第2話 異世界生活の始まり
「なんだよ……。 酷い仕打ちじゃねえか」
体操座りをそのまま横に倒した状態で泣きながら言う。
「大体こんなの乗らなきゃよかったんだ だって考えろよ幸太。異世界に行ったからってうまく行くとでも? 答えはNOだ。結局現実でダメなら異世界もダメってことか……」
幸太は自らに話しかける。もうそろそろやばいやつだ。
「はぁあぁぁ……。異世界なんか来なきゃよかったぜ」
幸太が愚痴をたれていた時だった。
「生きてますね。さぁでますよ?」
少女の声を聞き幸太はふと目を上げる。
と、そこには見覚えのある白髪の少女がいた。
「へ……?」
幸太はそれに対して間の抜けた声。
「だから出ると言っているのです」
「どうやって?」
幸太は白髪の少女に問いかける。
「ど、どうやって? え、えーと……。考えてませんでした。テへ」
舌を出しグーの手を頭に当てる。幼い顔が可愛さをより引き立たせる。
が、考えていないことに違いわない。
少女もごまかせるとは思っていない。
「グハッ……。異世界美少女の「テへ」に対する対抗は俺にはまだ無いみたいだ……」
ごまかせてしまった。
白髪の少女は呆れた目を幸太に向ける。
この男は女の子に弱い……。これが白髪の少女の第一印象である。
正直なめられても仕方が無いと言っても過言ではない。
「まぁ、転送魔法でなんとかなりそうだわ……。手を出して?」
鉄格子の間から少女は手を差し伸べる。
「……」
幸太は体操座りのまま少女をジト目で見つめる。
「? どうしたの? 早く早く」
少女は幸太を急かす。
「一つ聞いていいか? それってさ……。変なとこに転送されて落っこちるとかないよな?」
トラウマである。幸太は上空8m程の位置から落下した挙句捕まっている。
また変なところに落ちたら……。これが内心である。
「え、えーとね? 保証はないんだけど……」
両手の人差し指をつんつんとくっつけながら言う。
「保証ないのかよ! ぜってぇやんねぇこええよ! 俺はこのまま無罪判決を下されるまで待つ!」
白髪の少女に背を向け再び横になる。
「何言ってるんです? 無罪判決なんてこの時代ほとんどありませんよ? ちょっとした罪で首が飛んでしまいます」
サラッと真顔で言う少女に幸太はツッコミを入れる。
「この世界どうなってんだよ! そ、それなら死ぬより変なとこに落ちる方がましだ! 頼む!」
「わかりました! 行きましょう!」
少女は手を差し伸べ幸太はそれを掴む。
「神よ! 我らを美しき日の下へ導きたまえ!アルウーラ!」
二人の体を青色の光が包む。
今度はきっと……。そう願い目を開けた。
落下地点は噴水の上だった……
「まってくれぇぇええ!!!うおぼぼぼぼぼ……」
幸太が落ちた噴水は大きく水しぶきを上げ虹を作る。
その水の底からはぶくぶくと泡が吹き出てきた。
白髪の少女は噴水の囲いに降りた。
「ふぅ……何もなくってよかったです。」
「俺は良くねぇよ!」
少女が安堵の表情を見せるのと反対に幸太は怒りを表す。
「まぁ出れたんだしいいや。空がいつもより綺麗に見えるや。」
幸太は丸1日牢屋の中で光を見ていない。そう思うのも当然であろう。
「そして俺の大いなる異世界生活がやっと始まるんだー!!」
腕を振り上げる。ようやく幸太の異世界生活が始まりを告げた。
「そういえばお前名前なんて言うんだ?まだ聞いてなかったよな。
俺の名前は野々村幸太。16歳だ」
親指を自分の胸に当てドヤ顔をかます。
「えーと。私の名前はルリ。14歳です」
照れくさそうに下を向きながら自己紹介をする仕草は幼いということもあるがとても可愛らしかった。
「ルリちゃんって言うのかー! よろしくな!ルリちゃん!」
「よ。よろしくおねがいします えーと……。幸太さん」
幸太の勢いに驚きつつちゃんとルリは言葉を返した。