#16 「(一刻も早く抜け出さねば!)」
【レベル差】
レベルというシステムがある以上、絶対に起こるものだ。
レベルに差がありすぎる場合、レベルの低い方からの一切の攻撃、また補助魔法を受け付けなくなり、逆にレベルの高い方からの全ての攻撃、また補助魔法は絶大な効果を発揮する。
──そんなわけで……
「そっか。」
《な、何故だ》
相対的に見てレベルが低すぎるドラゴンの攻撃は、サナには通らなかった。
見るとドラゴンのレベルは31。これは超一流の冒険者以上に相当する。
ギルドでクエストを発行するなら、レベル制限は35くらいに設定されるだろうか。
対してサナのレベルはそれより二桁、もしかしたら三桁違う。
童話に出てくる英雄は、大抵レベル100か、多くて200だ。
……サナを基準に話すと、何もかもがごみのように見えてくるのは気のせいではないはずだ。
事実ナユナも町で一番強い冒険者だったことを忘れていた。
詰まるところドラゴン程度ではサナを倒せないということだ。
……ドラゴンは自分よりも圧倒的に強いものに服従し、忠誠を誓う習性があるという。
といっても、ドラゴンを超える強さなど、それこそお伽噺か国王の側近の騎士くらいで、そうそう聞く話ではない。
況してサナはただの10歳の少女だ。ドラゴンに忠誠を誓われるなどあり得ないと思うだろう。
──傍目から見れば。
サナのその力を前にドラゴンは戦意を喪失し、四肢と──いつの間にか回復していた──翼を丁寧に畳んで頭を垂れる。それがドラゴンが本能的に行う絶対忠誠の姿勢。
その表情は(ドラゴンなのでよくはわからないが)なんとも言い難い悔しさと嬉しさがあった。
恐らくあのドラゴンは今まで強さで負けたことはなかったのだろう。
初めて負けた悔しさと、初めて己が主として相応しいものを見つけた嬉しさとが鬩ぎ合っているといった様子だ。
そんなドラゴンの内心は知らず、サナはただ目を真ん丸くしていた。
↓
というわけで、ドラゴンが仲間になった。
一行はもう少し奥まで探索してから切り上げ、町に戻ることにしたのだが、依然そのままの姿でいるドラゴンに対し「何とかならない?」とサナが訊いたところ、ドラゴンは可愛らしい三毛猫の姿に変化した。
これなら町にも連れていける。
というかさっさと三毛猫の姿になっとけばよかったのにとサナは内心呟いた。
それはもうもっふもふで暖かそうでキューテストで思わず抱き締めたくなるようだという理由もあるが、探索中ナユナとロゥラがビビりっぱなしで可哀想だったからだ。
……決して前者が本命の理由ではない。と、思いたい。
◆┫「(一刻も早く抜け出さねば!)」┣◆
探索で手にいれた素材を換金し、最低限を残してサナのチケットを125枚分購入してきた。
今はロゥラの提案で集会所に併設された銭湯に来ている。三毛猫は家で留守番している。
「(やっぱり来ちゃいけない気がするな……)」
──【女湯】
男なら誰もが例外なく一度は覗いてみたい場所。想像上の天国。
しかしながら、実際に、合法的に、強制的に、入るとなるとそうでもないのかもしれない。
多分女湯は覗くからいいのだと思う。
小さな穴から絶対的なR18をいつバレるかわからないドキドキと背徳感とともに覗くからこそ興奮するのであって、サナのこのシチュエーションだと、圧倒的な場違い感がそれらに勝り、萎える以前に興奮出来ない。
なのでサナは、
「(一刻も早く抜け出さねば!)」
という顔をしていた。
……「勿体ない」、と思うものは少なからずいるだろう。
だが実際にこうなるとそんなことを考えている余裕はない。と思う。
今日は人が多くいるらしい。普段をサナは知らないが、ナユナが言うのだからそうなのだろう。
というのもこの銭湯は集会所が経営しているだけあって、戦闘に役立つ効能がある湯があり、明日からの【決闘祭】に備えている新米が集まっているのだ。サナもそういう訳で連れてこられたことだし。
ちなみにクエストに出発する前にここに寄る人も多いという。
逃げ出そうとすることを考えすぎて挙動不審になっているサナを見たナユナは、退路を断つようにサナの服を脱がせて行く。
必死にサナも抵抗するが、力を込めすぎると服が破れてしまうので、うまく抵抗できない。
結局全裸に脱がされた。
二人がそうしている間に、ロゥラはさっさと体を流し、湯船に浸かっていた。
同じものでもシチュエーションが違うと感じ方も変わりますよね。




