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彼は少年兵   作者: 桃々藤
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虚ろ3

朝、彼は目が覚めた。僕はちょうど部屋を離れ、朝ごはんを持ってきたところだった。


「おはよう」


返事はない。いつも通りだった。


「朝ごはん、持ってきたよ」


僕は、彼の前にある移動式のテーブルにご飯を置いた。


「本当、奇跡だよ。三階から飛び降りて足を挫いただけで済んだんだ。よかったよかった」


彼は何も言わなかった。食事を差し出すも、器を横から払い、器と中身は見事に床を汚してしまった。


僕は零れたご飯を片付け、反頭先生に相談に行った。


「先生、彼、禁断症状が出てるみたいですけど」

「あぁ、話は聞いた。だがどうすることもできん。このまま部屋で耐えてもらうしかない」

「食事もあまり取りません」

「無理してやる必要はないだろう。少し痩せているが、まだ大丈夫だろう。しかし、食べるように促すことは続けてくれ」

「分かりました」


僕は先生と話を終えて、彼の部屋へ行った。


彼は部屋の窓から外を見ていた。この施設は、とある田舎にある。施設の裏は森があり、少し歩くと、木の実などの山の幸がある。反対側には、ただの一本道。その周りは、畑や田んぼがあるだけ。民家はほとんどない。その一本道を二kmほど行くと、数年前に戦場となった市街地だ。そこはまだ復興されておらず、焼け野原となっていた。


彼の部屋から見える景色は、森の木々ばかり。たまに、その木に鳥が止まったりしている。


「外に出たい?」

「……」

「見てるだけでいいの?」


彼は小さく頷いた。


「……そっ」


僕は、彼の包帯を取り換えた。頭と、腕と、脚と。


「だいぶ良くなったね。もうすぐ自由に動けるよ」


僕はいったん言葉を切った。そして、彼の右目を大きくガーゼで覆い、紙テープで固定した。


「よし、おしまい。もう横になっていいよ」


取り換えた包帯とガーゼ、ゴミを持って僕は立ち上がった。


すると彼は、あの虚ろな目で僕を見つめてきた。


「ん?なんだい?」

「……タバコ、持ってる?」

「よく僕がタバコを持ってるって分かったね」

「手に……匂い」


僕は笑ってみせた。


「……一本……くれよ」

「ダメだ。タバコは二十歳はたちから。君、いくつ?」

「……二十歳」

「嘘はいけないよ。まだヒゲも生えてないじゃないか」

「……十四」

「ほらね、だからダメ」


僕は、彼の見つめる目を無視して、部屋を出た。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。


ご感想など書いてくださると嬉しいです。


初心者でいたらぬところも多々ありますが、これからもこの作品を宜しくお願いいたします。

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