第3話 クエストへ!
高校二年生の引きこもり。幸太は突然の死を遂げた。
その後目を開けるとそこには不思議な空間が広がっていた。
その空間に佇む美女の提案により二つの選択。異世界へ行くか現実世界にまた戻るか……。
答えは当然異世界へ。
転移し、落ちた場所は異世界の刑務所の様な役割を果たす場所だった。
そこで捕まった所を白髪の少女ルリに助けられ今に至る。
「なぁなぁ 俺の服何も違和感なしに着てたけどいつこれ着替えさせたの?」
床は黄色っぽいレンガ。布でできた簡易的な屋台が広がる中、幸太はふと不思議に思った。
なぜなら不思議な空間に至るまではパンツ1枚だったのだから。
因みに今は茶色いブーツに紺色のジーンズ。白い長袖シャツと言った異世界お決まりの服装だ。
体自身に変化はなくいつも通り、166cmで、紺色の髪の毛と目。
普段から眠そうな顔をしているのも変わっていない。
「えーと……。そこに触れてしまいますか?」
屋台の中を歩きながら幸太の質問にルリは言葉を返す。
「え、だって気にならない?これも魔法かなんかだったりするの?」
両腕を頭の後ろに組みながら幸太はダラダラと歩く
「え、えぇまぁ魔法です……。はい」
ルリは言葉上そう返すが真実を言うとこうである。
幸太は不思議な空間に連れていかれた時下着を脱がされていた……。
因みに幸太は現在気づいていないが下着も全く異なるものとなっている。
「へぇー。魔法ってすげぇんだなぁ」
真実を知らせられること無く、幸太は感嘆する。
「はい。すごいんです……。まぁそれはいいとして今どこに向かっているのかご説明しますね」
ルリは黄色い魔法陣を作り出し、そこからまるでさびたかのような色をした地図を取り出し、幸太に見せる。
「おう、頼むわ」
幸太はその光景を見て異世界に来たんだと改めて実感した。
「簡単に言うとクエストを受けるとこ」
そう言ってルリは地図に指を指す。
「今いる場所がここで、今から行くクエストを受けるところがここ」
現在地を指さしてから指をずらし、現在地から南側にある区域に指を当てる。
「いきなりクエスト受けに行くのか?それって大丈夫なのか?」
幸太はルリに聞いた。なぜなら、せっかく異世界に来たのに即死では悔やんでも悔やみきれない。
「まぁ大抵の事は大丈夫です。蘇生魔法も使えますし」
そう言いながら地図を折りたたむ。そして先ほどと同じように魔法陣を展開し、取り出すとは逆に中へとしまった。
「え、なに? 俺って死ぬ前提で連れてかれてるの!? まじシャレになんない。イジメ駄目。絶対」
「まぁまぁ、安全な場所にいてくれるだけでもいいですから」
ルリはそう言ってグッ! と親指を上げて幸太に見せつける。ドヤ顔である。
「な、なんかキャラ変わってね?そんなノリじゃなかったイメージが……」
幸太は突然のキャラの変化に対応できず苦笑。
「そこら辺はテンションなのですよ。気にしなくていいのです」
ルリはうんうんとうなづきながら言った。
そう言えばと幸太は思い出す。捕まっていた時の「テへ」等。
いきなりテンションが変わるタイプなのだと悟る。
そんなこんなで話していると目標地点は目の前に。
「あれです。あの酒場みたいなのが集会所。クエスト受注所なのです。」
ルリは指さしていう。
「へえぇ。入っていいのか?」
「えぇ。大丈夫ですよ。」
その調子でルリと幸太は集会所へと入っていった。
中は木造で、まるで海賊が通っているような見た目であった。
中には異世界感満載の装備や武装をした人達で賑わっていた。
酒を飲むもの。話し合うもの。
「いらっしゃいませ〜! お客様今回のお目当ては何でしょうか。お2人様ステータスは登録されていますか? あまり見ない顔ですね」
男臭い雰囲気の集会所から、三つ編みのある少し長めの金髪。蒼眼。メイド服。
超絶可愛い美人メイドがカウンターから出てきて、顔を斜めにして2人に問いかける。
「い、異世界って最高だ……」
こんな変態。幸太はさっさと置いていくと言わんばかりにルリは事情を話し始める。
「この街に来たのは初めてなんです。住民票とステータスカード 後ギルド創設もお願いしていいですか?」
ルリは手慣れている。
「了解です! それではまずお名前と年齢を教えてください ギルド創設はそこの紙に所属するメンバーの名前、ギルド名をかいて下さい」
「えーと、名前はルリで14歳。この隣の変態は幸太。16歳」
ギルド創設の手続きをスラスラと進めながら説明する。
「そ、そんな事ねぇよ!変態ってなんだよおいー!! 聞き捨てならぬ!」
「あー……今日から同じ宿で一緒に暮らすんだー。こんな変態と一緒で大丈夫か心配ですー」
無表情で棒読みである。
苦笑いする美人メイド。
「え、えーと……。ルリ様と幸太様で宜しいのですね? それではステータスカードの方お渡し致します。そのカードを10分間肌身離さず持っていてください。そしたら二人の現状ステータスが出ますから」
ポケットの中からステータスカードと呼ばれるものを出し名前を魔法で記入する。筆記体だ。
便利なステータス機能を二人に説明し終わると「それではこれで。」とだけ言い残し店内のカウンターに戻っていった。
「それじゃあ十分間待ってましょう。ギルド創設届けはもう完成しました。 後は認証を待つだけです」
ルリがギルド創設届けを提出したのはやはりあの金髪メイドの元だった。
「はーい。いやぁ異世界ってすごいな! なんか感動するぜ」
目を輝かせながら集会所の一つの席に座る。
「勝手に興奮してて下さい。はぁ……そこら辺に水商売してるかわいい女の子がいるからハスハスしててくださーい」
呆れ顔で首を降りながら言う。
「な!! お前やめろよ誤解されかねぇだろ!?」
幸太がそう言った瞬間だった。
露出の多い格好にでかい胸。サラサラとした赤髪に蒼眼。
耳が長いことからエルフと見受けられる。
「おにぃさぁーん? もしかしてこの街に来てまだすぐだったりしますぅ? 良かったらうちの店にこ・な・い?」
でかい胸を幸太に押し付け1枚の筆記体で書かれたチケットを見せる。
「これ、うちの店の割引券なの。きて……くれるよね?」
目をうるうるとさせて幸太に詰め寄る。
「は……。はひ。行きます行きます」
幸太は鼻の下を伸ばし、チケットを受け取った。
「ありがとー!!じゃあまた今夜!」
ふふ。と笑い唇に手を当ててから幸太に背をを向けて集会所を出る。
「よっしゃぁぁあ! チケット完売ー!!! ちょろいヤツでよかったー」
集会所を出た瞬間表情を変えてこの態度である。女って怖い。
「えへへぇ……。可愛かったなぁ」
こいつもこいつである。
「はぁ。そろそろステータスが表示されてるんじゃないですか?」
ルリはむぅーっと頬を膨らませながら言った。
「あ、そうだな」
そう言って幸太はステータスカードを確認する。
幸太。レベル3。
PW 28
DF 16
SP 29
HP185
MP91
職業。無職
「まぁ来たばっかだしこんなもんか」
そう言って笑いながらステータスカードを見ている幸太に、ルリはドヤ顔でステータスカードを見せる。
「な、なんだよルリ」
幸太は目を細めながらルリのステータスカードを見る。
ルリ。レベル53
PW 1052
DF 2013
SP 2186
HP3982
MP5096
職業。アークメイジ。
カタカタと幸太は震える。
「あ、あのー? ルリ様? あんまりお痛なことしないでね? 」
「はいはい。そんなことしませんよー」
この女何かしてきそうで怖い。
幸太は頭の中でそう思い警戒対象に入れた。
「ギルド登録完了です! クエストを受ける時はあちらにある掲示板から選んできて下さいね! やりたいクエストがあったら私の元に持ってきてください。現地に行ける馬車を確保してすぐ行けるように致しますので!」
そう言って掲示板というのを指さした。
「了解です。ありがとうございました。」
ルリはそう言うと、ぺこりと頭を下げる。とそれをみて幸太も頭を下げる。
「後、難易度は星の数の多さでわかります。もちろん星が多ければ多いほど難しいです。それではがんばってくださいね!」
最後にクエストの説明を終えるとまたカウンターに戻る。
「お姉さん……。お名前なんて言うんですか?」
幸太は、カウンターまで行き、カウンターの荷物置きに肘をつき、美人メイドに顔を近づけていう。自分の中にある最大限のキメ顔で。
「え、えぇとー……。ルキナと申します。」
ルキナは苦笑し、困りながらも応える。
「へぇー。ルキナちゃんって言うんだ。よ・ろ・し・く」
本人、幸太はどう思っているか分からないが正直なとこかなりきもい。
「あ、はい……。よろしくお願いします」
ルキナもかなりひいている。
「もー、幸太何やってるの?クエストこれにするから」
☆3。草原にはびこるグリーンゴブリンを駆除せよ!
依頼内容は、グリーゴブリンを30体倒してほしということである。
「お! 定番モンスターのゴブリンか! こんなんにも瞬殺されそうで怖いが言ってみようぜ!」
そう言って2人はクエストを受注しに、ルキナの元へ行き、馬車を確保してもらった。
馬車に乗り込み幸太は言った。
「いざ、クエストへ!」
「おー」
幸太のかけ声に棒読みでルリが乗る。
そして馬車の運転手は真顔で何も言わず目的地へと馬を向かわせた。