#2 「サナさんのことをもっと知りたいので。うぇへへ……えへへ……」
「(《肉体の再現に失敗しました》か。成る程、そう言うことか。)」
カリュナは性転換していた事実について考えていた。
この世界に来て直ぐに流れたログ。
あのときは完全にスルーしていたが、よもやここまで重要なこととは。
「…どうかされました?」
カリュナを覗き込むように言った女性に思考が元に戻る。
「あッ、いえ。ただ考え事をしてただけです。」
「そうでございましたか。私はナユナ・サエ・イミルムと申します。どうぞお気軽にナユナとお呼びください。」
「はい。」
互いの名前を知ったところでナユナと名乗った女性が切り出す。
「それと、もう敬語でなくとも結構でございますよ。」
「あ、そう? じゃあナユナさんも」
「呼び捨てで構いませんよ───そういう訳にはいきません。キャラがあります故。」
「キャラ…?」
随分とメタいことを言ってくれるものだ。ナユナは。
↓
その後少し世界のことを聞いた。
ナユナはあっさりカリュナが異世界人であることを受け入れた。
理由を訊くと、これがそういう物語だって知ってるから、だそうだ。本当にメタい奴だな。
今カリュナ達は集会所に来ている。
ナユナはクエスト達成の報告をする為、カリュナは冒険者としての登録をする為だ。
集会所では、各種クエストの受付や報酬の支払い、冒険者ギルドへの入会と退会、作成を行うことが出来る。
一般的に集会所とは言わず、ギルドと言う。
「ではこちらに手を翳して下さい。」
受付嬢に促され、カリュナは不思議な形をした水晶のようなものに掌を翳す。
すると下に置かれていた紙に次々に情報が書き足されていく。
この情報は視界の右下の情報と同じだ。…つい五秒前までは。
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サナ・イル・リアノナ(10)
Lv 1443
HP 7532/7532
MP 6291/6291
SP 5748
LP 6085
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こんなの、チートもいいとこだ。
そのうちカンストとかするのかな。
「こちらが登録証になります。再発行には手数料が掛かりますので紛失しなぃょぅ……」
流れで機械的に言っていた受付嬢の声が登録証の違和感に気付いたのか段々小さくなっていく。
そして目を見開き息を呑む。
この時、追究はなかったものの、齢僅か十歳で英雄をも超えうる実力の者が現れたという噂が瞬く間に広がっていった。
◆┫「サナさんのことをもっと知りたいので。うぇへへ……えへへ……」┣◆
「そう言えばカリュn…」
カリュナと言いかけたが本名は違うので言い直そう。
「サナさん、宿はどうなさるのでございますか?」
そう。カリュナの本名はサナ・イル・リアノナ。冒険者登録の時にわかったらしい。
本人にもわからないことがわかるなんて、どんな原理なんだか。あの水晶は。
さて、脱線しかけた話を戻そう。
異世界から来たサナには、まあ当たり前のように家などあるはずもなく。
「ァ……」
宿を借りようにもお金がなく、クエストを今から受けるには時間的に厳しい。
そんなサナに、ナユナから救いの手が差し伸べられる。
「もしよろしければ私の家などいかがでしょう。」
何だろう。今ならナユナが女神にでも見えてきそうな勢いだ。
? が、どこか様子がおかしい…?
「サナさんのことをもっと知りたいので。うぇへへ……えへへ……」
ああ、これは。先程の救いの手という表現を訂正しよう。これは取り引きだ。
サナは宿が欲しい。ナユナはサナを調べたい。
サナがこれに乗れば成立、降りれば不成立だ。
もし乗ればサナは屋根のあるところで寝ることができ、ナユナはサナを調べ尽くすことが出来る。アレとかコレとかを含めたまるごとを。
さァ、どうする?
「(いや、これは男として本望では?)」
???
サナ、何を言い出す? 冷静になれ。
併し、加速したサナの思考は止まらない。
「(だって美人さんの家に合法的に入ることができ、ともすれば襲われる。まさに至上というものではッ!)うん。お願いしようかな。」
ああ、もう。なるようになればいいさ。
という訳で、二人はナユナの家へと歩いて行った。
その夜、サナが(ギリ健全な範囲で)アレとかコレとかされたことは言うまでもなかろう。
これはツッコミ担当が居ないとどんどん歪んで行ってしまいそうですな。




