#18 「は! で、弟子にしてください!!」
なんともわからぬまま取り敢えず勝利したサナは、表彰されて賞金を受けっとった後、ナユナたちと合流してギルドベースに戻った。
「ただいま。」
言うなりサナは近くのソファーに突っ伏す。
するとすぐにスヤスヤと寝息を立て始めた。
「……寝てしまわれましたね。」
「……訊きたいことあった。」
不満そうなロゥラの顔は、隣のナユナも同じだった。
そんなときにふと、玄関のドアがノックされる。
「はて、どちらでしょう?」
不思議に思いながらナユナはドアを少し開けた。
「あ、あのあの、ナユナ・サエ・イミルムさんでしょうか?」
そこにいたのは紛れもなく、サナが決勝で戦ったヒルダだった。が……
↓
一応家の中まで通してあげた。
「質問:単刀直入に。何しに来た?」
「え、えとえと、ぎ、ギルドに入れて欲しくて、来ました」
おどおどと受け答えするヒルダに、二人は訝しげな表情を深める。
「何故今?」
「はぃ、あ、と、決勝戦でリアノナさんと戦ったときに──」
そこまで言ったとき、サナが起き上がる。
「んむぅ?」
「は! で、弟子にしてください!!」
迷惑そうにむくりと起き上がったサナを見るなりヒルダはそう叫んだ。
まだ眠そうなサナは、寝起きに頭を下げられて何だかよくわからぬままただただキョトンとしている。
「……はい?」
少し考え、ただただ意味不明だという結論にサナは達し、辛うじてそう口にした。
そして部屋に、静寂が満ちる。
↓
状況を整理しよう。
先ず、サナが【決闘祭】で優勝した。
次に、ギルドベースに戻るとサナが決勝で戦ったヒルダがやって来た。
そして、弟子にしてください。と。
「というわけですお願いします。」
「いや何が?」
ケロッとした顔でそういった狐人種の少女にサナは心底面倒そうに答えた。
「先ずどういうわけなのさ。それを教えてよ。」
「は、はぃ。えとえと、ボクと【決闘祭】で戦った時に、完璧に負かされて、ど、どうしたらあそこまで強くなれるのかなって思ったんですぅ。同じギルドにいれば強さの秘密もわかるかなって思ったので、このギルドに入れて欲しいのです。」
「ふんふん。ん?」
適当に相槌を返して、ふと気づく。
あれ、この子と戦ったっけ?
狐耳金髪ロリ巨乳美少女なんて【決闘祭】出てたっけ?
いやいない。出てたらまともに戦えていないはずだから。
ならあの子は何だ?
取り敢えず訊いてみよう。名前を聞けば思い出せるかもしれない。
「で、名前は何?」
だが、あまりに直球なその質問は、その場のサナ以外を凍らせた。
◆┫「は! で、弟子にしてください!!」┣◆
「さ、流石師匠。あの程度では全然だめだということですね!」
一人すぐに復帰し、謎な解釈を始めたヒルダにつられてナユナとロゥラも解凍された。
「推測:そういうことではない。」
「サナ様、あちらの半獣はヒルダ・フク・レトラス、【決闘祭】決勝戦のサナ様との対戦相手でございます。」
「ナユナ、ケモミミっ娘を半獣とか言っちゃぁ――って、え?」
あまりの衝撃に、反応が遅れるサナ。
「あの決勝の?! 周りより若干強かったレベル12の娘?!」
「そ、そうですぅ。何でボクのレベルが12って知ってるかは見当が付きませんが、そうですぅ。」
「嘘、だって……」
すっかり目を覚ました様子のサナは、改めてヒルダをつま先から頭までじっくり見て、
「かんっっぜんに別人じゃん!」
そう叫んだ。
戦っているとき、ヒルダの眉も細い目の端も吊り上がっていて、どことなく強そうなオーラを出していた。さらに口調も強く、口喧嘩ではとても勝てそうにない。
一方今は、眉はハの字で大きな目もタレ目。強そうなオーラは全く感じられず、おっとりと柔らかい印象が強い。口調も角が無く、常におどおどしているようだ。戦闘時の面影は一切ない。
戦闘となると人が変わったようになるという者は多いとは聞くが、ここまで変わるものだろうか。
一先ずサナは湧き出る疑問を抑え、そういうものだと思い込むことにした。
「……まあいいか。で、何だっけ?」
「リアノナさんの弟子にしてください!」
「嫌だよ。」
「な、なんでぇ?!」
食い気味に即答され、半ば涙目で訊くヒルダ。
「だって面倒そうだし。」
そして返された理由に涙が目から零れそうになるヒルダ。
流石にサナも見かねたのか、「でも――」と続ける。
「ギルドに入るくらいはいいよね?」
「はい。問題はないかと思われます。」
そのやり取りにヒルダはぱぁっと顔を明るくさせ、
「よろしくお願いします!」
と、力強く答えた。
実は結構ヒルダ気に入ってます。
やはりケモミミ美少女は至高。




