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理不尽異世界ファンタジーライフ!  作者: 星月なつ
第1章 異世界という希望
6/20

第6話 挫折

「うおぉー! なんか世界の宿泊所って思ってたよりよりいいな!」

幸太が感嘆する宿泊所の中は、扉を開けると細長い空間がある。


その空間の側面の壁にドアがあり、ユニットバスのようになっている。


トイレは和式を想像させる世界観であったが現代と何も変わらない。風呂も同様である。


最後に、細長い空間を抜けるとベッド二つ分はいる部屋。

ベッドとベッドの間には、机と椅子が用意されていた。


部屋全体、床に黒いマットがひかれいるのがどこかおしゃれである。


「この世界は宿泊所だけ幸太のいた世界とほとんど変わらない作りになっているみたいですね〜」

ルリはご機嫌である。その光景を見て幸太は自分もルリくらいの年の時、ホテルで泊まるの好きだったなーと思い出す。


「それじゃあお風呂はお先に行かしてもらいます」

ルリが丁寧に頭を下げてユニットバスの中へと入っていった。


「りょうかーい。着替え忘れん……」

着替えを忘れんなよー!……そう言おうと思ったのだが。


「んー? 何か言ったです?」

やはり不自然になりルリは聞き返す。


「い、いんやー? 何にも言ってないぜ?」

幸太の声質が明らかにいつもと違う。


「そうですか。ならいいのですよ。」

ルリはそう言ってユニットバスのカーテンをしめた。


「やめた方がいい……。しかし男ならここは引けない! 言うんだ幸太! そして中に……!」

幸太が言うことはつまりこうだ。


「ルリー。着替え忘れたぞー?」と言ってユニットバスの中に入る。

その後は健全な男子ならば皆そのカーテンを開けようとするだろう。

しかし幸太はノープランである。


「どうすれば……。はぁっ!? 俺は天才か!」

ただの馬鹿である。


「着替えを置いておくと言ってユニットバスへ入り、足が滑ったと言ってコケる! その瞬間カーテンをめくれば……! いける!」

無理であろう。


「行くぞ俺……!!」

小声でひとり雄叫びを上げる。


が、幸太は気付く。ないのである。着替えが。あわよくば下着を見ようという幸太の企みも去っていった。


「な、なんで……!?まさかの着回しタイプ!?いやあいつに限ってそれはないだろう……」

確かにルリは風呂に入る時下着を持っていっていなかった。


しかし謎は簡単であった。


数10分後。ルリが風呂から上がる。


「ルリー? お前着替えどうしたんだよ」

冷静を装ってベッドに座っていた幸太が聞く。悲しい半分謎の怒り半分である。


「あー、魔法陣から取り出したんですよー。そうそう。バスタオルこれ使ってくださいね」

そう言うと黄色い魔法陣を作成して大きなバスタオルを取り出す。


「あ、そうだったんだなー」

ちくしょうなんて便利なんだ!

幸太の心の声である。


「まぁ覗きに入ろうとしても無理だと思うけどねぇん」

語尾に音符マークでも付いているかのような言い方だ。何故か楽しそうである。


「な!? そんなことしようとしてねぇよ!まぁいいや。やっぱりさ、ルリくらいの年頃だと宿泊所に来るのって楽しいことだったりするの?」


「うんうん! いつもと違うところってのもあるかもしれないけどよくわかんないくらい楽しい!」

よく分からない説明がどこからか幼さを感じさせる。普段はキャラを作っているかのようだ。


「そっかぁ〜 まぁそうだよな!じゃあ風呂行ってくるわ!」

そう言ってグッドサインを見せて風呂に入る。


「はーい」


そのままの流れで幸太は風呂を上がり、ベッドに潜る。

部屋の明かりも消している。


「なぁルリー。思ったんだけどさ、俺ら宿泊所って言ってるけどなんでホテルって言わなかったんだ? ホテルのほうが言いやすくね?」

幸太の単純な疑問である。


「それは幸太さんという1匹の雄が興奮するといけないからなのです」

会ってから時間が経つ度ルリの罵倒の仕方は過激に、心に刺さるようになってくる。


「え!? 俺そんなふうに見られてたの?心外だわー」

棒読みではあるが内心かなりイラついている。


「逆にそうなると気を使われていたのを気づかない幸太さんがおかしいのですよ? 女の子にこんなことを言わせるなんて」

ごもっともであるルリの意見。


「はいはい……。このド畜生」

最後の文は小声である。


そうして異世界生活一日目は幕を閉じた。


そして二日目の朝である。


「てめぇ出てこいやオラー!!!」

宿泊所改めてホテルの早朝のことである。もはや女の声かわからないほどガラガラした恐ろしい声がホテルの廊下に響き渡る。


用があるのは幸太だ。

クエスト出発前にチケットを渡した女性である。


「な! なんだ!?」

幸太は目覚める。

「んー……? なぁにぃ?」

ルリは目をすりすりと擦る。超可愛い。


「ちょ、ちょっと行ってくる……」

幸太が恐る恐る足を動かしドアを開ける。


その瞬間だった。女はドアの隙間に手を入れこみ幸太を隙間から覗き込む。


「アハハー……いたいたぁ。昨日きてっていったよね?」

女の低い。そして怖い声。


「え、それは多分あのー……。人違いとかゆうやつ? ですよ!」

苦し紛れの言い訳。幸太は冷や汗まみれである。


「そぉう? 嘘ついてんじゃねぇよボケェ!!」

「ひぃぃぃい!?」

幸太は女の声に驚きドアを閉めようとするが間に挟まっている手がドアを閉めさせない。


「あんたのせいであたしは散々店長に叱られたんだよわかるかい?」

「あ、はい。わかります。すいません」

女に適当な返事を返す幸太。

そしてそれを何やってるんだかと眺めるルリ。


「わかるわけねぇだろ!だって見てないんだもの! あと一人で目標人数だったのに……」

「そ、それは災難でしたね……」


そう幸太が言った瞬間だった。


「てめぇのせいだよー!!!」

ドアを突き破って女の拳が幸太の腹部にヒット。

そのままホテルの壁を突き破り飛んでいった。


「理不尽だーーーーーー!!!」

落下場所は商店街のど真ん中。頭から落ち即死であった。


幸太が目を覚ますと不思議な空間にいた。幸太は理不尽すぎる死を遂げたのだった。


幸太の最初の一言がこれだ。

「女って怖い……」

そしてもう一言。

「もうこの異世界で生きてける気しねぇ……」


そうして幸太は、異世界で生きていく事は不可能なのでは……と膝を落とした。

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