第12話 チャンスの到来
「ソーマおぉきてー!」
「もう少しだけぇ……」
先日も泊まったホテルの一室に響く声。
ルリは今日もクエストに行くというノリなのだがソーマはそうでない。
昨日集団クエストで倒した星10のモンスター。ヴェルガリアスを倒したことにより貰えた報酬金で1ヶ月はぐぅたら生活をできるとしったからだ。
とまぁ今布団にくるまっているソーマをルリがゴロゴロと転がしているわけである。
「ベルクさんもまってるですよー!」
「ベルクー? あぁそんな奴もいたなぁ……まぁおやすみ」
「お休みじゃないのです! おはようなのです!」
起こそうにも起きないソーマを見てルリは仕方なく最終手段に出る。
「仕方ないのです……。あれをやりましょう」
ルリはそう言うと右手を前に出して声を出す。
「53番」
出てくるのはゴブリン討伐にも出てきた例の杖。チート装備の武器である。
「え? ちょっとルリさん? あのー……」
青ざめるソーマに容赦なくルリは詠唱を始めようと口を開ける。
「わ、わかったから!起きればいいんだろ!?」
とソーマはベッドから身を起こして布団をどかす。
「そうなのですそうなのです」
うんうんと頷くルリ。その調子で杖を魔法陣にまた戻す。
「はぁ……」
ユニットバスの隣にある水道に行き、寝癖まるけの髪の毛を水で濡らして髪の毛を整える。
その後顔を洗うとタオルで髪の毛と顔をふく。
鼠色のパジャマのボタンを外してチート装備へと着替えを始める。
そして準備万端ともう1度鏡を見たあとルリの元へ。
「行けるぞー……」
そう言ってユニットバスから出た瞬間目の前に入った光景にソーマは驚いた。
「まぁってたんですよソーマさん」
ホテル内に何故かピエロ姿のキアリスがいたのである。
ルリも驚いてカーテンの裏に隠れひょこっと顔を出している。
「まぁまぁそう驚かないでください」
そう言って手をパンと叩くと何も無いはずの空間から一枚の紙。
「あなた達にとってこれは良い事か悪い事かはわかりませんが、良かったら」
それだけ言うと「それではまたの機会に」といって消えていった。
「なんだこれ?」
ソーマはキアリスが置いていった紙を見つめる。
とルリも見たいと言わんばかりに覗き込む。
書かれている内容はこうである。
剣と魔法の闘技大会。
参加制限なし。参加人数は各国100人まで。
ルールは当日話します。付けてはいけない装備等はないのでご安心を。
各国で予選をし、それを通過したものが本戦でミニアス王国でトーナメント戦をする。
上位15名の方には称号を授ける。
エントリー受付は5月3日~5月5日まで。
開催は5月8日
との事だ。
「ふーん……。別に称号とかいらなくね?」
と、参戦する気のないソーマに対してルリは……。
「参加するべきだと思う。」
「ん? どうしてそう思うんだ?」
あまりに真剣な表情でルリは言ったのでソーマもルリのテンションに合わせる。
「これこそ成り上がるためのチャンスだよ」
「どういうことだ?」
「簡単に言えばここで勝てば皆に注目される。そしてもし上位15に入れたら称号が貰える 。そうなったらソーマを馬鹿にできる人はいなくなるでしょ?」
ルリが言っていることを簡単にすると、まず勝つだけで皆に注目されてソーマへの皆の目線が変わる。
それにもし称号を貰えることになればソーマを馬鹿にできる人はいなくなる。という事なのだろう。
「なるほど……。それはやるしかないな」
ルリの話を聞いて参戦をソーマは参戦することを決めた。
「うん! それにこれは全国で放送されるらしいからきっと上位15に入れたらソーマの事を知らない人なんて出てこなくなると思う! 成り上がり者になるチャンスだよ」
この機会にと拳を握りしめるルリ。
「そうだな! なってやるか! 成り上がり者に!」
そう言って「おー!」と2人は声を上げると同時にグーにしたでも上に挙げた。
そして今日は5月4日である。
開催まで後4日。