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LEGEND COLLAR~色彩の英雄~  作者: 水晶 蜻蛉
青の章 誕生の洞窟 編
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青の章 第5話 小鬼(ゴブリン)

異世界と言えば定番のモンスター・ゴブリン。

最近の物語では魔物や悪い小人の様に描かれる事が多いですが、ヨーロッパの民間伝承では悪戯が好きな妖精扱いなんですよね。

因みにヨーロッパの民間伝承ではゴブリンは悪い妖精の総称。ホブゴブリンが善い妖精の総称なんです。

青の章 第5話 小鬼ゴブリン

 

 四つん這いになっても俺より体高が倍近くもある巨体が近づいてくる。

 その様はなかなかの迫力だな。

 

 素手ゴブリンは、土と言うより砂地に近い地面を、手探りしながら近づいてくる。

 幸いまだ俺の正確な位置に気付いてはいない様子だが、それも時間の問題だろう。

 

 ではその少なく貴重な時間で、俺の切れる手札の確認でもするか。

 

 俺がこの状況をどうにかするためには、少なくとも近づいてくるゴブリンくらいはどうにか突破、もしくは迎撃、出来ることなら向こうがそうしてくる様に、逆に食料として捕食出来ればなおよし。

 

 その為には状況の整理だ。

 まず、敵は三匹、内一匹は洞窟の出入り口から動かない。そして現在、二匹が武器を持っている。伏兵は恐らく居ない―――と言うかもし居たら詰みだ。

 そして、俺の最大の利点は、この暗い洞窟内でも視界が確保できており、向こうはほぼ手探り状態だと言うこと。後はゴブリンの認識では、餌でしかない俺は大して驚異とは認識されていないだろうと言う予想が立てられる事だな。

 もし俺をある程度危険な存在と認識していれば、流石に不用意に近付いたり、ましてや掴み掛かったりなどしないだろう。

 ……まあ、単純にゴブリン達の頭が悪いだけかも知れないがな。先程など壁に突撃していた個体もいたことだし。


 更には、敵はほぼ無傷なのに対して俺は尻尾を骨折、その上前足を痛めているな。

 尻尾は見る限り、出血こそ無いが明らかに途中で変な方に曲がっている。ああ、石斧が当たった部分がへこんでいるな。これなら爬虫類っぽく尻尾を切って逃げた方が―――?


 そう言えば、神様の言ってたスキルとやらに自切とかあったな。自切とはたしか蜥蜴が尻尾を、タコが脚を、自ら切り離して囮にする行為の筈。


 もしかして、出来るのか?

 話では、スキルはステータスが出ている状態で詳細がどうたらって言ってた気がする。

 ……、いや、止めよう。

 訳のわからない力に頼るよりは、生まれながらのこの身体の力に掛けた方が、もし失敗して死んでも納得できる……気がする。


 もう数秒で素手ゴブリンは俺に触れられる距離まで近付く。

 ―――恨みは無いが恨んでいいいぜ、ゴブリンさんよ。

 少なくとも一匹は道連れにしてやるよ。かっはっは。覚悟が決まれば気楽な物で、先程のパニック等かけらも俺の中に残っていない。


 そんな事を考えている内に、もう素手ゴブリンの手が、俺の目の前まで来る。

 俺はなるべく音を立てないよう脚を踏ん張り、一気に素手ゴブリンの右手……その手首を狙い飛び掛かり、そして力の限り強く噛みつく!!


「グギャァギャッ!?」


 素手ゴブリンは突然の痛みに驚き、腕を振り回す。

 すると当然、手首に噛みついている俺も腕と一緒に振り回される。

 俺が軽いのか、ゴブリンの腕力が高いのか、またはその両方か、俺はかなりの勢いで振り回され、目が回る。

 だがここである程度の手傷を負わせなければ、複数対一の状況で勝ち目はない。少なくともこの素手ゴブリンが武器を握れなくなればいい。出来れば動脈でも切れて、失血死でもしてくれたら儲け物なのだがな。


 口内に鉄の味が広がる。どうやら出血をさせることは出来たらしい。俺は前足で素手ゴブリンの前腕部分に爪を突き立てて少しでも多く出血させる。

 素手ゴブリンは振り回すだけでは俺が離れないと悟ったのか、俺を地面に叩き付け始める。

 しかし、地面は砂浜の砂に砂利が混じったようなもの。かなりの衝撃は感じても痛みは殆ど感じない。

 むぅ、やはりあまり頭は良くないようだ。


「ギャゴァァ!」

「ゴッ!?」

 

 素手ゴブリンは俺を地面に叩き付け、そのまま俺の腹部分を思い切り踏みつけた。

 これには俺も息がつまる。が、なんとか口は離さなかった。俺、偉い。

 しかし素手ゴブリンは俺を踏みつけたまま、俺が噛みついた状態の右腕を引っ張りだした。すると俺の歯に少しの肉を残し、腕を抜いてしまった。

 

 今気が付いた事だが、今俺の歯は肉食系の動物に多いノコギリのような刺々しい形状らしい。

 その証拠に、素手ゴブリンの手首付近の肉が凹凸のある形でえぐれている。

 なんともグロテスクな光景ではあるが、言っておくがお前が無理に引き剥がしたから、かえって重症になったんだぞ? そんなに忌々しそうな顔をするなよ。

 俺だったら腕を引き抜くより、相手の顎を開かせるか砕くな。

 

 素手ゴブリンはえぐれた部分がかなり痛む様で、傷口を押さえながら目の前で地面を転げ回っている。

 ……当然、傷口に砂が入っているな。実に痛そうだ。

 俺は口の中に残る血肉を飲み下しながら、そんな他人事のような(実際他人事だ)事を考えながら、他のゴブリンの様子をうかがう。

 今の内に素手ゴブリンに止めを刺したいが、大きな奇声を挙げながら転げ回る音でこちらに注意を向け、仲間を助けに来るのでは? そう考えたからだ。しかしそれは杞憂だった。

 

 石斧ゴブリンは新しい卵を割るために、石斧を卵に降り下ろしている。周囲には卵の殻が、少なくとも二個は転がっている。食うの早いな。

 見張りをしているゴブリンは、素手ゴブリンの奇声に驚いている様だが、不用意に近付いたりせず、近くの壁際に移動し、壁を背に石斧を構えて警戒――いや、あれは怯えているのか。見張りのゴブリンは素手ゴブリンや石斧ゴブリンよりは賢い様だな。壁を背にしている辺り、暗闇の中ではいい選択指だ。少なくとも食事を続ける程バカではない。

 

 むぅ、まあ敵が愚かなのは良いことだ。仲間意識が薄い連中で助かった。

 俺は素手ゴブリンを仕留めるために歩を進める。今なら足音など気にせずに近づける。

 

 転げ回るのを止め、腕を押さえてうずくまる素手ゴブリンの喉元に一気に歯を突き立てる。

 そして全身を使って首を捻って見るが、首は折れない。

 思わず舌打ちしたくなる気分になりながら、それでも力を緩めることはない。素手ゴブリンは起き上がり、俺の胴体を片腕で掴み引き剥がそうとしている。

 だがしかし、先程俺を振り回した時のような力強さは無く、俺が引き離される事はない。

 

 むぅ、これではもう一度自分の肉ごと俺を引き離すのを期待する事は出来ないな……。それが叶えばかなりの出血が望めそのまま早期決着が望めるのだが。まあそれが出来ないほど弱っていると言う事か。

 

 突然、素手ゴブリンは弱く俺の身体を引っ張るだけだった腕を、負傷している腕もあわせて俺の身体を爪で引っ掻きだす。

 ゴブリンの爪は伸び放題の上、人間のそれよりは獣に近い厚さと固さがあり、そんなもので引っ掻かれる俺の身体はすぐに引き裂かれる。

 最初は鱗が剥がれているのだろう感覚、それに次いで肉が少しずつ削れる痛みが俺を襲う。

 

 「ヴゥゥゥゥ!」

 

 少しずつ増す痛みに呻きながらも耐えるしかない。お互いが血を撒き散らしながら生きる為に全力で足掻く。

 

 そして素手ゴブリンの抵抗は、一分と持たずに終わった。

 再びうつ伏せに倒れた素手ゴブリンは、二度と起き上がる事はなかった。

 

 

 念のためしばらく喉元を噛み続けたらが、少し痙攣した後、ピクリとも動かない素手ゴブリンから口を離す。

 口を離した場所にはくっきりとした歯形が残っており、出血も多少していたが、それは死因ではないだろう。もしかしたら気道が塞がった事による酸欠――窒息死かもな。

 殆どがむしゃらに行った噛み付きが上手くゴブリンの気道を塞げたのかもしれない。

 

 何にせよ、残り二匹だ。

 

 そう思ったが、見れば見張りゴブリンが居ない?

 石斧ゴブリンは我関せずを貫き、未だに食事中だ。

 

 見張りゴブリンは逃げたか……。

 少し賢い奴だった様だし、まあ仲間、……同族が殺られたと勝手に判断したなら、納得できる。

 これは幸運だな。

 

 あと二匹もいると考えると憂鬱だったが、あと一匹なら話は別だ。

 一匹は殺したし、こちらに注目していない以上逃げても良いが、これからの事を考えると食糧はいくらあっても足りない。

 多少負傷してしまっているから、しばらくは休息したいし、その間狩りは出来ないだろう。

 

 今の俺が未熟児っぽい事を考えれば、栄養は成長するために欲しいしな。

 

 そうと決まれば作戦を考えよう。

 先程は力任せだったが、それではこれからに繋がらない。

 この身体でどこまでの事が可能か。

 

 ……かっはっはっは。

 これから命のやり取りをするってのに、どうしてか気分が高揚する。何故だろう?

 負傷しているから、アドレナリンでも出ているのか?

 まあ、何でもいい。

 

 食事かりの時間だ。


どうしても自然界の食物連鎖の描写となると血なまぐさくなってしまいますね。

でも自然とは残虐な一面もあるからこそ美しい物だと筆者は考えています。(ただ残酷な描写が好きな訳ではありません、念のため)

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