#4 「身の程を弁えろ。虫けら。」
「ここが樹霊種の森か。」
緑で溢れたその森は、葉が日光を遮り少し涼しい。
上には木で編まれたような箱がある。恐らくそれはドアがあるから家だろう。
なんとも自然的で美しい光景に見惚れていると、二人の周りには人集りが出来ていた。
内輪だけで解決しようとする彼らにとって、他種族は珍しいのだろう。
二人に向けられる目は様々で、期待や好奇、警戒や威嚇など、実に幅が広い。
「(他種族の森にいるんだ。この反応も当然か。)」
確かに助けを乞うて来たのは樹霊種だが、降龍種の他に人類種も付いてきてはこう反応もされる。何しろ樹霊種は人類種を毛嫌いしているのだから。
サナがそう考えていると、樹霊種の男一人が前に出てきて言った。
「あんたがイミルムか?」
「頼み事をしている分際で呼び捨てとはなかなかいい根性ですねと思いつつ、私ははいと答えます。」
真顔で言葉にあっさりとした毒を含ませながら言ったナユナにサナは苦笑いを零す。
「(さらっと辛辣なこと言うな……)」
「まあいい。ところで、あんた誰だ。人類種が俺らの森を荒らしに来たってんなら、とっとと失せろ。」
樹霊種の男はサナを睨んで言う。
「───────────♥」
サナは隣から強力な殺意を感じ、ふとナユナをチラ見すると、凄い笑顔で怒っていた。
「おやおや助っ人に対して失せろとは大層なご身分で。そんなあなたに僭越ながら二つ程私から助言させていただきます。」
笑顔は一切崩さず、然し目は冷たく。ナユナは言い放つ。
「一つ。不確定を確定にするのはもう少し時間を掛けるべきかと。そして二つ。」
ナユナは笑顔の仮面を外して樹霊種の男を睨み
「身の程を弁えろ。虫けら。」
周りの傍観者全員の顔が引き攣る。だがナユナはそんなこと気にする様子もなく。寧ろ言いたい放題言ってすっきりしたのか笑顔に戻って本題を切り出す。
「さて、挨拶もそこそこにクエストの場所へ案内して頂けますか?」
あれを挨拶とは……
樹霊種の男は少し顔を歪め二人を案内し始めた。
◆┫「身の程を弁えろ。虫けら。」┣◆
「早速だが、クエストの詳細を話そう。」
アランと名乗った樹霊種は二人を小部屋に案内し言った。
「数日前からだ。森の北西に魔物が大量発生し出したのは。」
初めはなんともなかった。いつもより少し多い程度にしか捉えていなかった。
でも、魔物の数は日に日に増して行った。
終いにはたった数日で凡そ二十倍になり、流石に手に負えなくなった。
そこでクエストを出すことにした。
本題はここからだ。
その魔物にはいくつか不可解な点があった。
魔物の群れは何かから逃げるように走ってやってくること。
縄張り意識の強い魔物が複数いたり、普段群れを成す魔物が点々といたりすること。
また、ここより北西の地域でしか見られないような魔物もいた。
恐らく彼らは何らかの危険を察知して逃げて来ていると考えられる。
そこで───
「そこでその原因を突き止めて貰いたい。」
成る程。樹霊種が外部に助けを求める理由ははっきりした。だが、
「そう言うことはもっと早く知らせて頂けます?!」
異変があった時点でさっさと集会所にでも報告しろや!と。
人類種だからとかんなもん関係ねえだろ!これだから孤立しているところはッ!という怒りを露に叫んだ。
一息ついて思考を冷静にし、
「一応クエストはお受けします。が、これが事実であるならば皆様には避難されることをおすすめ致します。このような緊急時、情報が最重要ですので、最寄りの町などいかがでしょう。」
「クッ……あんな野蛮n───」
アランの言葉を遮ってナユナ。
「滅びたいのでしたら、結構でございますが。」
その言葉にアランはハッとなりそして悩み始める。
「クエスト終了までに考えておいて下さいね。」
↓
そう言い残し、さっさと部屋を出て行った二人は、早速森の北西へと向かった。
「ナユナって意外と酷いこと言うね。」
森上空をスキル《飛行》を使って飛びながらサナが呟いた。
サナに対してはデレデレなのだが、さっきは人が変わったようだった。
ナユナはサナに酷いと言われたのがショックだったのか、ガーンという擬音が似合いそうな顔を一瞬してみせ言った。
「いえ。意外と、ではなく元々そうでございます。」
……え?
「サナ様と出会い、変わったのでございますよ。」
ちょい待て。まだ出会って一日も経ってないが……
果たして人はそんなに直ぐに変われるものなのだろうか……?
「さて、もう着いたようですよ?」
そんなことはさておき、森の北西部に着いたらしい。
成る程。アランの言っていたことは本当だったようで、今も絶え間なく魔物が向かってくる。
うむ。これは無理だ。こんな数相手に出来ないわ。
「……元凶を見に行こ。」
クエストをクリアするために彼らが何から逃げているのかを調べることにした。




