村への逃亡者 2
「うぃっ・・・さみっ。」
まだ春も始め暖かくなってきたとはいえ早朝は空気が鋭く冷たい。鳥のさえずりと小さな小窓から陽光が差し込む。
ごそりと身体を起こすと部屋には俺一人。道具は盗られていない。
ゴキリゴキリと骨を鳴らしながら扉を開けると、机にはこの小屋の主が座っていた。おいおい・・・普通は逃げるだろうに。なにやってんだこの女。
俺が対面の椅子に座っても、女は椅子に座ったまま赤子に乳を上げていた。
「あんた・・・弓で生業でもしてたんか?」
女は何も喋らず赤子へ顔を向けたまま、俺に一瞥とも視線を向けない。
「旦那は?見た感じいねぇみてだが。」
「それを知ってどうするの。」
会話をぶった切るようにして奥さんは口を開いた。俺はついにやりと口が緩んだ。
口角を揉みほぐしながら話をつづけた。
「なぁにこんな美しい奥さんを持った旦那がどこへいったのやらってなぁ。出稼ぎか?死んだか?それとも夜でてったあの騎士様かぁ?」
ぴくりともしなかった女は最後の言葉に俺へと視線を向けた。
「そうだと言ったら。」
「いやーおっかない。天下の騎士様の女に手ぇなんか出した日にゃあっと言う間に晒し首だ。」
オーバーリアクションとでも言うように頭に手を当て、お手上げだぁと体で表す。
「まぁ、騎士様だったらもっとお綺麗なお屋敷に住んでいることだ、あんた愛人かなんかか?ゲハハハ。」
まぁ実際そんなとこだろう。意外なのは金庫みたいに大事に大事に部屋に閉じ込められてねぇってとこか。
「なんなら俺がアンタの旦那になってやろうか。愛人なんて一時のつまらん関係よりかはずっと楽しいことよ。」
いやはやこんな色っぺぇ女この家に置いとくなんざ、相当異常性愛者なんだろうか。人に言えない情事が好きってか。かぁー、金持ち、権力持ちは違うねぇ。
「じゃぁなってよ。」
「あ?」
女が意外なことを言い出した。
「旦那になってよ。」
まさかまさか、一日も経ってない男に旦那になれと?
瞳が潤み、俺を睨みつけるさまはつい息子が反応してしまった。
「・・・それ叩いた方がいいんじゃねぇか。」
女は視線を下げると乳房から口を外した赤子。とんとんとんと優しく叩くさまは実に手慣れている。
「ふんっ、やなこって。ずっとここにいたら駄目になっちまう。」
俺は小屋の扉へ手を掛ける。すると背後から女の声が浴びせられる。
「もうここには近寄らないで。」
「うるせぇ、こんなとこもう来るかよ。」
女の言葉に反論するように呟くと外へと歩みを進めた。清々しい朝だ。空気が綺麗で透き通っている。
あぁ久々に人と話した。
区切りがいいとこで投稿です。
文字数ってどれくらいがいいのだろう。
実際それで投稿できるかっていうと、話は変わるんだけどね。
っていう雑談。




