#12 「サナ様、本来の目的をお忘れなきよう。」
簡単にそう答えたサナ。確かに大まかであるが、だいたい合っている。
だがロゥラはどこか不満そうだ。
「主張:リアノナ、その話し方をやめて欲しい。」
どうやらサナに話し方を真似されたことが不満なようだ。
普段はなんとなく感情のないロゥラの顔が今は全力で不満を表したいのか、むすっとしている。
取り敢えずサナは謝っておくことにした。
「あ、ごめんね。ロゥラさんのその話し方がずっと気になってて、ちょっと真似して見たくなって。」
「この喋り方は紅魔種が紅魔種たるためのものなんだ。だから勝手に真似ないでもらいたい。」
やり取りを横で見ていたリィドからも言われた。
それほどこれは重要なものなのだろう。
となると何故リィドはその話し方をしていないのだろうか?
何か理由があるに違いないと、そう思ったサナを察してかリィドはこう付け足した。
「尤も、我輩は単に文の頭にサ変動詞を付けるのが面倒だからという理由で普通に話している訳だが。」
……イレギュラーなものの全てが意味深長ではないことを理解したサナだった。
さて、とリィドは二人が食べ終わったのを見て、本題を持ち出す。
「リアノナさん、イミルムさん、二人に我々紅魔種からお願いがある。聞いてはくれないだろうか。」
急に場の雰囲気が変わったのを感じたナユナが、ピクリと反応する。
こういうことはサナはあまり得意ではないのでナユナに任せておくことにし、その意でナユナと目を合わせ、頷く。
「お願いとはどの様なものでしょう。」
ナユナはそれを見事に読み取り、頭を冷やして聞く。
リィドは慎重に、言葉を選んで話す。
「紅魔種では倒せない魔物の討伐をしてもらいたい。」
「紅魔種では、というと?」
「我々は魔法を使うことが出来る。が、逆に言えばそれしか出来ない。我々では倒せないというのは、その魔物に魔法が効かないからだ。」
魔法が効かない魔物、と聞いてナユナは訝しげな顔をする。
ナユナは魔法を使えないが、発見されている全ての魔物に魔法が効くことは知っている。
雰囲気から、リィドが嘘を言っているとは思えない。だからより怪しく感じる。
どうするべきか。
隣で一緒に聞いていたサナに目を遣る。
すると無邪気な顔でこちらを見て軽く首を傾げる。
宛ら、何を迷っているの?と言うように。
サナのその表情を見て、ナユナは駆け出しの頃を思いだし、柔らかい笑みを浮かべて、答えた。
「わかりました。お請け致しましょう。」
◆┫「サナ様、本来の目的をお忘れなきよう。」┣◆
―――――ナユナ・サエ・イミルム。
21歳にしてレベル25という、驚異的な早さで一人前となった彼女は、その容姿の美貌もあり、町ではかなりの著名人である。
彼女がここまで強くなれたのには、今は亡き4つ下の妹の存在が関係している。
10年前、彼女とその妹は、軽い散歩の感覚で森を歩いていた。
この道は、いつもの散歩コースであり、二人にとっては慣れた場所であった。
慣れていることに気を抜いた妹は、いつもと違う道を通ってみないかと提案した。
当然ナユナは、この道を少し外れると、もう魔物で溢れていることを知っているので断った。
しかし妹はそれでも行きたいと駄々を捏ねるので、仕方なくナユナは少し道を外れることにした。
案の定というべきか、結果から言うと、妹は魔物に殺された。
道を外れて5分もしないうちに大型の魔物に出会し、そのままキルされた。
その時に自分が妹を守れなかったことから、自己嫌悪に陥った。
数日は自室に籠り、また、何も食べられない状態が続いたという。
やがてそれを受け入れ立ち直ると、一人でも自分と同じ思いをする人を減らすため、冒険者になる道を選んだ。
せめてこれが妹のためになれば、と。
誰かが困っているのなら、問答無用で助ける。
ただ見捨てて後悔するより、助けられなくて後悔する方が幾分ましだ。
そう考えながら今日まで冒険者をしていたつもりだったが、いつからそれを忘れてしまっていたのだろうと、サナをみてそう思ったのだった。
↓
取り敢えずその魔物のところに案内してもらうことにした。
魔法が効かないからといって物理攻撃もそうであるということではない。寧ろ物理攻撃に弱いかもしれない。
そういった確認の意味も込めて一度見てみる。
尤も、サナがいれば倒せないはずがないのだが。
暫く歩いて、町外れに来ると、いよいよ民家はなくなった。
目の前には草原が広がり、快い風が吹く。
ここに寝転がったらきっと気持ちいいだろう。
サナはここをお昼寝スポットとして登録しておくことにした。
が、その絶好のお昼寝スポットにポツンと、異物感を放つ、大きな岩みたいなものが存在する。
それはせっかくの草原の、その快い雰囲気を台無しにしている。はっきり言って邪魔だ。
サナはその邪魔物を排除すべく、それに向かって歩こうとし、ナユナに捕まった。
「サナ様、本来の目的をお忘れなきよう。」
「……はい。」
あれは後で排除するとして、今は例の魔法が効かないという魔物を探すとしよう。
「リィドさん、その魔物って、どんな奴?」
一先ずこの中で一番詳しいであろうリィドに訊いてみる。
するとリィドはさっき排除しようとした邪魔物を指して、言った。
「あれだ。」




