青の章 第4話 突然の来訪者
天月はゲーム等の知識は同い年の風太郎や刃よりも大分少ないです。
そもそも天月は風太郎等と遊ぶ時以外はゲーム機器に触りすらしません。
青の章 第4話 突然の訪問者
俺が睡魔に敗北して、どのくらい時間が経ったのだろうか?
洞窟の中は光が届かない、その為時間の感覚が曖昧だ。
だから起きても代わり映えの無い景色が広がっている物だと思っていた。
しかし目を覚ました俺の視界は、ある意味で予想外の、そしてある意味で定番の生物を捉えた。
体に対して比較的大きな頭部、そしてそこから生える尖った大きな耳、あばらの浮き出た胴体、細長い腕には前世の石器時代。それを記した資料にでも載っていそうな石斧を持っている。腰元に何か獣のものだろう皮を巻いていて、それ以外には一切衣服と呼べるものを纏っていない。
そしてその生物の最大の特徴である、緑色の皮膚。
ファンタジーと言うジャンルの作品を、好んでご覧になったことのある方ならもうお分かりだろう。そうゴブリンだ。
ゴブリンは、元はある地上でイタズラをする妖精と言い伝えられていたそうだが、今日では何故か凶暴な獣の様に描かれる作品が多い―――まあ、これは中学時代、ファンタジーマニアである風太郎の奴に教えてもらった受け売りだが。
そしてそのゴブリン達は、俺のいる洞窟の唯一の出入り口であろう場所から、慎重に辺りを見渡しながら入ってくる所だった。
むぅ。
心の中で思わず呻いてしまった。
先も述べた通り、ゴブリンと言う生物は物語中では大抵は悪役だ。
それも、単独では弱いが集団で真価を発揮する代表の様なもの。そして今まさに目の前に集団でいるのだ。
しかし、一部の物語ではとても友好的な生物としても描かれる。
だからこそ迷う。
相手がもし友好的な生物だったら?
意外にも話の分かる奴らで、今後友好関係を築けたなら?
―――いや、考えるまでもない、無理だろう。
そもそも俺に対して友好的な生物なら、物騒な武器を持って人の―――今は爬虫類(仮)だが―――の棲み処に入ってくるはずがない。
恐らく、俺の様な赤ん坊や卵を食らいに来たと見ていいはずだ。つまり―――敵。
敵、それを意識し同時に思考を切り替える。
すっと、感情が冷えるような感覚に包まれる。未だに少し寝ぼけていた頭が完全に起きた様だ。
……むぅ、今の俺には二つの選択肢がある。
一つ、このまま殻の底へ身を隠すなり、隙を見て逃げるなりで自分の生存を優先する。
二つ、何とかゴブリン達を撃退、もしくは殲滅し安全、棲み処、―――そして、余り考えたくないがゴブリンと言う食料を確保する。
……、前者だな。そもそも相手は複数、しかも武装付きときた。まあ前世なら素手で三人(匹?)なら何とかなったかも知れない。これでも人間だった頃は背が高かったからか争い事は強かった。
でも今は産まれたばかり、それも未熟児、おまけに爬虫類(仮)だ。
流石にこれでは勝ち目は無い様に思える。あいつらにまた会うまでは死ぬ訳にはいかないんだ。
そうと決まれば早速、先ずは身を隠して―――。
『生体の意識を確認、新着メッセージを再生します』
「ギャヴゥ!?」
……何か今、鶏の首を締めた様な音が聞こえたのだが、まさか俺の声か? か、可愛くねぇ。
じゃなくて! は? 何? メッセージ? じゃなくて!?
洞窟の出入り口付近にいたゴブリン達は、今の声が聞こえたらしく揃って俺に顔を向けている。
しばし目を見開いた後、奇声を上げながら石斧を振り回し走ってくる。目標は勿論俺。
近付いてきたゴブリンは予想以上に大きく―――いや、俺が小さいのか。とにかく体格差がひどくある。例えるなら人間と大型犬程に違う。
うぉぉい!? さっき勝ち目はないって結論がついたばっかりなのだが!?
と言うか誰だ! 俺に急に話し掛けて来たのは!?
『あー、んん、こ、こんにちわ! えっと、そうだ、ゆ、ユグドラシルです』
再び声が聞こえる、その声はかなり震えていてどもりまくっているが、確かに俺―――俺達に助けを求めてきた神様の片割れのものであった。声が震えているのは緊張だろう。あの可愛らしい神様が緊張しながら懸命き話してくる姿を思うと、何処か微笑ましい感情が溢れる。―――こんな状況じゃなければな!
一番先に俺の元にたどり着いたゴブリンは勢いのまま石斧を放りかぶり、それを降り下ろす。
俺は全力で殻の底を脱出、地面に体を投げ出す。
直後、俺の食料兼部屋代わりだった卵の殻は粉々に割れ、破片が飛び散る。
『このメッセージは、わ、私達のお願いを快く受け入れてくれた、大切な皆様にお届けしております!』
殻から飛び出した俺を見つけた二匹目? のゴブリンが石斧を持つ方と逆の手で俺を捕まえようと手を伸ばす。それを股下を潜って避ける。
本当は横に避けて反撃したかったが、この爬虫類(仮)の体の作りでは真横に移動するのは辛いようだ。辛うじて前進する方向をある程度調整できる程度。先程卵の殻から飛び出る際に、真横に跳ぼうとしたが前足首と前足の付け根に痛みが走った。
視界の端に、最初のゴブリンが腕を振りかぶっているのが見える。
ぐっ、まずい!
『まずは、この世界で生きる上でとても大切になるシステムについて説明します!』
最初のゴブリンが投げた石斧が俺の尻尾の半ばに当たる。
パキンっと、骨の折れる嫌な音が俺の体内から伝わる。そして遅れてやってくる鈍痛。
余裕が無い。策も無い。
意外と言うべきか、連携は出来ているようで二匹が俺を仕留めようと動いている中で、最後の一匹は出入り口付近で辺りを警戒している。
そして俺を探すように二匹のゴブリンが辺りを探るようにキョロキョロとしている―――?
『この世界には主神様の作ったシステム、スキルシステムとレベルシステムが存在します』
神様の声を聞く余裕が出来る。スキル、レベルね。これもまた風太郎からよく聞いた言葉だな。
今分かったが、ゴブリン達は目が悪いらしい。正確には夜目が効かないのだろう。
俺は何故か普通に見えるが、ここは光源のない洞窟の中、当然真っ暗だ。
最初のゴブリンの一撃は、恐らく俺が声を上げたせいで大体の居場所がばれた為だろう。
二匹目は一匹目の後を付いてきて、ギリギリある程度の視界に俺を捉えて、もしくは俺の出した音でも聞いて、俺に掴み掛かった。そして石斧の投擲は運悪く当てずっぽうが当たったって所だと思う。
現に、今は物音を立てないようにしている上にある程度ゴブリン達と距離があるので、俺を見失っているのだろう。
むぅ、この状況で視野を確保できているのは大きな手札だ。どうにか逃げることも出来るかも知れない。
『スキルシステムとは、スキルと言う生物の持つ特性、特技等を示すものです。一度、自分の頭の中にスキルシステムと念じて見てください。ステータスでも構いません。』
と言うか神様よ、この状況どうしてくれるのだ?
貴女のせいで俺、集中乱されるわ、敵に気付かれるわ、散々なんだが。一応貴女達を助けると言う名目でここに居るのだが?
で、何? スキルシステム? ステータス? 横文字が多すぎるぞ、勘弁してくれよ。
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ネーム-クライ アマツキ
種族 リザード
スキル-パッシブ
暗視
水氷弱体化
寒冷弱体化
不完全成長
スキル-アクティブ
尾の一撃
自切
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何だか妙な文字列が頭の中に描かれたが、今はそんなものをじっくり読んでいる暇など無い。
……うん、いや、何かよく風太郎がやってるアールピージーのゲームみたいだな。
あと、多分だけどこれろくなこと書いてないだろう。いくら俺が頭の出来が良くないからって、それぐらいは分かるぞ。
むぅ、不満ばかりも言ってられん。この状況が好転するならなんでもいいさ。だから説明が有るなら早くしてくれ!
『今ご覧になっていると思いますが、スキルにはパッシブとアクティブと言う種類があると思います』
……ああ、確かにあるな。
ゴブリン達は周囲を警戒しながら、他の卵を物色しはじめている。
出来るだけ動かない様、注意をはらいながら続きを聞く。
骨折しているだろう、尻尾が痛んできた。歯を食いしばって痛みに静かに耐える。
幸い骨折の痛みなど前世で飽きるほど体験している。この程度の痛みを耐えるなど朝飯前だ。
『パッシブと言うスキルは、常に効果が発揮されているものだと考えてください』
どうやらゴブリンは、卵を割って中身を食べるつもりらしい。一匹は俺に石斧を投げてしまっているので素手で卵を殴っているが、もう一匹は石斧で卵を殴っている。卵は意外にも外からの衝撃に強いらしく、まだ割れる音は聞こえない。
『アクティブと言うスキルは、意識して使わなければ発動しない、皆様の言う必殺技のようなものだとお考えください』
かっはっは、まるでゲームだな。
これはアールピージーとかエフピーエスとか、ゲームをやりこんでいると言う風太郎や刃には、随分と分かりやすい説明なのだろう。
『他にもスキルの種類はありますが、それはそれらを獲得した時点で今のような通知が個々に伝わります。スキルの獲得についてですが、基本的にスキルはそれに関連する行動や経験を積むことで獲得することが出来ますが、スキルは所持しているスキルが多いほど新しいスキルを獲得しにくい傾向にあり、またスキルによってはいくつもの条件をクリアするなど多くの―――』
……! っち。
石斧を持ったゴブリンは、卵を割ることに成功した様だ。
手に持った、殻から取り出した小さな影をためらいなく口に入れ、噛みちぎる。それを見た素手のゴブリンは石斧ゴブリンから獲物を奪おうと迫るが、石斧ゴブリンはそれをすぐに察し、部屋の角へ走って逃げる。……まあ視界が悪い中走ったものだから、思いっきり頭を壁にぶつけていたが……。
しかし、素手ゴブリンは仲間から獲物を奪えないと悟った様で、自分の石斧を探すように四つん這いで俺の方へ迫ってくる。
石斧は、俺から離れた場所にあるが、投げた方向を忘れたのか、素手ゴブリンは俺の方へ真っ直ぐに這ってくる。
先程から頭の中の声に集中しようとしているが、目の前の脅威に集中しているせいで半分は耳を素通りしていく。
むぅ、ピンチだな。
風太郎「アマツ! 新作のゲーム手に入れたぜ!」
天月「むぅ? 遊ぶか? 機械のゲームは得意ではないのだが」
風太郎「これ、ジャンルはRPGゲームでSFの世界でFPS視点のゲームなんだ。グラフィックが綺麗らしくてな~」
天月「すまないが日本語で話してくれ。何一つ分からん」




