青の章 第3話 かるしうむ
青の章 第3話 かるしうむ
ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅ。
空腹だ。腹の虫が鳴いている。
腹の虫が喧しく、前の世界……転生したから前世か? 前世では朝に弱かった俺も腹の虫によりたたき起こされた。
少し寝たら元気が出た。やはり睡眠は大事だなぁ。……ああ、そう言えば俺は産まれたばかり、所謂赤ん坊だ。だったら睡眠を体が求めているのも自然か。
前世と違い、赤ん坊の俺に乳を与えてくれる母親はいない。と言うかそもそもこの世界の爬虫類(仮)は子育てをするのだろうか? 前世の爬虫類は卵を産んだら放置していたと思うが……。
ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅ。
むぅ、どちらにしろ食料の調達は自分でやるしかないか……。
空腹でいい考えが浮かぶためしはない。
産まれた卵の殻の底で丸めていた体を起こし、殻の真ん中辺りに開けた穴から頭を出す。
そして慎重に辺りを見渡す。
……。
どうやらこの体はとても夜目が効くらしいな。
光源など全くない洞窟の様な辺りを、まるでライトで照らしているかのようにハッキリと捉えることが出来ている。正直大変助かるな。
だがしかし、ハッキリ捉えることが出来る故に、分かってしまう。辺りに食糧など無いことに。
俺の産まれた卵があるのは洞窟、それも下は砂利と粗い砂を混ぜたような地面、壁や天井部分は本当にザ・洞窟と言った具合の土壁、しいて言うなら坑道等と違い、天然の洞窟の様で少しカーブを描いていることくらい。
正直、キノコでも生えていればありがたいくらいなのだが、辺りに植物はないし動物や昆虫の気配もない。
まあありがたい点を上げれば、ここは洞窟の行き止まりらしく、ドーム状の空間の先に一つの穴が開いており、そこからしか外敵が入ってこないだろうと言うこと。
洞窟と言うのは基本的には地下にあり、大抵はとても涼しいものだ。しかしここはとても暖かく、そこそこの湿度が感じられる。もしかしたら温泉などが湧いているかもしれないなぁ。近くに火山でもあるのか?
ファンタジーの世界の温泉か……、入るとみるみる傷が癒えたりするのだろうか?
―――今俺の見える範囲には二つほど、食べれそうな物がある。
一つは俺の卵を囲むように配置されている卵。
これは恐らく、今生の俺の母親にあたる生き物が、ここへ産んでいったものだろうな。そして中には俺と同じくらい成長した爬虫類 (仮)がいるはずだ。
もしかしたら無精卵で、産まれることのないやつもあるかもしれないが、……それでも共食いはちょっと勘弁して欲しいな。勿論卵の中である程度成長した爬虫類 (仮)も共食い感が強いからなぁ。
勿論共食いをする生物など前世にはいくらでもいたが、元人間と言う事もあってか正直行いたい行動ではない。
そうすると必然的にもう一つの食料、今俺がいる卵の殻、つまり卵殻しかない。
こちらも自信の産まれた卵の殻を生物など前世にはいくらでもいたが、正直卵殻はゴミのイメージが強い。店の仕込みで使ったやつが、シンクの三角コーナーに大量にあったしなぁ。
むぅ、まあ贅沢は言わんでおこう。食えるものがあるだけでもありがたい。
いざとなれば泥だろうが、腐肉だろうが食らってやるさ。
そうと決まれば早速、いただきまーす。
……パキッ、バリバリ、ジャリジャリジャリジャリ、……ゴクン。
……パキッ、バリバリ、ジャリジャリジャリジャリ、……ゴクン。
……パキッ、バリバリ、ジャリジャリジャリジャリ、……ゴクン。
……ごちそうさまでした、と。
うーん、骨味の堅焼きせんべい? そんな感じだ。
まあ、味はともかく腹はふくれた。
結構食べたなぁ。全体の……五分の一くらい食べたか? 頭を出すのがやっとの穴がかなりでかくなり、風通しがよくなっている。
今の俺が三十匹は入れそうな卵を五分一も? 余りこの体の燃費は良くないのかもしれない
せめて殻のカルシウムで骨や歯が丈夫になるように祈るか。
ああ、祈ると言えば。
神様、この後の指示を送ると言っていたが、それはいつくるんだろうか?
他の奴らは無事に転生出来ただろうか?
せめてあいつらは良いものを食べていて欲しいな。
もともと少食な七星や桐香さんは大丈夫だろうか?
さてと、この後俺はどうしようか?
この洞窟の外に出るか? 洞窟内で食料を探す?
そんなことを考えていると、うとうとと睡魔が襲ってくる。腹が膨れれば眠くなる。実に自然だな。
再び俺は殻の底部分に体を丸め、目を閉じる。
丸まりながら、爬虫類(仮)の尻尾が枕にするのにはちょうどよい高さであることに気付き、顎を尻尾の上に乗せて眠りにつく。
『新着メッセージが一件あります』
意識を手放す直前、何か聞こえた気がしたが、俺は睡魔に敗北し眠りに眠りについた。
『個体の意識が無いため、メッセージの再生を中断します。個体の意識が確認でき次第、メッセージの自動再生が行われます。』
もしこの時点で、俺がこのメッセージを聞くことが出来れば、この後の展開を回避できたのかもしれない。
俺の眠る洞窟に、複数の足音が近付いて来ていた。




