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俺の経験値だけ時間制だった  作者: リリエル
紅魔種からの頼み
9/20

#8 「なんか呆気なかったのは気のせいだよね。うん。」

 町の南東方向、距離にして凡そ50km先。そこには白い竜が棲んでいる。

 その性格は大人しく、危害を加えない限り襲っては来ない。


 だが最近、急に暴れだすようになったという。

 巣の近くには集落があり、その度に被害がでてしまっている。

 相互不干渉を条件にしてきたが、こうなってしまった以上、どうにかするしかない。


 と言うのが今回のクエストの内容だ。


 今二人はそのクエストの場所に来ている。

 あいさつも一通り終わらせ、白竜と対峙しているところだ。


 サナは、ナユナの様子がいつもと違うことに気づく。

「ナユナ、どうかした?」

 白竜を前にしたナユナは、とても真剣な表情をしている。


龍降(りゅうくだ)し。降龍種にとって非常に重要なことでございます。」

 白竜を睨んだまま、いつものように説明する。

 だがその声には少しの力強さと覚悟があって。


「降龍種。名前の通り竜を召喚する種族。ですが初めからそれが出来るわけではございません。降龍種は倒した竜の魂をこの紋章に刻み、特殊な金属を使ってその魂を召喚するのでございます。」

 目の前に白竜がいるためか、手の甲に刻まれた紋章が淡く光る。

「つまり龍降しはその竜と契約すると同義。就いてはこの闘い、サナ様は私がピンチの時以外手出しはしないでいただきたいのでございます。」


 竜と契約する、それはあの白竜がナユナを認めて初めて出来ること。サナのチートを使えば成立しないだろう。

「わかった。」

 サナは頷き、大きく後ろに跳んで遠くから見守る。


〔話は済んだか小さき者よ〕

 見下すように白竜が言う。「(竜って喋るんだ)」とサナは感心する。

 竜の言葉は響き何重にも重なって聞こえる。少し聞き取りづらい。


〔我が魂を其の身に縛ろう等浅墓だと(つい)()れ〕

 ああ、なんか上から目線でむかつく。

 だがナユナはこの戦いを真剣にやってるんだ。邪魔するのは悪い。


 ……でもこのイライラは治まらない。

 そうだ、あの声を弄ろう。

 抑あの無駄に響く声、聞き取りづらい上にうるさい。

 だから「《インターフィア》」とサナは呟く。

 すると白竜の声は一切響かなくなる。おお聞き取りやすい。


 ちょっと気持ちを晴らしたところでナユナと白竜の戦いを見守るとしよう。


◆┫「なんか呆気なかったのは気のせいだよね。うん。」┣◆


 さすがは町最強の冒険者といったところだろうか。

 動きの一つ一つが美しい。攻防の入れ替えも滑らかだ。

 なんと言うか安定感があって見ていて心地よい。

 そしてそのまま決着……とまではいかないが、あと一歩のところまで追い詰める。


 すると突然、白竜の喉が赤く煌めきだす。


 ブレス攻撃だ。

 出来る個体は極一部。それと戦っているのはある意味幸運であり不運であり。

 これは降龍種としてはなんとしても手に入れたい。

 ナユナの目に改めて熱が籠る。


〔全て灰に帰すがいい 《ブレス》〕

 白竜の口から炎がナユナ目掛けて出てくる。

 ナユナはそれをギリギリで躱すと、白竜に向けて剣を構え、突撃する。


 ひょいひょいと軽く跳んで白竜の顔の前に来ると、竜の弱点である鼻に剣を刺す。

〔見事〕

 そう遺し、白竜の魂はナユナの手の甲の紋章に吸い込まれる。


「なんか呆気なかったのは気のせいだよね。うん。」

 サナはそう呟きながらナユナに近寄る。


 ナユナだからこそほんの15分や20分で片付いたが、白竜は強いらしい。

 実際彼女も消耗している。

 初めて見た。ナユナがここまで消耗している様子を。


 さて、無事にクエストクリアし、序でに龍降しを遂げ、満足の半日だった。

 あとは町に帰るだけ……


「あのあの!」

 サナが《ゲート》を開こうとしたところ、二人に声が掛かる。

 振り向くと、一人の少女が立っていた。


 紅い髪に紅い眼。紅魔種だろう。

 身長的にはサナより少し上だが、童顔の可愛い娘。


「どうした?」

 サナが優しい顔で聞く。

「率直に言わせていただきます。わ、私を仲間にしてください!」

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