呼吸をしにくくさせ、弱った所を仕留めると言う作戦だった。

 

 まずゴブリンの脚に噛みついたのは、脚に怪我を負わせる事でゴブリンの機動力を少しでも落とそうと言う狙いがあった。この作戦を成功させるためには、絶対に俺は捕まる訳にはいかなかった。

 その後はゴブリンと俺の追いかけっこだ。

 なるべくゴブリンの体力を消耗させ、転ばせる事が狙いだった。事前に脚に怪我を負わせていたお陰で追いつかれる事は無かっな。

 その後ゴブリンが壁に思いっきりぶつかったのは、確かに狙ってやったことだ。あのゴブリンが壁にぶつかった所を、俺は一度見ていた。だから、ダメ元でもう一度ぶつかって転んでくれたら楽だな~と思って、壁際で止まっていたのだ。

 ……まさか短時間で同じ過ちを二度もするとは思わなかった。本当に頭が弱くて助かったよ。

 もし、俺が不自然に止まっている事に気付かれたら、ゴブリンがある程度疲れるまで走り回り続けて、転ぶのを待つか、最悪俺が体当たりで押し倒すしかなかったからな。

 

 そしてこの作戦で一番重要な、ゴブリンの鼻を噛む。これもあっさり成功、と言っても一発殴られたが……。

 鼻を噛んだのは、呼吸を封じるためだ。鼻を噛まれたからどうだと思うだろうか?

 鼻と言う器官は、実は多くの生物にとっては急所なのだ。結構神経とかも集中しているらしいな。

 人間はたとえ鼻が詰まっても口で呼吸出来る。しかし、実は口呼吸と言うのが出来るのは人間だけなのだ。殆どの動物は鼻呼吸しか出来ず、ライオンなんかも狩りで獲物を仕留める際は獲物の鼻を噛んで窒息させるそうだ。この情報は昔、太陽ヨウ七星なーを連れて動物園に行った際に、ライオンの檻の隣にいた飼育員のおねーさんに教えてもらった事だ。人間だって鼻が詰まっているときに全力で運動しても、普段通りの実力は発揮できないのだそうだ。

 

 これを聞いた俺は、暴力を伴う喧嘩があったときはまず始めに相手の鼻を頭突きやら拳やらで鼻血を出させる事にした。これが意外と効果があって―――この話は別にいいか。

 

 とにかく、俺はゴブリンの鼻を潰し、呼吸をしにくくさせることで持久力を奪い、体力の消耗を更に加速させるつもりだった。

 俺の作戦ではその後、怒り狂ったゴブリンが俺を追い回し、疲れ果て俺を追う事を諦めた頃に攻勢に出て勝率を挙げるつもりだったのだが……。

 

 ゴブリンは俺をすぐには追わなかった。俺はこの時点でゴブリンが慎重になり、俺の行動に警戒心を抱いているのかと考えた。故に挑発と俺の居場所を教える為に何度も鳴き声を挙げたのだが、しかし一向にゴブリンは俺の方に向かってこない。

これは作戦が失敗したか? と思っていたところでゴブリンが走り出した。俺の居る方とは逆に。


 そこからはまるで、立場が逆転したかのように俺がゴブリンを追いかける追いかけっこが始まった。

 何故今更逃げを選択するのか、理由は分からなかった。状況を少しでも把握する力があるのなら、仲間がやられた時点で不利を悟って逃げ出すだろうに。

 あれか? 意外と強く頭を打って脳震盪でパニックでも起こしたか?

 しかも、逃げながら勝手に壁に突っ込んで行ったり、転んだり、終いには突然倒れて痙攣し始めた。まさかと思い近付いてみると、案の定泡を吹いて絶命していた。

見れば鼻には鼻血が固まって鼻の孔を塞いでいたのだ。


 どうやらゴブリンも例に漏れず、口呼吸が出来なかった様だ。人と同じ様なシルエットの生物の上、まさかファンタジーの生き物が酸欠で死ぬとは、正直意外だった。普通死ぬまで気が付かない物だろうか?


 と言うわけで、途中から俺の作戦と言うよりも相手が勝手に自爆した形だったので、疑問の声を挙げてしまった訳だ。




 因みにゴブリンの肉の味は予想通りと言うべきか、とてつもなく不味かった。

 なんだか獣臭いと言うか泥臭いと言うか……、肉食の獣は大抵アンモニア臭がしたり硬すぎたりと美味くないものだが、ゴブリンはそれに輪をかけて不味かった。まあ、肉質は俺の歯で噛みきれない程硬い訳ではなかったので、それが救いと言えば救いだったが。まあ体色が緑に近い人型生物が美味しい等と、あまり期待してはいなかったがな。それでも俺は気乗りしない食事を続けた。水分補給にゴブリンの血液は固まる前に飲める限り飲んだ。血も臭かったが、肉程ではなかったのが救いだ。


 結局、俺はゴブリン一匹の肉の四分の一も食べきれず食事を終えた。口直しに少しだけ卵の殻を食べ、地面に直接横になり眠りにつく。

 砂浜の様な地面は、まるで砂風呂の様に暖かくすぐに俺は意識を手放した。

 

 


因みに猿は筆者の舌には受け入れられませんでした。

天月の様な生肉を平気で食べれる舌が欲しいですね。

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