#14 「そう言えば明々後日は【決闘祭】でございましたね。」
紅魔種からのお願いを叶え、三人はナユナの家もといギルドのベースに帰っていた。
報酬としてロゥラの料理を食べたサナとナユナは、とても満足そうな顔をしている。
しかし一方で、ナユナのギルドは深刻な問題を抱えていた。
その問題とは即ち、資金不足並びに食料不足である。
先日、白竜のクエストを達成したナユナたちだが、未だに報酬は受け取っておらず、更に報酬を受け取れる期限が、ちょうどさっき切れてしまった。
その上ギルドメンバーが短期間に二人も増えた。
料理番であるロゥラは、在庫の乏しい食料でなんとか上手く遣り繰りしているといった状況らしい。
なんとかしなければと、ナユナがそう思っていると、ふとあることを思い出す。
「そう言えば明々後日は【決闘祭】でございましたね。」
ナユナの呟きを傍で聞いていたサナから、随分と急だねと言う声が聞こえるが、ここ数日は内容の濃い日が続いていたことだし、忘れていて無理もない。
「で、えっと決闘祭?って何。また物騒な名前だけど。」
名前だけ聞いたサナは、血生臭い、殺伐とした感じをイメージしていた。
確かに「決闘」という言葉にはあまりいいイメージは湧かない。
しかし【決闘祭】は重要な行事なのだ。
「【決闘祭】は、冒険者登録から二ヶ月未満の冒険者同士が戦う行事でございます。」
この行事には、二つの意味がある。
一つは、新米冒険者に己の力量を知ってもらい、自分に対する傲りを払うため。
力量に合わないクエストを受けて事故が起こることを防ぐ効果がある。
一つは、経済を回すため。
観客も、ただ試合を観ているだけではない。競馬のような賭博行為を公式で行っているのである。
誰が優勝するかを予想し、一人一種類限定でチケットを購入する。
チケットが当たれば、チケットに支払った金額×(200%-投票率%)の数値で換金できる。
ただし外れればチケット代は帰って来ない。
また、チケットは何枚でも買うことができる。
戦いはトーナメント形式で、【決闘祭】の優勝者は、全体の売上の一割を賞金としてもらうことができる。
「──という行事でございます。」
「なるほど。で、それに出ろと。」
サナは何となくナユナの言いたいことを理解して先に言った。
「……お察しの通り。」
なんと言うかナユナは微妙そうな顔をしてる。
図星を差されたことが不満なのだろうか。
それともサナに対して間接的に命令をしていたことに気づいたことで落ち込んでいるのだろうか。
さて、差し当たってサナが【決闘祭】に出場することとなった。
ナユナは言うまでもなく、ロゥラは冒険者になってから既に二年以上経っているため、【決闘祭】に出場することは出来ない。
「応援:サナ、頑張って。」
「今年は強者揃いという噂ですが、サナ様とは桁違いの強さでございましょう。弱すぎて。」
ギルドの今後のためにもこれは負けるわけにはいかない。
……尤も、サナが負けるはずが無いのだが。
◆┫「そう言えば明々後日は【決闘祭】でございましたね。」┣◆
「ところでサナ様、失礼ながら今のレベルはどれ程でございますか?」
あまり重要なことではないが訊いておきたいこと。
サナのレベル。
サナがこちらの世界に転移してからはや五日。
五秒に一度のペースで常にレベルが上がってきたサナは、さてどれくらいのレベルなのだろうか。
「えっとね……」と、視界の右下に見える自分のステータスのレベルの項目の桁を数えていくサナ。
ナユナとロゥラは桁を数える程高いレベルのサナを羨ましく思いつつも見ている。
「86400くらいかな。」
くらい、と言ったのは常にレベルが上昇し続けるためだ。
サナが自分のレベルを数える様子を見ていたロゥラからなにやら質問があるようだ。
「質問:サナ、レベルを数える時、何故登録証ではなく右下を見る?」
ナユナも気になるようで、二人はじっとサナを見つめる。
ふむ。これは答えるのが難しい質問だな。
普通はレベルなんて滅多に上がらないので、登録証を見れば直ぐに自分のステータスがわかるはずだ。しかしサナは直ぐにレベルが上がるため、数分後には全く違う値になってしまう。
これがまずサナがステータス確認に登録証を見せない理由だ。
そして次の右下を見る理由だが……
「んとね、人には言えない秘密、ってやつ?」
それについての上手な説明が思い付かず、サナは逃げることにした。
↓
建物と建物の間の路地。
日が当たり明るい通りとは対比的に、真っ暗なそこには、サナたちとはまた違う理由で、【決闘祭】で優勝を目指しているものがいた。
「ボクは負けるわけにはいかない。この【決闘祭】で、必ず優勝して、そして……」
よく考えたらまだ全然物語の日付が進んでませんね!




