ライオット・ジャスティス対デストラクト・レイド
バトル回です。ケムコ関連のゲームの魔法やら必殺技とかをもじっています。
魔神城の玉座の間では、魔王サタンと勇者アルオーンが繰り広げる、新たなる戦いが行われていた。
「はぁぁぁ!!」
【ふんっ!】
勇者アルオーンが振るう聖剣フィーリアの斬撃。
それを魔王サタンは黄金竜麟の片手剣で受け止め、鍔迫り合いに持ち込む。
「大抵の魔物ならこの一撃で倒れますが、さすが魔王と称しましょうか」
【この程度の一撃で我を倒すだと?
その妄想に哄笑をあげたくなるな】
鍔迫り合いをしながら互いへと皮肉を言い合う。
「さすがに力で押し切れませんか。
その短身に、どれくらいの力があるのか知りたくもなりますね」
【我をチビと称するか?
野心を砕いてやる前に後悔を刻み込まれたいらしいな。
良いだろう。その願い、恐怖を伴わせて叶えさせてくれるわ!】
なおも鍔迫り合いを続けながら、勇者アルオーンが発した短身という言葉に憤怒を刺激された魔王サタン。
鍔迫り合いをしつつ、全身から怒気を含んだ禍々しいオーラを発し、
【ハッァァァァァ!!】
瞬間的に恐るべき力を出して、勇者アルオーンを玉座の間の扉付近まで吹き飛ばした。
「くっ! ですが、甘いっ!」
が、、空中で受け身を取られてしまい大したダメージは与えられなかった。
「――神聖なる裁きの光よ
――すべてを覆い尽くす波となりて
――我が前に出でて
――我に敵する者らすべてを
――汝の裁きの光波にて
――呑み込み尽くし裁きを下せ
――『断裁神聖光波術!』
」
魔王サタンによる吹き飛ばしを利用し、詠唱の時とした勇者アルオーン。
最高峰の神聖術である『断裁神聖光波術を魔王サタンに、吹き飛ばしの返礼とするかのように、圧倒的な質量の光の波を呼び出し持って解き放った。
【魔術戦に持ち込むつもりか?
なら、我も応えようか】
眼前に迫りくる神聖術で呼び出された光の波を前にして。
魔王サタンは左手を突き出し瞬間的に呪を練り、解き放つ。
【――底深きたゆたう深淵よ
――我が意に応え従い
――底深き汝の深淵の闇を
――扉となりて、我が前に顕現し
――万物すべてを汝に還せ
「深淵開門呪!」】
魔王サタンが詠唱し解き放ったのは。
この世に存在するすべてのものを、扉を介して深淵に送り込む最高峰の闇の呪法。
深淵開門呪である。
勇者アルオーンが解き放った光の波と、魔王サタンが解き放った深淵の闇がぶつかり合う。
そして、光の波が強く輝いたあと深淵の闇が呑み込むように残滓を残して、光の波は霧散の道を辿ってしまった。
「ははっ! 『断裁神聖光波術』を凌駕するとは、さすが魔王とでも言って差し上げましょうか?
今のままでは勝ち目はありません。
ですので、全力で行かせてもらいます」
【ほう、全力で来るのか。
なら、我も歓迎しよう。
そのうえで、貴様の野心を
完膚なきまでに砕いてやるまでのことだ】
解き放った神聖術も破られた勇者アルオーンは、聖剣フィーリアを頭上へと掲げた。
すると、聖剣フィーリアが勇者アルオーンの意志に呼応するように、聖剣にふさわしい神聖な力強さを秘めた輝きを放ち出した。
「後悔はありませんね?
と言っても、私は聞き入れはしませんけど!」
全力の状態へと至った勇者アルオーンは、輝きを放つ聖剣フィーリアを掲げたまま力を込めて、開戦直後に斬りかかったのとは全く違う高速さで魔王サタンへと斬りかかる。
【ほぅ……先ほどとは重さも威力も違うな。
ふむ、ますます楽しめそうだ!】
勇者アルオーンの強撃を、黄金竜麟の片手剣で空いている手で支えるように受け止め。
鍔迫り合いに持ち込み、拮抗状態を生みながら魔王サタンは狂喜の笑みを浮かべる。
「ふっ、これではどうでしょう!」
勇者アルオーンは鍔迫り合いの拮抗状態を、一息で解除し数歩ほど後退する。
そして、瞬足で魔王サタンへと近づき、剣舞のような足捌きで黒い魔神チェルノボークを傷だらけにした強烈な連撃剣技を繰り出した。
「喰らいなさい、『猛虎暴虐斬撃』!」
【ほう、そう来たか。
なら、迎え撃たなければ無礼になってしまうな。
ふむ、これで迎え撃つか。
『悪魔連刃撃』】
対する魔王サタンも黄金竜鱗の片手剣に、闇の魔力を纏わせた魔剣技を繰り出して。
勇者アルオーンが繰り出した『猛虎暴虐斬連刃』を、二度目の鍔迫り合いに持ち込むように防ぎにかかる。
「はあぁぁぁぁ!」
【ぬおぉぉぉぉ!】
両者の雄叫びと強烈な斬撃による烈風。
互いに打ち鳴らす剣戟の音。
それらが玉座の間に響き渡る。
しかし、永久には続かない。
なぜならば、斬撃音の終焉が訪れてしまったから。
そう、剣を交えた両者が無傷という形で。
「なぜだ! なぜ一撃も当たらない!?
黒き魔神ですら、受けきれずに負傷させた技だぞ!?」
【たいていの技の軌道というものは、相手の身体をよく見れば予測はつくものだ。
怒りで我を忘れない限りは、だが】
勇者アルオーンのあげる悲鳴を魔王サタンは冷静に諭すように返す。
ただ、相手を見る余裕が有るか無いかの違いでしかないのだ。
「……聖剣の効力もそろそろ切れそうです。
こうなれば、あの技を使うしかありませんね……!」
勇者アルオーンはそう呟くと、聖剣フィーリアに新たに光を纏わせ始めた。
「私の奥義とも言える必殺技を、魔王サタン、あなたに加えましょう。
世界を手中に収める最初の贄となってもらいますから」
勇者アルオーンは不敵に笑いながら、己の敵対者である魔王サタンを睨みつけそう言った。
【ほう、ならば我も奥義技を繰り出すとしよう。
本来ならば技の隙を突いて、必殺技を放つ前に相手を倒してしまうのが理想というもの。
だが、我はそのような無粋は好まないものでな。
逆に言えば、貴様の奥義技を防ぎきれば我の勝利は確定する。
だが、単に受けてはやらんぞ。
我も奥義技を放たせてもらうからな】
魔王サタンは勇者アルオーンへ勝利の宣告をする。
そして、黄金竜鱗の片手剣に闇の魔力を、
否、滅びの魔力を纏わせ始める。
「さぁ、準備は整いました……。
この技にて、敗しなさい。
『断裁神聖暴虐光斬』!」
先に奥義技を放つための準備をしていた勇者アルオーンは、『断裁神聖光波術』の圧倒的な物量の光を聖剣フィーリアに纏わせ、『猛虎暴虐斬連撃』の剣舞を繰り出した。
そして、後から奥義技の準備を始めた魔王サタンへと上段から斬りかかる。
【(……発動までの時間が僅差でかかるか。
まぁいい、少しなら受けてやろう)】
後手で奥義技の準備を始めた魔王サタン。
先手で奥義技を放った勇者アルオーンの『断裁神聖暴虐光斬』を、回避ではなく、受けるという選択肢を宣言通りに取る。
「どうしました? このままでは私を倒すことはできませ……!?」
勇者アルオーンは奥義技である『断裁神聖暴虐光斬』を二撃ほど魔王サタンに浴びせた。
しかし、三撃目を与えようとしたその直前、奥義技の軌道が崩されたのだ。
【ふん、ようやく間に合ったか。
これが我が奥義技『壊滅魔神連刃撃』だ。
あのまま貴様の奥義技を喰らってやるのも飽いたのでな。
さぁ、反撃といかせてもらうぞ!】
聖剣フィーリアの纏う『断裁神聖光波術』の光の輝き。
それを、『壊滅魔神連刃撃』の滅びの闇が呑み込むように侵蝕してゆく。
「そんなこと……認めない。
認めないぞ……。
私は決して認めない……!
この『断裁神聖暴虐光斬』の軌道が、私の奥義技が通用しないなんてことは……!」
本来ならばあり得ない自体。
それに勇者アルオーンは驚きを隠せず、三度の鍔迫り合いのなか憎悪による妬みと愚かしき意地にて、魔王サタンを睨み据える。
【ほう、目の前の事実を認めないか。
しかし、事実は事実だ。
心の拠り所を喪失しても事実をしっかりと認めてしまえば、楽になれるのだがな?
まぁいい、このまま貴様の拠り所もろとも砕き尽くしてくれるわ――!】
勇者アルオーンの憎悪の睨みに臆することなく。
鍔迫り合いのなかで魔王サタンは心砕の意を放つと、
【フッ!】
『壊滅魔神連刃撃』の軌道を即座に鍔迫り合いの状態を自分から崩した。
「なにっ!? がはっ……!?」
そして、切り換えるようにして作り出した虚なる隙を突くように。
勇者アルオーンの身体へと『壊滅魔神連刃撃』による強烈なる斬撃の剣舞を、一方的に残虐的に浴びせゆく。
「……ッ!?……ッ!?……ッ!?……ッ!?……ッ!?」
まるで、魔神城の城主であり、傷だらけの身体で倒れ伏していたチェルノボークの状態にするように。
否、声すらもあげられない、それ以上に酷い状態に堕とすかのように。
【さぁ、止めといこうか】
『壊滅魔神連刃撃』を繰り出していた魔王サタンは、斬撃の終焉を迎える直前にそう呟くと、フィニッシュとして聖剣フィーリアを斬り砕いた――。
魔法や必殺技のもじりの元ネタは、エッセイ雑記で書く余裕があったらバラすことにします。