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LEGEND COLLAR~色彩の英雄~  作者: 水晶 蜻蛉
黄の章 憧れの異世界 編
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黄の章 第20話 説得

黄の章 第20話 説得

 

 「や、やあ。スフレちゃんでいいんだよね? 俺は風太郎。フウタと呼んでくれ。後ろに居るのは桐香さんと言うんだ」

 「……」

 

 俺は件の蜘蛛少女と話し合いをしようとしている。桐香さんは警戒されるので俺の後ろに控え、万が一蜘蛛少女が襲い掛かって来た場合、俺を守ってくれる手筈だ。

 蜘蛛少女は彼女の脚が届く範囲まで行かねば威嚇もされない。俺ならな。この点は天月のファインプレーのお陰だ。

 だけどそれは警戒されないと言う訳では無い様で、じっと俺達を見詰めるだけで口を開かない。

 えーっと、もっと簡潔に話すか。

 

 「俺達はそこに居る天月の友達なんだ。分かるか? ト・モ・ダ・チ」

 「アマツ、は、スフレの、ともだち」

 

 ! おお! 何とか会話できそうな雰囲気だ!

 

 「あー……。桐香さん、この後どうしたらいい?」

 「天月君の様子を見せて欲しいと伝えればいいのではないかい?」

 「アマツの様子を見せてほしい。近寄ってもいいかい?」

 「……だめ」

 

 駄目かー、そうかー。まあ断られるとは思っていたけどな。だけどな、はいそうですかって諦める訳にも行かないんだよな。

 薄暗い洞に横たわる天月の身体は呼吸によって規則的に動いている。まだ生きていると言う事は分かるが、普通に会話していても起きないと言うのは大丈夫じゃなさそうだ。

 

 「えーっと、何で駄目なのか教えてくれないか?」

 「……」

 

 沈黙されると焦るからなんか言ってくれよ。会話で無視が一番つらいんだよ!

 ……この調子で話しても駄目そうだな。なんか話題、話題を変えてそこから糸口を掴もう! こういう時は共通の話題から攻めるのが定石って、ネットの掲示板でも言ってた!

 

 「スフレちゃんは、その、アマツと仲が良いのかい?」

 「なか?」

 「あー、アマツとは普段どんな風にしている? 何と言うか~、あるだろ? 一緒に居る時にさ。あいつ結構面倒見良いし」

 「……アマツ、ごはんくれる」

 

 ほう、天月の奴女の子に餌付けしているのか? 日本だったら「お巡りさんこっちです」案件だな。

 それに彼女には理解できない単語もあるらしい。まあ、俺の兄弟も難しい言葉なんて離せない。二匹ともお父様達の会話から語彙を得ていたからなぁ。この子も似たような物なのだろう。

 これは口調もそうだが、言葉選びも優しく心がけねばならなそうだ。

 

 「他には? あ、遊んだりとか?」

 「アマツ、あそんでくれる。ことば、おしえてくれる」

 

 成程、成程……。やっぱり人間の女の子みたいに扱っている訳か。

 多分恋愛的な意味じゃなく、単に懐いている感じだろうか? 俺のギャルゲーの経験がそうささやいているぜ!

 天月を全面に出せば、この交渉行けると見た!

 

 「アマツは好きか?」

 「うん」

 「そうか、……俺も、桐香さんもアマツが好きだ」

 「……うん」

 「アマツは、怪我をしているよな。血を流して、苦しんでる」

 

 蜘蛛少女―――いや、スフレちゃんは視線を下に落とす。表情は全く変わらないが、僅かに下唇を噛み締めているのを、俺は見逃さない。背後で桐香さんが身動ぎする気配を感じる。

 

 「なあ、スフレちゃん。俺達はソイツに元気になって欲しいんだよ。スフレちゃんもアマツに元気になって欲しいだろう?」

 

 首を揺らしたり、手を握ったり、少し身体に動きが出て来た。

 彼女だって理解しているんだ。このままでは天月が死んでしまう可能性があると。だから必死で守っている。彼女が出来る最善の方法で。

 見た目はモンスターでも、しっかり心を持っている。優しい心だ。

 思えば俺の言葉も嘘や裏を警戒する事なく、素直に答えていた様に思う。現代日本の小学生とかの方がよっぽど疑うと言う事を知っているぜ。

 

 「……」

 

 口を開き何か言おうとして止める。そんな仕草を何度か繰り返している。

 こんな時は黙って次の言葉を待てと、昔天月に言われた事がある。俺はそれを実践する。唾を飲み込む音さえやけに大きく感じる静寂が続く……。

 やがて、つたない言葉が紡がれた。

 

 「アマツ、げんき、ない」

 「ああ」

 「アマツ、おきない」

 「そうだな」

 「……アマツ、スフレ、って呼んでくれない」

 

 ……ぐぅ、この子滅茶苦茶健気じゃないか!

 そうだよな。俺達を近寄らせないのも、弱っている天月を守ろうとしているだけだもんな。分かる。分かるぞ。

 

 「なあ、そこに居る桐香さんがアマツを見てくれる。アマツを元気にしてくれる。……アマツを見せてくれよ」

 「……」

 「友達が死んだら悲しいだろう? 俺だってソイツの友達だ。死んでほしくない。なあ、頼むよ」

 「私からも頼む。彼を治療させてくれ」

 

 がしがしと足で地面を突くスフレちゃん。何度も自分の頭を掻いたり、髪を掴んだりといよいよ落ち着きがなくなって行く。パラパラと舞い落ちる桃色の髪の毛が、彼女の苦悩を嫌でも伝えて来る。

 

 「……ん」

 

 恐る恐ると言った様子で木の洞から出て来るスフレちゃん。

 俺はその姿に安堵する。後ろから聞こえたため息と俺の吐き出したため息が重なる。

 彼女の決意は無駄にできない。絶対にもう一度、元気な天月と会わせてやるからな。

 

 「桐香さん」

 「分かっている」

 

 スフレちゃんと入れ替わりに木の洞に入り、天月の様子を見る桐香さん。スペース的に俺や兄弟達も入れそうではあるが、こと治療・看病に関して出来る事が無く邪魔にしかならないので、兄弟達と外で待つ事にする。

 今日は天気もいいし、このまま昼寝をするのもありだな。

 

 不意に木の洞を外から覗き込んでいたスフレちゃんと目が合う。

 

 「アマツ、がね~」

 「うん?」

 「たべちゃだめって、いってた」

 

 ……? ああ、確かに。天月は気を失う前にそんな事言ってたな。

 ちょっとまて、スフレちゃん? 何で口から涎垂らしているのかな?

 

 「スフレちゃん?」

 「たべちゃ、だめ?」

 「駄目だよ!? 駄目に決まっているだろう? ほ、ほら、俺もアマツの友達だからな? 俺を食べたらアマツに怒られるぞ?」

 「う~~~。わかった」

 

 やっぱり俺は食料として見えてるのかよ! そういや彼女、昨日からずっと天月に付き添っていたな。もしかしなくても空腹ってことか?

 って、今度は兄弟達をロックオンしている!?

 

 「いいか? 俺と、そこに居る二匹と桐香さん。これらは食べちゃ駄目だぞ? いいな?」

 

 残念そうに項垂れるスフレちゃん。無表情ながら暗い感情が透けて見える様だ。そんなに俺達が食えないのが残念かよ! さっきまでのシリアスなやり取りは何だったんだよ!? 情緒バグってるのか!?

 

 「あのね~」

 

 人差し指で桐香さんが指される。今度はなんだ?

 

 「あれはね~。おいしくないの~」

 「……そうなんだね~」

 「おおかみ、はね~、おいしい、よ~」

 

 ……その言葉に俺はなんて返せばいいんだよ!

 ちょっ……天月! 早く起きてこの子をなだめてくれ! なんかこの子と話してると滅茶苦茶そわそわする!


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