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俺の経験値だけ時間制だった  作者: リリエル
決闘祭と……
18/20

#17 「(《小さな呪い》)」

今回はいつもより多めです。

【決闘祭】が始まる。

 集会所の隣にあるチケットの販売所は非常に賑わっており、なかには自分をアピールしている駆け出し冒険者もいるようだ。

 サナたちは長い行列を見て、前日に買っておくんだったと後悔するが、仕方なく並ぶことにした。


 ↓


【決闘祭】直前になって、サナは一つ心配なことを思いつく。

「このレベル、大丈夫かな……」

 サナのレベルは今や92880である。どう誤魔化したものか。


 が、まあ

「大丈夫か。」

 幸いにもサナは10歳の少女だ。子供の冗談ということで通じるだろう。……中二病患者を見る目をされるだろうが。

 精神(SAN値)を回復できるようなスキルは出ないだろうか。


 さて、そろそろ時間になる。

 闘技場へ行くとしよう。


 ↓


≪予選Aブロック第二回戦 サナ・イル・リアノナ対リュン・サエ・ルクル≫

 いよいよサナの出番だ。


【決闘祭】はトーナメント形式で行われ、予選のブロックの中で一番白星が多かった冒険者がトーナメントに進める。相手が降参と宣言するか、気絶させるか、審判の判定で優勢と判断されれば勝ちとなる。

 予選はA~Hブロックまであり、総当たりで戦い勝敗を決める。


 というわけでサナは先ず、その初戦の相手であるリュン・サエ・ルクルと戦うことになっている。

「(さて、どこまで力を出したらいいかな……)」

 しかし、既にレベルが100000を超えるサナは、どこまで手加減したら対等に戦えるだろうかと悩んでいた。


 相手のレベルは5。

 レベルも普通はそう簡単に上げられるものではなく駆け出しでレベル5というのはなかなか高い。比較対象がおかしいだけで、【決闘祭】に出場しているメンバーの中では(サナを除いて)トップクラスだ。

 今回の【決闘祭】で注目を集めている冒険者でもある。


 今のサナなら、かるーくキックしただけで最低でも致命傷だろう。

 レベル差がひどく大きいので、リュンからサナへの攻撃は全く届かず、逆にサナからの攻撃は抜群に効く。

 自分の攻撃で死ななければいいのだがと思うサナに対して、10歳のおんなのこ相手に大人げない程に本気を出して積極的に攻めてくるリュン。


 だがその攻撃は、一切当たらない。


 彼が下手というわけではなく、単にサナが躱し続けているというだけだ。

 当たっても多分痛くないはずだが、とはいっても剣で斬られるのは痛そうだと思うので、サナは躱し続けている。【決闘祭】では木刀で戦うのだが、どっちにしろ痛そうだ。


 躱すのは大変かと思いきや、そうでもない。

 彼が下手というわけではなく、これもレベル差の影響だ。

 レベルが5()も離れていると、最早相手の動きは止まって見えるのだ。


 当たらない自分の剣に、リュンは怒りを募らせる。

 そんなリュンに、サナは申し訳なさそうな顔をしながらも、躱す。だって痛そうだから。


 いい加減躱し続けるのも飽きてきたので攻撃することにした。

 といっても木刀で殴ったりとかそういうことではない。魔法を使う。

 少し前から興味があった魔法があるのだ。《小さな呪い》という魔法だ。


《小さな呪い》はどうやら宴会芸に分類されるらしい。

 説明には「対象に小さな呪いをかける。からかうときや小笑いがほしい時に便利。」とある。

 呪いって何ぞやと思ったサナだが、宴会芸という枠にあった魔法だからそういうことなのだろう。


サナはリュンをロックして、頭の中でその魔法を唱えた。

「(《小さな呪い》)」


 サナが魔法を発動すると、

「ポンッ」

 という高い破裂音を立ててリュンの鼻から花が咲く。


 唐突に鼻から花が咲いたのがシュールで、自分でやったくせに思わずクスッと笑ってしまう。

 観客席からも、気づいたものからは失笑が漏れる。


 それによってリュンのサナへの意識が逸れ、大きな隙ができる。


 その隙にサナはリュンに防御力強化の魔法を掛け、キックする。防御力強化の魔法をかけたのは、リュンが死なないようにするための保険だ。

 リュンは大きく吹き飛び、闘技場の壁を砕いて止まった。


 サナの攻撃の威力にざわつく場内。

「や、やりすぎた!」


 ◆┫「(《小さな呪い》)」┣◆


 客席からいろいろ言われた気がするが時間の都合上強制カットだ。

 その後も加減の仕方に気を付けつつ順調に勝ち進み、いよいよ決勝である(途中の試合の様子は似た感じだったので省略する)。


《決勝 サナ・イル・リアノナ対ヒルダ・フク・レトラス》

 なんと決勝には期待されていた冒険者は一人も残らず、サナと狐人種の少女が残った。

 二人の投票率は合わせて1%あるかどうかというところで、全く注目されていなかった冒険者である。


 ただ注目されていなかったとはいえ、この場にいる以上ヒルダの実力は確かだ。

 大凡の強さを確認するために、サナはこっそりとヒルダのステータスを覗いてみた。すると、

「(レベル12?!)」

 冒険者になってからたったの二ヶ月でレベル12だという(サナはそれを遥かに上回っているが)。

 レベル5程度で注目されていたことを考えると、その凄さがわかるだろう。


「あなた、強いのね。」

 不意にヒルダが話しかけてくる。

「まあ、ちょっといろいろあってね。」

「妬ましい。」

 ヒルダの視線が殺気を帯びるが、サナは空笑いで流す。


 ふとヒルダは一蹴りでサナの懐まで入ったかと思うと、力一杯木刀を振った。

 あまりの動きの速さに観客もついてこれていない様子だ。

 だがサナ。

 その攻撃を簡単に躱して距離を取り、自分に移動速度上昇の魔法を掛ける。


 淡い青色の光がサナを包み、次の瞬間には、ヒルダのところまで間を詰め、木刀を一振り。当てるつもりはない。

 その一連の動きはあまりに早く、ヒルダすら捉えることは出来なかった。


 移動したときにおこった風と、木刀を振ったときにおこった風とが合わさって、竜巻のような強風が起こる。

 その風に巻き込まれ、ヒルダは壁際まで飛ばされてしまい、更に着地時にバランスを崩し、大きな隙を作ってしまう。

 そこでサナは満を持して気になっていた魔法を発動する。


「《ゲブの怒り》」

 サナは木刀を地面に突き刺した。

 突き刺さったところには小さなクレーターが出来、ヒルダが今立っているほう目掛けて一直線に地面が割れていく。

 ヒルダの真下まで来た時、ヒルダを押し上げるようにして高く突き出て、慣性に従ってヒルダは空中に放り出される。高さは凡そ4メートルだろうか。


「やっべやり過ぎた」とサナは少し焦る。

 少々飛ばし過ぎただろうか(物理的に)。


 慌てて風の魔法でヒルダの下に空気のクッションを作る。

 だがそれは狐人種の特性を活かして着地体勢を整えていたヒルダには逆効果で。

 ヒルダはバランスを崩して転倒。暫く起き上がらない。

 生きてはいるようなので大丈夫だろう。なんとなく気分的に周りに花を咲かせておいた。非常に絵になる。


 サナがヒルダで遊んでいると、唐突にヒルダが笑い出す。

「……?」

 訳も分からずただ不思議そうにヒルダを見つめる。


 そして急に笑うのを止め、暗い口調で話し始める。

「久しぶりだよ。ああ。久しぶりだ。強くなったと思ったんだが、まだ駄目か。なら――」

 するとヒルダはよろよろと立ち上がり、木刀を構えて、消えた(・・・)


 いや、正確には消えていない。認識できない速さで移動しただけだ。

 現にほら、今サナの後ろに――

「――フッ!」

 サナはヒルダの一撃をもろに受けた。


「いったッ――くない?」

 数メートル程ノックバック。木刀で打ん殴られた条件反射で痛いと叫ぼうとし、だがレベル差のおかげであまり痛くはなかった。

「なんだ痛くないじゃんビビったわー」とへらへらと喋るサナとは対照的に、信じられないといった顔をしているヒルダ。しかしそれも一瞬。

 すぐに移動し、また背後からサナを薙ぐ。


 今度はサナもそれに対応することができた。

 サナが木刀でガードすると、互いの木刀がぶつかり、高く乾いた音が響く。

 衝撃でヒルダの木刀は折れ、反動でヒルダは飛ばされる。

 闘技場の中央付近で戦っていた二人だが、生じた衝撃波は闘技場の壁の表面を砕く。


 そして、決着のアナウンスが聞こえる。

《勝者 サナ・イル・リアノナ》


 ただ、勝った本人は意味不明そうにぽかんとしている。

 負けたヒルダは折れた木刀を悔しそうに見つめている。


 そこへ職員が駆け寄ってくる。

「優勝おめでとうございます。リアノナさん。」

 が、サナにはなんで優勝したのかがわからなかった。


「えっと、なんで勝ったんです?」

 さっぱりわからんといった様子のサナは、目を(こんな感じ)にして、説明を乞うた。









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