#7 「レベル34560だよ。」
いろんな意味で顔を赤くしながら風呂に入った後。
「あ、あの……」
そろそろ寝る流れになった頃、何やらもじもじとナユナが言った。
「どうしたの?」
「えっと……」
しかしなかなか言い出せない様子。ごにょごにょとしていて聞き取りづらい。
どこか突っ掛かってるようなナユナを察して、サナは勇気づける意味でこう言う。
「なんでも言ってよ。出来ることなら手伝うからさ。」
「で、では……」
とナユナは両手を広げて、
「初めて見たときからずっと思ってました。私の────」
息を大きく吸って、言った。
「────抱き枕になって頂けませんか!?」
その続いた言葉に、サナは目の前が白んでいくのを見た。
「あ、さ、サナ様!?」「へ?あ、ああ。」呼び止められなければそのまま気絶していただろう。
なんとも複雑な気分だ。
重大告白のようなあの絶妙な間の後に紡がれた言葉が、抱き枕になってくれ。
一瞬でも百合展開を期待した自分がバカみたいじゃないか。
「べ、別にいいよ。抱き枕になっても。うん。」
微妙そうな顔で答えるサナとは対照的に、パアッと明るい表情になるナユナ。そのまま抱きつく。
「んぐッ?!」
衝撃によって、サナから声が漏れる。
そして数秒後、
「(あ、悪くない。)」
そう思うサナだった。
実際、ナユナのたゆんたゆんなそれが顔を優しく包み、素晴らしい感触だ。
ただちょっと息苦しいが、これのためなら我慢出来る。
「「(あ、心地好すぎて、眠く、なって……きた………)」」
そうして二人は、非常に良質な寝具を手に入れたのだった。
◆┫「レベル34560だよ。」┣◆
翌日。集会所にて。
「クエスト、昨日より増えてない?」
掲示板を見て、サナが言った。
そう。確かに増えている。
樹霊種が来たからという要因もありそうと予想したが、その線は薄そうだった。
何だかんだうまくやっているようで、ちゃっかりギルドに入れてもらっている者もいる。
嫌っていたのはどうやら先入観からのようで、蟠りもなくなりつつあるらしい。
さて、話を戻そう。
あからさまにモンスターの討伐依頼が増えているように思える。
樹霊種の森と同じことが起きようとしているのだろうか。
「確かに、昨日より増えてございますね。はて、何故でしょう?」
「試しに、一つ受けてみよ?」
サナは貼ってある内の一枚を剥がしカウンターへ持っていく。
「これ、受けたいんですけど。」
サナが持ってきた依頼紙を見た受付嬢は少し苦い顔になる。
「あ、あの……クエストには、レベル制限というものがありまして……」
「というと?」
「安全対策のため、高レベルモンスター討伐のクエストを受けるためには、相応のレベルが必要になります。」
ほほう。確かに美少女なサナは、見た目からはそこまで強そうとは思えない。
外見という先入観があるから、もうサナが何を言おうと無駄だろう。
ならばここは、どんなクエストでも受けられるであろう裏技を使うとしよう。即ち、
「ナユナー!」
同時、離れてサナの様子を見ていたナユナが現れる。やって来る、ではなかった。
「レベル制限で受けられないってさ、これ。」
と、依頼紙をナユナに見せる。
ナユナはなかなかに顔が効いているようだ。
ナユナがいるのなら、といった具合に受付嬢の表情が良くなる。
「同じギルドのメンバーとして、私が受けます。こうでしたら、よろしいですよね。」
↓
「(とは言ったものの……)」
ナユナは自分が言ったことを後悔していた。
クエストの討伐対象である白竜は、レベル制限として20が設定されている。
レベル20というと、普通の人が頑張ってやっと到達出来る程度。それなりに強いモンスターに課せられる制限である。
ナユナはそれを上回っているとは言え、たったの5レベル。
正直なところ、まともに戦えるかどうか怪しい。
不安気なナユナは、念のためにサナにレベルを訊いてみる。
「サナ様、失礼ながらお訊きしても宜しいでしょうか。」
「なに?」
「サナ様のレベルは、今どれ程でしょうか。」
えっとね、と桁を数えるサナ。そして、
「レベル34560だよ。」
と答えた。
その圧倒的な差に、ナユナからは変な笑いが零れた。




