幼稚園児の正義
不定期とはいえ、更新が遅くなってしまい、申し訳ございませんでした。
転生前
氏名:神田正義
性別:男
分類:一般人
スキル:そんなものは無い
転生後
氏名:神田正義
性別:男
分類:一般人
スキル:断ったので無い
「うん、結局どこも変わってない。」
新たな命としてこの世に生まれ、早6年が経った。
奇妙な事に、転生前と同姓同名で性別も同じ。貴族とか王族のような特別な家に生まれたわけでもない。ついでに鏡を見てみると、幼稚園の頃の顔をした自分が映っていた。この様子だと、見た目も一緒なのだろう。そして、
「正義、夕ご飯よ~。」
「はーい。」
母親も同姓同名で、元の世界の母親をコピペして持って来たかのように、雰囲気も仕草も何もかも同じだった。そして、正義が生まれた時には既に、父親はいなかった。
「今日はハンバーグよ~。」
「やったー!!」
席につき、目の前にある真ん丸なハンバーグを見て、両手を挙げて喜ぶ正義。凄くわざとらしい。
「いっただっきまぁーす!!」
グサッと一思いにフォークでハンバーグをブッ刺す正義。その瞬間、フォークの隙間から肉汁がブワッと溢れ出て来た。まるでファミレスの値の張るハンバーグのようだ。さすがにそのまま口の中には入らないので、正義はそこから半分に切ったところ、
「あれれぇ~?このハンバーグ、中にチーズが入ってるよ~?」
なんと中にはトロ~リとしたチーズが入っていた。本当にファミレスのそれである。正義は、半分に切ったハンバーグを更に半分に切って、フーフーしながら口に入れた。
「美味しい!!」
ハンバーグの感想を簡単に且つ、感情を込めて言う正義。くどいようだが、本当にわざとらしい。
一方母親は、目の前で自分の作ったハンバーグを頬張る息子を見て、微笑みながら言った。
「フフ、ハンバーグの中にチーズを入れるなんて初の試みだったけど、上手くいって良かった。あ、もう一個食べられるからね。」
「うん、有り難う。母さん。」
こうして、幸せそうな夕飯は終わった。
「は~、疲れた。」
そんな事を言いながら、バタンと自分の部屋のベッドに倒れる正義。寝間着に着替え、体がポカポカとあったまっているのを見る限り、風呂に入った後のようだ。正義は、そのままごろんと仰向けの体勢になった。
「転生して人生をリセットし、記憶も引き継がれたのは良いんだが・・・・・・元の年齢近くになるまで、あんな演技をし続けないといけないのかと思うと、物凄くだるいわ~。あ~、早く大人になりてえ~。」
しかし、大人になったらなったで、『もう一度子供に戻ってみたい』とか抜かし始めるのが人間という生き物である。それに捉え方によっては、高校生もまだまだ子供である。
「記憶が引き継がれるっていうのも、善し悪しだな。高校生までやってきた記憶があるだけに、こうやってもう一度幼稚園から通わされるのは、だるくて仕方が無い。まだこの世界の幼稚園が、元の世界と違ったものだったら良かったんだが・・・」
ベッドから起き上がり、窓の方へ歩き出す正義。窓を開けるとそこには、元の世界と比べて所々違いはあれど、大体似たような風景が広がっていた。
「今の所、これといって大きく変わったところは無いんだよなあ・・・」
ゼロスとかいう神は、『大変物騒な世界』と言っていた。奴がどういう神なのかは知らないが、とりあえずそういう奴が『物騒』と言うのだから、てっきり日常的にドンパチが繰り広げられているのかと思ったら、決してそういう訳ではなかった。テレビのニュースを見ても、一応事件は起こっているとはいえ元の世界と同じ感じで、(まあ、物騒といえば物騒だが)そんな大袈裟に『物騒』と言う程ではない。
だが、正義は『ゼロスが大袈裟に言った』とかどうでも良かった。とりあえず、
「まあ、これなら能力が無くても、安心して第二の人生を全う出来るから良いか。」
と、一安心した。するとここで、母親がドアの向こうから、
「正義、もう寝る時間よ。」
と、言ってきたので、今日はタイムアップ。明日はまだ幼稚園に行かないと行けないし、そのままベッドに入って眠りについた。
翌日、正義は幼稚園へ行く為、母親と一緒に家を出た。その際、正義と母親はガッチリと手を繋いだ状態になるわけだが、正義にとってはこれが凄く嫌だった。まあ、『子供が道路に飛び出さないようにする為』にこうするのは、小さい子を持つ親として当然の事ではある。何も間違ってはいない。子供の安全を考えるのが、親というものだ。
しかし、それは『ガチ幼児』の話。彼の様な『エセ幼児』にとっては、それが『大きなお世話』以外の何ものでもない。特に彼の中身は、思春期真っ只中の男子高校生。(実際には、前世の年齢+6年で、とっくに二十歳を超えてはいるが)『親の温かさ』より、『恥ずかしさ』の方がこみ上げて来るのは言うまでもない。だから嫌なのだ。一応、手を離そうと試みたが、
「コラ、暴れないの!!」
と、母親に叱られてしまった。
「(あ~もう嫌だ。何でこの歳になってまで、母親とお手々繋がないといけないんだよ。これクラスの奴に見つかったら、絶対に『マザコン』呼ばわりされるヤツやん。ただでさえ今の世の中は、普通に母親の手伝いをしただけでも『マザコン』呼ばわりされる時代なのに!!)」
心の中で嘆く正義。だがこれも仕方が無い。彼は今、れっきとした『幼児』なのだから。前世の記憶を引き継いでいるとか、そんな事は関係ない。『幼児』は『幼児』。こればかりは、もう少し月日が経過するまで、我慢するしかない。
「(ホント、早く高校生にならねえかな~。)」
正義は溜め息を吐きながら、改めて心の中でそう思った。
それはさておき、そうこうしている間に、目的地である幼稚園の建物が見えて来た。
一方その頃、正義が通っている幼稚園からずっと離れた所にある廃工場の中で、黒いフードを被った怪しい男が一人、何やら良からぬことを企んでいた。よく見ると、その男の足元には、魔法陣のようなものが描かれている。一体、何の儀式をするつもりなのだろうか。
彼は、その魔法陣の上に鶏もも肉100gと豚ミンチ100g、牛スネ肉100gを黙々と並べ始めた。いずれも近くのスーパーで、昨日安売りされたばかりの商品である。そして最後に、魔法陣の中心に拳一個分くらいの量の粘土のような物質を置くと、男は魔法陣から少し距離を取って、呪文のようなものをブツブツと唱え始めた。その際、魔法陣が彼の呪文に呼応するかのように、点滅するように光り出した。
そして・・・
「・・・出でよ。『モノガーン』ッ!!」
その言葉と同時に、魔法陣が今までにない程の光を放ち、三つの肉と粘土で、一体の謎の生命体を作り上げた。
「グォアアアァァァァァーーーーーーーーーーーーーーッ!!」
『モノガーン』と呼ばれたそいつは、鬼の様な角を二本生やした一つ目の白いモンスターで、成人男性の平均サイズより一回り大きい。立ち姿を見ると、恐らく二足歩行するタイプ。そして、頭はあまり良く無さそうだ。
男は呪文で作り上げたモンスターを見ると、さっそく命令を出した。
「行け、『モノガーン・ユージュアリー』!!この近くに居るであろう『転生体』を見つけ出し、捕まえて来るのだッ!!」
「グォアアアァァァァァーーーーーーーーーーーーーーッ!!」
返事の代わりに独特な咆哮を発しながら、モノガーン・ユージュアリーは廃工場の屋根を突き破って出て行った。




