第2話
やっとこさ書けました2話。ちょっとずつ盛り込んでいきたいと思います。
べちっ。と、そんな間抜けな音がした。時が止まっている世界でどうやってと問われれば、それは1柱と1人が自由に動けるからに他ならない。
もちろん額が鳴き声を発した訳ではない。当然何らかの外的要因がある。――それは、少女の額に打ち付けられたしわくちゃに老いた指だ。まあその、俗に言うデコピンの音。
スタリク教の洗礼を受けている最中だった。そのはずだったのに、突如としてスタリク神ではない別の神にデコピンをされた少女――私は今現在、ひどい頭痛に襲われていた。
脳に大量の情報が流れ込んでくる。その情報量に追いつこうと脳がフル回転し続けているせいか、頭がズキズキと悲鳴を上げていた。正しくは、『前世の記憶を思い出した』だったりするのだが。
――アイリーカ・セメドリクは転生者である。そもそも何故転生する羽目になったのか?
有り体に言えば彼女は――前世で神にミスられた。だいたいそんな感じだ。
ニホン、という国で健やかに平和に生きていた。家族に愛され、友人にも恵まれ。恋人こそいなかったものの、順風満帆な人生を送っていた。
その中でも彼女が恵まれていたのは、趣味に関してのことだろう。
そもそのニホンでは、文章や絵を楽しむ行為が娯楽として古くから浸透していた。今やそれらは膨大な規模となり、その裾野はどんどん広がり続けていたわけだが――彼女が好んでいたのは、あまり万人受けしないものだった。
それは『リョナ』と呼ばれていた。一言で説明するならば、架空の人物への暴力行為。
彼女の加虐趣味を満たすことができたのは、ニホンにおいてはそのリョナだけだった。しかし残念なことにニホンは法治国家であったから、合意なく危害を加えればあっという間に捕まってしまう。
だが彼女は合意ではなく、嫌がる人間に暴力を振るうような内容のものを特に好んだため――ある日突然、老人のような外見をした神が『ごめんちょっとこっちのミスでおぬしの人生終わらせてしもた。お詫びに異世界で新しい人生プレゼントするぞい♡(意訳)』などとふざけた話を持ってきた際も、いくつかの交換条件の下ではあるが異世界への転生を承認したのだ。――異世界でなら、愚かな劣情に満足のいくアンサーを与えてやれるのではないかと思ったから。