第17話 魔法
「はてと……後々キアリスさんと戦うことになるんだけど……どうしよっかねぇ」
と、このままでは勝てないと踏んだソーマは瑠璃の元へ。
「あ、ソーマおかえり〜。私が言いたい事わかってるよね?」
不機嫌な目線でルリがソーマを見つめる。
「はい……メロンソーダ上げるから許してください」
ソーマはメロンソーダ片手に頭を下げる。正直馬鹿にしている。
「まぁそんな事もあるよね。うんうん。仕方ない仕方ない」
「え、ちょろ……」
ルリの対応にベルクは意外だと微笑する。
「はい。こちらどうぞ」
ソーマはそう言ってルリにメロンソーダを渡す。
「あいあい。まぁこんな茶番はいいとして……なんか聞きたいことがあって来たんでしょ?」
ルリはメロンソーダ片手にソーマの話を聞こうと目の色を変える。
「キアリスは多分さっき見せた戦い方しかしないと思うんだ。だからそれに対してどうすればいいのかなぁって」
「なるほどねぇ〜。フィールド全体に攻撃できれば考えなくていいんじゃない?」
考えるのがめんどくさいルリはそう言うがこれが最も有効なのかもしれない。
「なるほど。確かにそれはいい案だと思います。でもソーマさんの衝撃波だと姿を消している場合キアリスがやられているかわからないですよね」
ベルクがそう言うとルリは「じゃあ魔法を覚えちゃおう。そうすればフィールド全体に当たったか分かるし」と簡単に言う。
「は? え、こういうのって魔法適性がとうとかこうとかーってないの?」
「そんなのソーマなら全部あるに決まってるじゃん。ほら。チートの一つ」
「チートってえげつないな……。じゃあどうすれば使えるの?」
「まぁ魔法は想像力みたいなもんです。技名なんか言わなくても発動できます。だからこれと言った魔法はないです」
「思ったけどこの世界ちょいちょい雑じゃね?」
「それは知りません。まぁとりあえず人差し指たてて火が出るところを想像してみてください」
ルリは自分の人差し指を上にあげてソーマに見せる。
「あー……わかった」
ソーマはそう言って頭の中で自分の指先から火が出るところを想像する。
「ふぬぬぬぬぬ……」
顔を険しくして指先に意識を集中させる。そして次の瞬間。
「ボッ!」と音をたててソーマの指から火が出た。まるでライターの様だ。
「お、おおぉ。できた? っぽいな」
ソーマは自分の指から火が出たことに感激する。
「うんうん。後はそれを消すイメージをすれば消えるよ」
そう言うとルリは自分の指に火をつけたり消したりを繰り返す。
「おおぉー。できた」
そう言うとソーマも付けて消してを繰り返す。
「これなら行けそうだな。次の戦いで試してみるかな」
そう言って自分の手をグッと握り、前を向く。
「うんうん。頑張ってね」
「僕も応援させていただきます」
ソーマを二人は応援する。
「え、なんかさ。行きはお兄ちゃんとか言ってくれてたのになんか冷たくない?」
ソーマは1度振り返り、ルリに目を向ける。
「何のことかなぁ。まぁ次の試合瞬殺くらいできたら許してあげる」
ルリはメロンソーダを飲みながら、不機嫌そうな目で言う。
「お、おう」
ソーマは冷や汗を垂らして選手控え室へと向かう。
「もう少し練習しておくか」
そう言って選手控え室にある石造の椅子に座り、手のひらの上にバレーボール程の大きさの炎の玉を作り出す。
ソーマはそれをクルクルと手の中で回して遊ぶ。
「次の試合はソーマ選手とビガルナ選手だーーー!!」
大男のうるさい声に反応し、ソーマは椅子から降りて足をフィールドへと向かわせる。
「良かった。キアリスさんにはまだ当たらないんだな。ちょっと練習相手にさせてもらうか」