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俺の経験値だけ時間制だった  作者: リリエル
プロローグ
8/20

#7 「レベル34560だよ。」

 いろんな意味で顔を赤くしながら風呂に入った後。

「あ、あの……」

 そろそろ寝る流れになった頃、何やらもじもじとナユナが言った。

「どうしたの?」

「えっと……」

 しかしなかなか言い出せない様子。ごにょごにょとしていて聞き取りづらい。


 どこか突っ掛かってるようなナユナを察して、サナは勇気づける意味でこう言う。

「なんでも言ってよ。出来ることなら手伝うからさ。」

「で、では……」

 とナユナは両手を広げて、

「初めて見たときからずっと思ってました。私の────」

 息を大きく吸って、言った。


「────抱き枕になって頂けませんか!?」


 その続いた言葉に、サナは目の前が白んでいくのを見た。

「あ、さ、サナ様!?」「へ?あ、ああ。」呼び止められなければそのまま気絶していただろう。


 なんとも複雑な気分だ。

 重大告白のようなあの絶妙な間の後に紡がれた言葉が、抱き枕になってくれ。

 一瞬でも百合展開を期待した自分がバカみたいじゃないか。


「べ、別にいいよ。抱き枕になっても。うん。」

 微妙そうな顔で答えるサナとは対照的に、パアッと明るい表情になるナユナ。そのまま抱きつく。


「んぐッ?!」

 衝撃によって、サナから声が漏れる。

 そして数秒後、

「(あ、悪くない。)」

 そう思うサナだった。


 実際、ナユナのたゆんたゆんなそれが顔を優しく包み、素晴らしい感触だ。

 ただちょっと息苦しいが、これのためなら我慢出来る。


「「(あ、心地好すぎて、眠く、なって……きた………)」」


 そうして二人は、非常に良質な寝具を手に入れたのだった。


◆┫「レベル34560だよ。」┣◆


 翌日。集会所にて。


「クエスト、昨日より増えてない?」

 掲示板を見て、サナが言った。

 そう。確かに増えている。


 樹霊種が来たからという要因もありそうと予想したが、その線は薄そうだった。

 何だかんだうまくやっているようで、ちゃっかりギルドに入れてもらっている者もいる。

 嫌っていたのはどうやら先入観からのようで、蟠りもなくなりつつあるらしい。


 さて、話を戻そう。

 あからさまにモンスターの討伐依頼が増えているように思える。

 樹霊種の森と同じことが起きようとしているのだろうか。


「確かに、昨日より増えてございますね。はて、何故でしょう?」

「試しに、一つ受けてみよ?」

 サナは貼ってある内の一枚を剥がしカウンターへ持っていく。


「これ、受けたいんですけど。」

 サナが持ってきた依頼紙を見た受付嬢は少し苦い顔になる。

「あ、あの……クエストには、レベル制限というものがありまして……」

「というと?」

「安全対策のため、高レベルモンスター討伐のクエストを受けるためには、相応のレベルが必要になります。」

 ほほう。確かに美少女なサナは、見た目からはそこまで強そうとは思えない。

 外見という先入観があるから、もうサナが何を言おうと無駄だろう。

 ならばここは、どんなクエストでも受けられるであろう裏技を使うとしよう。即ち、

「ナユナー!」


 同時、離れてサナの様子を見ていたナユナが現れる(・・・)。やって来る、ではなかった。

「レベル制限で受けられないってさ、これ。」

 と、依頼紙をナユナに見せる。


 ナユナはなかなかに顔が効いているようだ。

 ナユナがいるのなら、といった具合に受付嬢の表情が良くなる。

「同じギルドのメンバーとして、私が受けます。こうでしたら、よろしいですよね。」


 ↓


「(とは言ったものの……)」

 ナユナは自分が言ったことを後悔していた。


 クエストの討伐対象である白竜は、レベル制限として20が設定されている。

 レベル20というと、普通の人が頑張ってやっと到達出来る程度。それなりに強いモンスターに課せられる制限である。

 ナユナはそれを上回っているとは言え、たったの5レベル。

 正直なところ、まともに戦えるかどうか怪しい。


 不安気なナユナは、念のためにサナにレベルを訊いてみる。

「サナ様、失礼ながらお訊きしても宜しいでしょうか。」

「なに?」

「サナ様のレベルは、今どれ程でしょうか。」

 えっとね、と桁を数えるサナ。そして、

「レベル34560だよ。」

 と答えた。


 その圧倒的な差に、ナユナからは変な笑いが零れた。

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