第18話 決意
「さぁてと……魔法ちゃんと使えるかなぁっと」
伸びをしながらフィールドへと足を運ぶ。
ソーマと対戦する相手、ビガルナは既にフィールドに立っており、準備万端という所だった。
露出の多い服に、ナイフ1本腰に差している。赤色の短髪に琥珀色の目。
軽装備な事から盗賊系統の職業を想像させる。
「なんかさー……俺の相手毎回可愛いじゃん? やりづらいんだよなぁ」
「そりゃどうも。冗談はそれ位にしときなよ」
「ノリ悪いなぁ……そういうの良くないと思うぜ?」
「はいはい」
ビガルナはソーマの冗談を軽く受け流す。
「開戦だーーー!!」
そんなやりとりの中、空気を読むことなく大男が開戦を告げる。
「おじさん空気読めよー」
「そんな事言ってる暇があったらこっちに集中したらどう?」
大男に「なんだよ」と目線を向けている中、ビガルナはソーマの懐へ。
「ごめんよ」
そう言ってソーマは後退してビガルナにむけて右手の手のひらを出す。
「確かイメージが大事なんだよな……」
そう言ってソーマは頭の中で爆発する炎を想像する。
するとソーマの右手から赤色の魔法陣が作成される。
その瞬間ビガルナの周辺は爆発した。
黒鉛が立ち込めた後、ビガルナのいたはずのフィールドは抉り取られビガルナは姿を消していた。
「これは勝ちでいいのかな?」
ソーマがそう疑問に思った次の瞬間、「終戦だー!!!」と大男が言ったので、「勝ったんだな」と確信する。
「さてー……ルリ終戦報告でもするかな」
そう言ってソーマは来た道を戻り、ルリとベルクの元へ。
「ソーマおかえり!」
と、明るいルリの声。
「ソーマさんおかえり!」
と、いつも通りのベルクの声。
「おう。魔法って案外簡単なんだな」
「それもチートの一つだよ。本当ならあんなどでかいの打ったらMP切れでバタンキューだよ」
ソーマに、また新しいチート機能を伝える。
「そだったのか。便利だなー」
「え、チートって何ですか?」
ソーマとルリの話を聞いて聞いたこともない単語を聞いて不思議におう。
それに対してルリは「え、そんなこと言ったけ? しらないよ?」と、シラを切り通した。
「あ、僕の聞き間違いですかね」
「そうそう」と、ソーマは苦笑しつつ、ベルクにチートについてごまかす。
「まぁとりあえず、大会に来てた人数的に次に当たるのはキアリスさんの可能性が高い。だから戦略みたいなの考えないとな……」
「そうですね。先程の戦いを見ても何もわかりませんでした」
ソーマの戦いが少しでも有利に……とベルクも頭を回す。
「まぁそんな事考るのもめんどくさいしフィールド全体氷で埋めるとかすればいいじゃん。そうすればいくら姿を隠してても当たるでしょ?」
「た、確かにそうですね……」
ルリの考えが一番合理的であるのは分かっているのだがベルクはなぜかそのやり方には気が引けてしまう。
戦術等関係なしに、フィールドを吹き飛ばすという発想自体がこの世界ではおかしいのだ。
ソーマとルリからすればチートを使っているため普通だが、並の人間には到底できない事だ。
「じゃあそれで行くか。確かに楽だし」
そしてソーマはそれに乗っかった。
「まぁ頑張ってください」
と、苦笑いでベルクが言った。
「おう」
そうしてソーマはまた選手控え室に戻ると氷の魔法を使うイメージをする。
手のひらに小さな氷が一つ落ちてくることをイメージすると、雪色をした魔法陣から、ひし形の小さな氷が現れる。
「よし……!」
その氷をぐっと掴んでソーマはフィールド全体を埋め尽くす氷を出せると確信する。
「次の試合は良からぬ噂とは裏腹に驚異のパワーをみせるソーマVSキアリス選手!」
と、大男がソーマとキアリスを呼ぶ。
そして「勝ちに行くぞ……!」そう決意し、拳をグッと握り、立ち上がり、フィールドへと向かっていった。