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俺の経験値だけ時間制だった  作者: リリエル
決闘祭と……
20/20

#19 「なんなんだろうね。これ。」

お久しぶりです。

 ヒルダがギルドメンバーになった三日後。

 町もそろそろ静まり返る丑三つ時に、突如、大地震が発生した。


「うわああ!」

 ぐっすり寝ていたところを、容赦なくベッドから落とされ目を覚ますサナと、隣のナユナ。

 寝覚めの悪いサナも、状況が状況なだけにぱっと目を覚ました。


 リビングには既にロゥラとヒルダがいた。

「な、何でしょうか……」

「わから、ない。」

 冷静なロゥラでさえ、語頭につけるサ変名詞を忘れるほどに慌てているようだ。

 ナユナも落ち着いているように見えるが、不安そうな仕草が多くみられる。


 この中で、唯一冷静だったのが、サナだ。

「んー、直下型で……震度5弱ってとこかな。結構でかいね。」

「さ、流石師匠、こんな時でも冷静さを欠かない。」

「こっちからすれば、何でそんなに慌ててるの?って感じだけどね。あ、あれか、地震なんて起きたことないってあれか。さっすがファンタジー。」

 などと、非常時にもかかわらずお道化た様子のサナに、他のメンバーもだんだん冷静になっていく。


 気づけば地震は止まっていた。

「ん、止んだね。」

「……そのようですね。」


 地震の衝撃で室内にはいろいろなものが散乱していた。

 おまけに壁には罅が入り、耐震性の低いこの建物は今にも崩れてしまいそうだ。

「おし、とりあえずここから出ようか。」

 余震が来る前に、と提案するサナ。反対する者はいなかった。


 ↓


 外は混乱している人たちと瓦礫で溢れていた。

 通り道がなさそうだと思ったサナは、ホームにあった絨毯にメンバーを乗せ、空から避難を始めた。


「(まさかこんなところで夢が叶うことになるとは)」

 サナ――三崎アキの昔からの夢は、空飛ぶ絨毯に乗ることだった。

 念願だったとはいえ、状況が状況なだけに素直に喜べない。

 サナは思考を逸らすように咳払いをして、こう切り出した。


「で、どこに行く?」

「と、言われましても……」

「質問:どうして外へ?」

 ロゥラからの質問に、サナは「だって」とホームの場所を見ながら答える。

「あそこもうすぐ壊れるし。流石に家の下敷きにはなりたくないでしょ?」

 タイミングを見計らったようにホームが崩れていく。

「ほら。」

 その光景とサナの言葉に、一同は顔を青くする。


 取り敢えず特に進路は決めずに進むことにした。

 未だ日は昇る気配すらなく、辺りは闇に包まれているが、でも大丈夫。

 そう、サナならね。


 サナが辺りを光の魔法で照らし、その効果範囲内は昼間と同等の明るさである。

「これほどの魔法、尊敬します! 師匠!」

 ヒルダはサナに尊敬の眼差しを向け、ロゥラも負けじと同じ魔法を使ってみるが、全く話にならないレベルである。

「まあまあ、その対抗心は評価しますが、ロゥラさんはまず、身の程を知るべきではないでしょうか?」

 ナユナは笑顔でロゥラのフォローをするが、ロゥラはナユナに対し苛立ちを覚えた。


「ん、んだあれ?」

 サナの呟きで絨毯は停止し、メンバーもサナが指す先を見つめる。

「岩、でございましょうか?」

「にしては人工物な感じですね。」

「でもこの辺りって草原のはずだよね。」


 うーん、とややお手上げ気味に息を吐く一同に、ロゥラ。

「提案:調べるべきでは?」

 冒険者という職業柄、未知への興味は尽きない。つまりそのロゥラの提案は採用された。


 ◆┫「なんなんだろうね。これ。」┣◆


 どうやらここが入り口みたいだ。

 入り口を探していたわかったのだが、この物体は高さ3㎞、外周6㎞程の円柱形をしている。

「なんなんだろうね。これ。」

「はて、見当もつきません。」

「取りあえず中に入ってみませんか?」


 ヒルダの提案で、一行は中に入ることにした。


 内部には一切の明かりがついておらず、サナが灯りを消したら真っ暗で何も見えなくなってしまうだろう。

 壁はダークグレーの朽ちたレンガからなり、所々に苔や蜘蛛の巣がみられる。

 かなり不気味だ。


「変なところだね。」

 通路を駆ける生ぬるい風が運ぶ奇妙なにおいが不安を煽る。

 来ておいてなんだが、もう帰って布団にくるまりたい気分になった。


 しばらく進んで行くと、広い空間に出た。

 その空間にはどうやら明かりが灯っているようで明るい。サナの明かりが強すぎるせいでわかりにくいが。

 四人はその空間へ入っていった。


 ――刹那、突如床が赤黒く光ったかと思うとガシャンという音を立てて部屋と通路を隔離するように柵が下りてきた。


 罠だ。

 だが手遅れだ。

 何もいなかったはずの部屋はいつの間にか数百の魔物で溢れている。

 退路は既に断たれた。


 普通なら死を覚悟する場面であるがしかし、安心されたし。

 サナからしてしまえばこんな数、蟻百匹を一か所に集めてガスバーナーで炙るようなものである。

 故にヒルダを除く三人は非常に冷静、というかうち一人は欠伸すら掻いているところだった。


 サナは(おもむろ)に(必要はないが)右手を前に出し、(必要なないが)魔法を叫ぶ。

「《絶対零度の波》!」


 サナが放った波の冷気が視界を白く染め上げた。

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