村への逃亡者 3
村は対して大きくも小さくもなくそこらでよく見る普通の村だった。木製の頑丈な家。商店も幾つかある程度には人の通りがある。
昨日はある程度腹が膨れたがそれでも、俺みたいな奴らにゃおやつ程度。ここで本格的に腹に入れねぇと何かあったとき参っちまう。
ガラリと両開きのドアを押し開ければ、発光鉱石で明るさをとる酒場。今時蝋燭なのがおかしいくらいだ。
「親父、食いもんだ。肉出せ肉。あと酒。」
親父は何も言わずに奥へ行くと、焼いたファットベアの肉を出す。ナイフとフォークが出されるがそんなお上品に食えるかとフォークでぶっ刺して肉を噛みきる。
ゴトリと追加して出されたのはチープリカー。安酒だ。
「もう少しマシなのだせ。肉追加だ。」
文句を言いながらもそのビンに手を伸ばしそのまま口をつける。水のように喉を鳴らして飲み流す。
俺が来たことで中にいた数人は外へ出て行った。面倒ごとを避けるにはその原因から離れるのが正解。それがこの世の常だ。
これまで食べれなかった分を肉だ酒だと胃へ流し込む。
「うえぇー食った、食った。いやーいいねぇ。欲が満たされるのは。」
「金はちゃんと払えるんだろうな。」
「なぁにこんくらい払えるさ。ちょちょいのちょいよ。」
ごそごそと焦げ茶色のどこにでもあるローブを探る。
「ありゃ・・・親父ぃ。ちょいと手持ち無ぇみてだ。ツケといてくれよぉ。」
店主は壁にかかっていた斧を取ると俺の鼻先を掠めるようにしてカウンターへ振り下ろした。
きょとんと俺は目をカウンターへと下ろす。
「親父ぃ一応良いカウンターなんだからよ、大事にしないと。これ下の支柱逝っちゃってねぇか。グヘ、グヒヒヒ。」
思わず腹を抑えながらカウンターをバンバン叩く。
「大丈夫だ、これもお前の代金に含まれている。」
「おいおい、まじかよ。」
バンバンぶっ叩いていたカウンターからそっと手を離すと、腫れものを触るかのように優しく擦る。酔いも吹き飛びそうな冗談に俺は刺さった斧をそっと持ち上げカウンターを見た。完全に逝っている。
これ以上代金積まれても困るし、早々に支払うっきゃないだろう。
「で、幾らよ。俺ぁ素寒貧だからカウンター代までは払えるかどうかよぉ。」
目元を抑えながら道化のように泣く。
「金貨2枚だ」
「・・・おいおい冗談も対外にしてくれよぉ。カウンター代含めてもそんなしねぇはずだ。」
「迷惑料だ。」
「せめて金貨1枚にしろよ。」
「・・・。」
まぁ金貨1枚でも相当ぶっかけられてるが、そろそろやべぇからここらで手を切りたい。
俺が続いて口を開こうとしたところで、後ろから話を遮られた。
「あとはこの村の通行料として金貨5枚支払ってもらおう。」
「あ゛?どんな街でも銀貨3枚くらいだぞ。どこの馬鹿がそんな大金払わにゃなんねぇんだ?」
振り返れば全身を覆う白銀の鎧を着た汚騎士様。通行料は少なからず取られるが大体似たり寄ったりな金額だ。そんな金貨までいく通行料などあるわけがない。
「いやいや、君たちみたいな奴はいるだけで迷惑になるんだよ。まぁその分の迷惑料だね。―――なに、ここではそういうものだと思ってもらえればね。」
鼻につく言い方だ。そのしょうがないみたいな言い方。どうも俺の神経を逆なでする。
「いくら騎士様でも、そんなに金に困っているのか?だとしたらどこにそんな大金使ってるよ。夜のお嬢様かい?自分の息子がお盛んでもよ、それを俺らで補っちゃいけねぇわな。」
「―――まったく、小鬼どものように見た目も穢ければ、言葉も汚いとは。なに、払えなければここで懐の物を売っていけばいい。幾らかは金の足しになるだろう。」
騎士様は煽り文句に慣れている様子で鼻で笑う。
「けっ、いじきたねぇな天下の騎士様はよぉ。ほれこれでいいんだろう?それで頑張ってへこへこ腰でも振ってくるんだな。さぞやお姉さま方は喜んでくれることだろうぜ。自慢の短小聖剣をぶら下げた騎士様が来たってよぉ。」
小袋を投げると足早に酒場を出た。
けっ辺境の村はどこも腐ってて反吐がでる。
すんっと鼻を鳴らす。空気に混じる湿気の匂い。
「ん?一雨くるか?」
足早に歩き始めると商店へ向けて歩き出した。
「出る準備しねぇとな。」
背中へ付けてくる視線を無視しながら、ふらりふらりと覚束ない足取りで歩き始めた。




